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僕が選んだのは
「1、2、3……」と数えるうちになぜか眠くなってきて。途中で意識がぷっつりと途絶えた。
目が覚めたときあたりはだいぶ暗くなっていた。
異様な匂いはもうしない。かすかにお香の匂いがする黒色の直衣が掛けられてあった。
懐かしいこのお香の匂いは間違いない。頼理さまの匂いだ。直衣を両手でぎゅっと抱き締めた。
「目が覚めたようだな」
白鬼丸の声が聞こえてきて。ドキッとして慌てて直衣を離した。
「浦島太郎の話しは知ってるよな?」
「竜宮城から戻ってきたらおじいちゃんになっていたっていう話しでしょ?もしかして僕も」
一瞬ヒヤリとした。
顔をぺたぺたと触っていたら、
「たかが一年過ぎただけだ。心配するな」
白鬼丸に笑われてしまった。
「藤黄は青丹と黒緋に黙って俺についてきただろ?二人からみっちり説教を食らっていた。頼理もじきにここに来る。りん、もう二度と戻れないぞ。本当にいいのか?ここには携帯もテレビも何もない」
「白鬼丸と頼理さまがいる。父上と母上と兄上。それに黒緋さまと藤黄さまと黒檀さま。里のみんな、黒谷集落のみんながいるもの。僕を必要としてくれる人たちがいる。だから後悔していない。僕はここで生きて行くって決めたの」
「固い決意があるなら大丈夫だろう」
「白鬼丸こそ本当にいいの?」
「何があってもりんの側にいると約束しただろう。りんが生きる世界が俺の生きる世界だ。気にするな」
ドスンドスンと歩く足音が聞こえてきた。バタバタと駆けてくる足音も。
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