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うさぎと満月

 二人並んで夕暮れの道を歩く。  まん丸い月が空の下方に見えた。  黄色より、少し赤みがかったオレンジにも近い月。普段よりも大きく見える。 「ああ、満月か」  ぼそりと言ったら、隣から「ウサギがいるんだよね」と返事があった。独り言だったのに、と思いつつ隣を歩くお前を見る。  コンビニ袋を手に「早く帰ろう」と誘われて家に帰った。  三年前から二人で住んでいる家。「ちょっと待ってて」と言われて、ソファでくつろいでいたら、奇抜な格好をしたお前が出てきた。 「満月はウサギの日だもん」  長い耳に、露出の高い服。  いわゆるバニーガールのような格好をしたお前が俺に跨ってくる。「どうかな?」と聞かれて、なんとも言えない気持ちになった。  十年前。お前と初めて満月を見たとき。子供だったお前に「月にはウサギが住んでいるんだ」と言った。そのときお前は「そうなんだ! すごい!」とはしゃいでいたのに。 「ちょっ……、おい!?」  跨っていたお前が、下に移動する。ジジッとジッパーを開けてお前が笑う。 「知ってる? ウサギって性欲強いんだ」  「だからさ……」と言って雄を咥え込まれる。  時が経つのは、思っていたより早い。

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