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2.結婚観②

  「マキニヴァのお陰だ、ありがとう!」  秋生は後ろ向きな考えを振り払うように笑った。恩に報いるためにも頑張らないといけない。一人前になって仕事に就いて、自分の食い扶持は自分で稼ぐ。対等な立場になってマキニヴァの友人になりたい。  行き帰りでは狩りの獲物について話すことが多い。なんと実際に狩るのは魔獣だという。動物のように森に暮らしているが、もっと賢くて人語を解するとか。怖過ぎる。  ところでこの世界に魔力が存在することは既に説明した通りだ。色々な道具の動力源になっている。かつては魔法が日常生活に根付いていたらしいのだが文明が栄えた代わりに衰退してしまった。地球より少し劣った文明に取って代わられるくらいだから、在っても大した役には立たないのだろう。国防に関わる大規模魔法だけが現存しており、使用できるのは専門家(魔法使い)だけだ。不思議生物には不思議な力で対抗しようという秋生のアイデアは消えた。  もう一つよく上がる話題はやはり女性についてだ。理想のお嫁さん像を語ることが多い。こういうとなんだか独身男の悲哀が際立つが、自虐やおふざけは一切なく真面目に考察している。  結婚願望があるかと訊かれると秋生は正直返答に困る。自立の手段がそれしかないだけだ。それにこのシステムに納得できないでいる。狩りに成功した者が獲得するのは結婚の権利ではなく結婚相手である。唐突過ぎる。一応婚約期間があり、どうしても合わない場合は別れることもできるが、それをやると非難の対象となり二度目のチャンスは実質ないものと思わなければならないらしい。ギャンブル過ぎる。  この世界では女性もそこそこがっしりしているらしい。それも秋生のやる気に水を差している。自分より逞しい奥さんと並んで歩きたくない。腕力に物を言わせて尻に敷かれたりしたら最悪だ。女性たちも不満はないのか。いやいや嫁がれたら悲しい。だがこのシステムを(よし)とするような価値観の人間と上手くやっていける気がしない。

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