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3.魔獣狩り①

   一ヶ月も経つとかなり体力がついた。街外れから走って修行場まで行き、休まずに斧を投げて十回中八回は的に当たる。息が整った状態なら外れる方が稀なくらいだ。色んな地形を通るから足場の悪い道を歩くのも慣れた。秋生は森に行く決意を固めた。 「まだ早いんじゃないか? もっと普通の狩りで場数を踏んで・・・・・」  マキニヴァは反対したが秋生は今が潮時と感じた。体質的に、いくら鍛えても引き締まるばかりで筋肉は育たない。でも持久力は充分ついた。動物を狩ることもできるようになった。これ以上のレベルに達するには年単位の修行が必要だろう。費やす時間が増えるほど失敗したときの絶望が大きくなる。だったら気力も充実している今がいい。勢いは大事だ。過去の経験でも気分が乗っているときの方が物事が上手くいった。もし失敗してもそのテンションで乗り切れる。 「失敗したら慰めてくれよ!」 「わかった。案内は任せてくれ」  冗談めかして言う秋生に、マキニヴァは困ったような顔で笑い返した。  二人は旅支度をして家を留守にした。森へは片道一日。森の手前の草原で一泊し体力を回復させる。草原はところどころに巨大な岩が地面から飛び出している。上の方が迫り出して庇のようになっているものを選んで、二人はそこで休むことにした。 「こっちじゃ男同士のセックスは普通なのか?」 「普通ではないかな・・・」 「ケツの穴ヤバくない?」  秋生の知識ではアナルセックスにはそれなりの準備が必要なはずだ。突発的なストリートファイトの後のセックスがいいものとは思えない。事に及ぶ前に準備の時間があるのかもしれないが、それでも穴に異常を来さないか心配になる。まさかいつ犯されてもいいように準備しているのだろうか。純粋に疑問だ。一般的じゃないなら余計に気になる。 「あー・・・アキオだとたいへんかも・・・・・」  秋生は絶句した。こっちの人間はみんな大きい。きっとあそこも大きいに違いない。そんなのをケツに突っ込まれてオナホ代わりにされるなら死んだ方がマシだ。マキニヴァが顔を赤くして恥ずかしがっていることなんて、もうどうでもいい。明日は森に入る。気合を入れなくては。絶対に失敗できない。人生が、男としての尊厳がかかっている。

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