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第7話
のしかかられて身体の重さを感じる。熱を、汗を。
広瀬の身体の中にぎっちりと入り込み、目一杯広げられている。痛みのようだ。痛いのも快感なのか。熱いものをねじ込まれてかき回されることが、こんなことが、愉悦なのか。これでは、まるで、セックスに溺れているようだ。離れがたい。
小さな声が自分の喉から出ていく。
この声は好きじゃない。広瀬が息を呑み込み声を止めようとすると、東城が残酷に揺さぶってきた。
ざらりと、舌で耳の中を舐める。声をだしてねだるように命じられた。お前の欲望をそのまま、俺に聞かせろよ。何も、隠すな。
「もう、」と広瀬は言った。次の言葉は出せない。
右足の指がぎゅっとまるまった。
必死でしがみつかないと、どこかに飛ばされてしまう。怖くなって身体をこわばらせた。東城の体重がさらに重みを増した。
広瀬は、自分を手放すことにした。与えられるものだけを感じよう。
広瀬は目を覚ました。ひくっと密着していた身体が動いたのだ。
室内は、異様な空気だ。東城がほぼ息を止めて広瀬を強く抱きしめている。先ほどの抱擁とは違う、苦しい。
明らかに怖がっている彼の腕の隙間から、どろりとした室内の闇を見回した。
時計をみると深夜だ。そして、さらに、視線を動かす。
また、いた。
今度は寝室の片隅に同じ女の幽霊が座っていた。何をするでもなく、こちらをじっと見ているだけ。民宿で見たのと同じだった。背中から全身にかけて冷たいものが走る。恐怖心というものだろう。身体がすくむ。
勇気をだして手を伸ばし、ベッドサイドの灯りをつけると、民宿と同じようにすぐにいなくなった。
民宿からついてきたんだ、と広瀬も東城も理解した。
「なんでうちにまで来るんだよ」と朝になって元気になった東城は言った。
ごちゃごちゃいいながら、部屋の隅を点検している。
よくある怪談話のようには濡れても冷たくもなっていない。東城はドアやライトの角度をいろいろ変えて光を加減している。暗闇の中の見間違いと思いたそうだったが、そうはならなかった。
「このままいつく気かな」
広瀬に聞かれてもわからない。
「しばらくお前のうちに行こうかな。場所変えたらでなくなるかも」
「それはだめです」と広瀬はすぐに拒否した。自分のうちにまであんな得体の知れないものが来ては困る。
「お前、保身を隠さない奴だな」と東城は言った。
自分のことは棚に上げての典型例だな、と思った。そして、何と言われようと、自分のアパートに来ることだけは阻止した。
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