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第9話
お祓いの依頼を何件かの寺や神社にかけて、断られたり、一度くるようにいわれたりしながら数日たったときに、広瀬が東城の家に帰ると、ちょうど東城が電話を終えたところだった。彼は、渋い顔をして広瀬を見る。
「おかえり」というと、電話を見せた。「お前、宮田に話しただろう」
「え?」
「あの、女の」と東城はいう。彼は、振り返って誰もいないのを確かめている。幽霊と言う言葉も最近はつかわない。口に出すのも嫌なのだろう。
「あ、はい」と広瀬はいった。「宮田からですか?」
「ああ。宮田と佳代ちゃんからだ」
「え」
「宮田の奴、すぐに佳代ちゃんに話したそうだ。宮田は放送局なんだから、気をつけろよな。完全に面白がられてる」
「すみません。つい」
「まあ、秘密を聞き出すのはあいつの特技だから」と東城は言った。ため息をついている。
宮田に知られるといつのまにか大勢が知るところになることは多い。
ただし、東城と広瀬の関係は誰にも言わないようだ。本当に大事な秘密は誰にも話さないようにしているのかもしれないし、そう思わせるのが彼の特技の一部なのかもしれない。
「今度、うちにくるっていってたぞ。二人で。それと、佳代ちゃんの知り合いの霊感の強い女も連れて来るらしい」
広瀬は思わず聞き返した。
「だから、宮田と佳代ちゃんと佳代ちゃんの知り合いの女がうちのあれを見にくるそうだ。ついで自分とこににつれてってくれればいいけどな。それはそうと、宮田と佳代ちゃんが連絡とりあってたっていうのも驚きだ。あいつらなんかなってるのか?お前、知ってる?」
広瀬は首を横に振った。この前、宮田は佳代ちゃんにさりげなくSNSのアカウントを交換しようと言っていた。佳代ちゃんは気軽に応じていた。それで連絡しているのだろう。
「いつ来るんですか?」
「あさってらしい。泊まるとかいってたぞ」東城はあきれた声を出している。
なんできっぱり断らないのだろうかと思うが、佳代ちゃんのような女の子に何かいわれて東城が断るのをみたことがない。はっきりしない返事をするうちに押し切られたのだろうことは容易に想像はついた。
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