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第13話
「俺に?なんで俺なんですか?」と東城が思わず聞き返している。
「実は、ずっと前付き合ってた人のうちの1人だったんじゃないですか?」と宮田が面白がって言った。
「宮田、お前なあ。言っとくけどそれは絶対にない」と東城はいう。「彼女のことは全く知らない。写真みたけど知らない人だった」
ふふ、と佳代ちゃんが笑った。「そんなにあせってるってことは、ホントに知らない人なんですね」
和子はため息をつく。「あまりおしゃべりしないでくださいね。私の気が散って彼女の声が聞こえなくなってしまいますから」
「すみません」と東城があやまり、口を閉じる。
「なぜ、あなたのところに来ているのかはわからないです。ただ、何か、大事なことを伝えたいみたいです。山の中のようです」
和子は、深呼吸し、目を閉じた。
「山の中、道をそれたところに、昔何かに使っていた小屋があります。小さい小屋です。そこを教えたいみたいです。そこに、来て欲しいんじゃないかしら」和子は目をあける。「漠然としていてよくわからないですが、あなたに、来て欲しいと願っていますね」
東城は心底嫌そうな顔をした。「行ったら、憑り殺されるんじゃないですか?ただでさえ、ここから離れないのに」
「そうですねえ」と和子はいう。「行ったらどうなるのかは、私もわからないです」
「行かないほうがいい?」
「それもわからないです。私は彼女がなにを伝えたいのかをあなたにお伝えすることしかできないです」
「そうですか。わかりました」東城は言った。「自分の死因は言っていますか?」
「それも、特には。苦しそうではあります。それに、哀しそう」
「殺された可能性はありますか?それを伝えたいとか?」
「わかりません。そうかもしれませんね。私には今お伝えしたこと以上はわからないんです」
東城は黙った。考えているようだった。
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