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第14話
しばらく沈黙が続いているなか、広瀬が立ち上がって、キッチンに行き、全員にお茶をいれてもってきた。ハーブティーの一種だろうか、やさしい香り部屋にただよう。
東城はお茶をうけとると、自分の左側を見る。「まだ、ここにいるんですか?」と和子に聞く。
「ええ、います」
「俺たちの会話は聞こえてるんですか?」
「いいえ、彼女はこちらのことはわからないんです。あなたにただ伝えたい、それだけです。だから、質問してもそれに答えることはできないんです」
「そうですか」彼は広瀬に向き直る「広瀬、女性が関わってたとされる強盗事件は今どうなっているんだ?」
広瀬が答える。「強盗事件の被疑者が何人かはいますが、盗品が見つからないケースもあり、確定的な証拠がない状況です。過去の強盗事件とも類似しているので、何回もやっているとは思われます。被疑者は任意で聴取しましたが、口を割りません。例の女性は被疑者の1人が付き合っていた人です。付き合っていたといっても遊びだったらしいです。暴力もふるわれていたようでした。でも、殺人である証拠はなかったそうです。彼女も精神的に不安定だったようですし」
「彼女は強盗と関わっているのか?」
「わかりませんが、関係が全くないとは言い切れないようです。彼女は、利用されていたようです。アリバイの証言もしています」
「協力者か」
「彼女が伝えている場所を探しにいってみましょうよ」と佳代ちゃんが言った。「東城さん、彼女は事件の真相を伝えたいのかもしれないですよ」
「ああ、そうだな」と仕方なさそうに東城は答えた。「行かないって選択肢はなさそうだよな」
そして、和子にできるだけ詳しく小屋の場所を聞いた。あいまいなことしかわからなかったが、広瀬とあの日ドライブした途中のどこかということは確かなようだった。
その日、佳代ちゃんは本当に東城の家に泊まった。合宿みたいで楽しい、と言っていた。
客間に佳代ちゃんと和子が泊まり、宮田は、リビングのソファーで寝させてもらうことになった。
東城は、深夜に出たら呼んでもいいですか?と和子に心細そうに聞いていた。和子は、眠そうな顔をしながらいいですよ、起きないかもしれませんけど、と冷たく答えていた。
宮田はあてがわれたソファーで毛布をかけて横になった。リビングは間接照明だけつけられている。すぐにうつらうつらする。ここに幽霊がいるなんて全く信じられなかった。霊感なんてなくてよかったな、と宮田は思った。
キッチンで、広瀬と東城は簡単に片付けものをしているようだった。
二人は小さな低い声でなにかを話している。ふと、広瀬が軽く笑うのが聞こえたような気がした。幽霊を見るよりも、広瀬が楽しそうにこの家で暮らしているのを見ることができてよかった、と宮田は思った。
しばらくして、リビングの灯りが完全に消された。2人がリビングを横切り、寝室に入っていったところで、宮田は眠りに落ちた。
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