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第18話

車に乗り込む頃には外はすっかり暗くなっていた。鍵をあけてエンジンがかかると、東城がほっとしているのが傍目からもわかった。 だが、ふもと近くまでおりていく途中でまたカーナビが消えた。広瀬が「あ」といって、カーナビのスイッチを押す。そして、自分のタブレットをだして見る。 東城が眉間にしわを寄せていた。「なにも言わなくていいから」と彼は言った。「電波が入らないとかそういう言葉は不要だ。ふもとまで行けば大丈夫だし、今、どことも連絡を取る必要はないからな」自分に言い聞かせているようだ。 「電波は入ってないです」と東城の言葉を無視して広瀬が言った。「スマホもだめですね」 東城はため息をついた。「前と一緒じゃないか。この山なんか磁場でもあるんじゃないか。夜になると電波が届かなくなる」 佳代ちゃんも自分のスマホをみて驚いている。「すごいですね。こんなことあるんですね」と言っている。あたりを見渡す。「幽霊、どこかにいるんでしょうか」窓の外を見る。真っ暗だ。「なんにも見えませんね」口調が残念そうだった。 「佳代ちゃん、気楽でいいな」と東城が言った。 そんな言葉は全く気にせず、「もうすぐふもとですよね」と佳代ちゃんが言った。 だが、しばらく走ってもなかなか家の灯りは見えない。それどころか、上り坂になったりする。 「迷ってるんじゃないですか」車内の誰もが言いにくかったことを広瀬が平板な声で言った。 東城が答えにならない声を出す。 「一本道のはずなのに変ですね」と広瀬がまたいう。 「同じところぐるぐる回ってるか?」 「それはないみたいです」窓の外はかなり暗い。 「なんでそうじゃないってわかるんだよ」と東城がややイラだった声でいった。 「じゃあ、同じところ走ってます」と広瀬が平板な声で言い返した。 「お前なあ」東城はむっとしている。 「わあ、喧嘩しないでくださいね」と佳代ちゃんが後ろから言った。 「この程度喧嘩じゃないから大丈夫」と宮田がこたえる。「だいたい、この二人、喧嘩ばっかしてたんだから」そうだ。 この前泊まったときは二人ともリラックスして穏やかだったが、そもそも険悪だったのだ。 「え、だって」と佳代ちゃんはとまどっている。 「事務所で東城さんが広瀬を殴りそうになって、俺ともう一人がやっととめたこともあったくらい」と宮田が続ける。 「宮田、余計な話はしなくていいから」と東城がいう。そして、ゆっくりブレーキをかけた。 「一回停める。外を確認して、しばらく走ってからまた確認する。そうすればぐるぐる回ってるかどうかわかるだろう」 広瀬がシートベルトをはずしドアを開けて出ようとすると、チカっと後ろにライトが光った。 後ろから車が近づいてきたのだ。 車は後ろに停まった。東城は、手を伸ばして広瀬の腕をつかみ、彼が降りるのを制した。

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