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第6話 ここは克服慝力牙。
「やはり本格中華は很不錯 ……!」
俺は健気な哦性 ちゃんたちの集まる桌子 に、どけよと言った無作法ものをシメながら感嘆の声を漏らした。
あ、もちろん菜 に被害はない。
――――――そして。
「まぁ、皇 葎 。『ちゅうか』とは何ですの?」
そう問うてきたのは静 嵐 ちゃんだ。
「うん……えーとえーと……」
中華式な世界でも、この世界に中華って言葉はないんだった~~。どう説明しようかなぁ。と言うかどこから説明しようか。
とりま、ここは大学構内。克服慝力牙 。食い物 は大事に。食い物 を大事にしなければ、容赦のない烈哦性 の正義の牙に噛み砕かれる、憩いの場である。
※普通の食堂 です。
そしてまた、素晴らしき食い物 の前で哦性 ちゃんたちを脅えさせるやからも……許せんんんっ!!!
「感謝せよ。ここは食い物 の前。その鶏鶏睾丸 だけは見逃してやろう」
先程までシメあげていた男子学生を食堂のそとにシメだし、俺は告げた。
「あ……あの……俺貝性 なんでぇ……っ!?」
脅える男子学生。
「はぁ?欸性 じゃないから捥がれないとでも思ってんのか。烈哦性 は狩りのためな積極的にダメ欸性 のを捥ぐが、しかしそこに鶏鶏睾丸 がある限り……我らは捥ぐ。その鶏鶏睾丸 が相応しくない場所に生えている限り……!」
「很不錯 ですわ。このような意味なしタマ貝性 がいては、か弱き女子たちも困りますから」
静 嵐 ちゃんもこくんと頷く。
脅えながら一目散に逃げていった貝性 は……やはり意味なしタマであったようだ。
さて……残念なタマを見つけてしまったものの……目の前に広がる中華!中華!中華~~!
本日の午飯 は食堂中華で静 嵐 ちゃんと優雅に中華である。
なお、午飯 時間 の後は飲茶 も楽しめるのだとか。
ほんと充実した食堂である。更には……。
「後で俺の番も遊びに来るってー」
今日は時間が空いたから、俺がどのように大学で過ごしているか見に来るそうだ。
「大学校長ですわね」
「うん」
俺も静 嵐 ちゃんに聞いて驚いた……。なんとまぁ、玖 、この大学の校長だったんだよ。
因みにこの世界、なんちゃってではあるが中華式なので、大学だろうが高等学校だろうが、その長は校長と呼ぶ。
「先に食べてていいよって言ってたから、よそっとこ」
「それが良さそうですわね。ところで先程の中華……とは」
「あぁー……、こう言う焼売とか春巻とか……とにかく……菜 のことかな……!」
午飯 は基本は武林菜 である。
なお武林菜 は武林式の言い回し。外では自助餐 らしい。
武林菜 でよそってきた定番中華と共に席につき、あははっと笑って見せる。
転生者であることを言うわけにもらいかないしなぁ。
「では、それも武林式ですの?」
「ど……どうだろ……?家にもよるかなぁ……?」
取り敢えず俺は家でも中華中華言ってたので……問題ないはずだ……!
「そう言えば、この地域の菜はどう言うんだろう……?」
異世界あるある。現地の地球でお馴染み料理は何て言えばえぇねん。
「そうですわね……この大学は皇甫 自治区にあり、領主が皇甫 一家ですから……。そこから音もらい、皇甫 自治区の菜に多い色の字をあてて、黄 菜 と呼ばれますわね。他にも、わたくしの実家は静 自治州の領主ですから、そちらの家庭料理は黄静菜 と」
「確かにここ、蛋 菜 が多いね」
にわとりだけじゃなくて、家鴨とか、異世界あるある生物の卵とか。
なお、この世界の区画は中華風だが、同じところもあれば違うところもある。
更にはどういった行政区かによっても呼び名が変わるのだ。
国の王が治める直轄市と呼ばれる区域、地方の領主が治める都市を中心とした区域、辺境領主が治める武林・少数民族区域。
ここは武林を有する領地なので【武林・少数民族区域】となる。
この区域の行政区は【自治区】→【副省級自治州】→【自治州】→【自治県】→【民族郷】。
国の中心地からは離れたまさに温泉源泉掛流 。
だからこそ、自治区を治めるのは地方領主よりも辺境領主っぽいニュアンスなんだよね。
ここは皇甫 一家が治めるので皇甫自治区と呼ばれ、領主はもちろん玖 の父親、公公 。
こちらの世界では辺境と呼ばれる自治区だけど、こうしてちゃんと大学もあるし、国の主要民族以外にも、多彩な少数民族たちが暮らしている。
あと武林を抱える自治区では、他の地域よりも烈哦性 が際立って多いのだ。
そして自治州は市町村の市のような大きな街を治める領主。静 嵐 ちゃんの実家も州領主。静 嵐 ちゃんの姓は静 だから、領主一家の姓から静 自治州と呼ばれる。
自治県にはホアン武林などの武林が含まれる。行政区分的には自治州の下だけど、武林地帯は自治区長……皇甫 一家が直轄で管理しているのだとか。
「焼売や春巻など代表的な菜 に特定の名があるわけではないので……皇 葎 のように中華と呼ぶのもよいですわね」
「かもねぇ」
何せこの世界、なんちゃって中華だし。
「ですがこの春巻や焼売の見た目や中身は黄菜 ですわね」
「あ、確かにね」
だって焼売は黄色い皮だし、春巻は卵の包みの中に入っているのだ。
中華はあれど、異世界流に違うところもある。
更には……。
「天津飯、まさかお前に会えるとは、思わなかったよ」
実は中華ではない中華。天津飯。
黄色い菜 多めの黄菜 だからこそ、出会えたのかなぁ。
かにのかまぼこ玉じゃなくて……蟹みたいな鶏の肉玉だけどね。
でも。
「美味しいからいいか」
「えぇ、そうですわね」
「そうか、それは良かった」
突如聞こえた落ち着いた青年の声にパッと顔を上げれば。
「玖 !」
「あぁ、会いに来たよ。愛しいリュイ」
さすがは優秀 欸性 。さらりと甜 いセリフを……っ。
「早速朋友 ができたようだね」
玖 が空いた席に腰掛けながら静 嵐 ちゃんを見る。
「うん、静 嵐 ちゃんだよ。静 自治州の……」
「ご令嬢だろう?欸性 同士、面識もあるよ」
「……そりゃそっか……!」
「昔は婚約者候補でしたのよ?」
そして静 嵐 ちゃんの言葉にびくっとくる。
「……へ?」
玖 を見やれば。
「同じ欸性 だから、候補に上がっただけだよ」
と、気まずそうに……。これ、何かのフラグじゃないよね!?
「そんな顔なさらないで。気持ちはさっぱりありませんし、まず顔がタイプじゃありませんの」
バッサリいぃ~っ!!校長……と言うか自治区長の息子にすら容赦ない……!だがそれがみんなの静 嵐 ちゃんでもあるのだ……!
「まぁ、そんな君だから、リュイの良き朋友 になってくれて、嬉しいよ」
「あら、どういたしまして」
それでもクスクスと微笑み合うのはさすがの欸性 の余裕と言えようか……。
「ところで玖 は、食べないの?」
せっかく食堂に来たのに。
「吃吧 、してくれないのかな?」
ぐほぁっ!!いや、何をさせようとしてんだこいつはぁっ!
「んもぅ、仕方がないな」
言っとくけど、ちゃんと烈哦性 伝統の吃吧 、くらい媽 と爸 を見て学習済みなのだ。
「玖 、ほら」
俺は蛋芝麻団子 をひとつとり、玖 の口に近付けた。普通の芝麻 団子もあるけれど、こ蛋 あんなのだ。
「成熟好吃吧 !」
「うむ、……ん、真好吃 」
蛋芝麻団子 を美味しく味わった玖 は、静 嵐 ちゃんには聞こえないように俺の耳に口を近付けてきた。
「(今夜は、期待してくれ)」
ちょ……っ、んもう……っ!
烈哦性 の『あーん』をよく理解している回答であった。
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