11 / 21
第11話 学園祭約会
賑やかな校内には、装飾が施され、学生たちはエプロンをしたり、仮装をしたりと楽しんでいるようす。
何だか前世でも感じたことのある懐かしい雰囲気である。
そう……本日は高中校 の学園祭である!
中華圏の学校に学園祭があるかどうかは知らんが、制服がジャージではないのだ!問題ない!そして学園祭と言えば出し物と露店歩きだろうなぁ。
俺が受け持っている授業の哦性 ちゃんたちも露店を出しているのだ。もちろん何かあった時のために貝性 の先輩や老師 も付いているとはいえ……学内を回る哦性 ちゃんもいるからな。
俺は哦性 ちゃんたちを見守りつつ、哦性 ちゃんたちに誘われている出し物を見に行くのだ。
「わたくしも、高中 生の頃のことを思い出しますわ。リュイはこう言うのは初めてで驚いているでしょう?」
「えと……それは、そうだね」
今回は静 嵐 ちゃんも来ている。静 嵐 ちゃんたち大学生にも高中 出身者は多いらしい。
そして学園祭については、実は前世でよく知っているのだが……それは内緒である。
でも出るものが中華風だし、売り物も中華雑貨、パンダグッズ!
演劇も京劇のように飲茶 をしながら……と言うスタイルなのだ。
本日の点心は~~揚げワンタン、油条 の中華クレープ、包子、ドライフルーツもあるぅっ!おいひぃ~~。
そしてさすがに演劇の内容は静 嵐 ちゃんがいないと分からない。
「あれはどういう話なんだろう?」
静 嵐 ちゃんと桌子 を囲みながら、ステージを見やる。
台詞がいつもの話し言葉と違うのだが、劇を見慣れている武林の外のひとは分かるらしい。と言うか、貴人級の子女になると知識として学ぶらしいのだ。
そして普段触れ合っている学生たちのステージならば、俺も知っておきたい。
「あちらは、歴史に名高い食を極めた王が、満漢全席を作るお話ですね」
待って。やっぱり上海ガニとか四川麻婆と同じように何で漢がつく言葉があんだよ。
相変わらずのこの世界あるある。もしかしてもしかしなくても中国の仙人が住んでそうな山と繋がってないよね!?繋がってたらびっくりだけど、少なくとも武林には熊猫 がいる!
けど、四川と繋がっていそうなところなんてあったっけ……?ホアン武林は全体網羅してるはずだけど……四川とは繋がってない……はずだ。
――――ところで。
「実際に作るの?」
満漢全席。
「さすがにそれは……。演技と台詞だけですわね。でもその代わり、こうしてお茶と点心を味わえるんけですわ」
「そっか。満漢全席想像しながら楽しむよ」
「それがいいですわね」
はむはむ。あぁ……点心美味しいなぁ~~。
特に揚げワンタンが好きぃっ!!
――――そしてそんな調子で点心をお代わりし、第二部も見たのだが。
「はぅっ!!?」
「あら、リュイ老師 の影響かしらね?」
「ど……どうなんだろう……?」
ホアン武林の武人烈哦性 がウーシェンを目指してまだ観ぬ敵と戦う……と言うものだった。名乗りの部分だけは……すっごく分かった。
観劇を見終わった後は。
「やぁ、リュイ。楽しんでいるかい?」
聞きなれたこの声は。
「玖 !?どうして」
「校長だからね。学生たちのお祭りの視察かな」
そして当たり前のように俺の手をとり口づけを落とす。
相変わらずの超級丈夫 !でもそうじゃなきゃ烈哦性 の伴侶 は務まらねぇっ!!
そして話を元に戻さねば。
「そっかぁ、確かにそうだよね」
さすがは校長、大学の方もあるとはいえ、抜かりない。
一方で静 嵐 ちゃんは。
「あら……ではわたくしは、後輩たちのもとを回ってまいりますから、リュイたちはどうぞおふたりでっ!」
「へぁっ!?」
ひらひらと手を振って去っていく静 嵐 ちゃん。えっと……この後はどうすれば。
「やはり静 嵐 は気が利くな」
「いや……まぁ静 嵐 ちゃんは気も利くしとってもイイコだよね!」
それは分かる!めちゃくちゃ分かるよ!
武林の外初心者の俺としても心強いもの!
「ではお言葉に甘えて……約会 といこうか……?」
「で……約会!?」
それはいわゆる……学園祭約会!そういや前世でもあったなぁ……。俺はその……リア充爆破を叫んでいたけども、今では懐かしい思い出。
立場は老師 と校長だけども……。それはそれで嬉しい……かも。前世では叶えられずに仲間たちとクラッカー鳴らしながら涙したもんなぁ。
その後の片付け大変だったもんなぁ……。
「あ……でも、お仕事は?視察なんでしょ?」
「夫 と共に回ってもいいだろう?学生たちはこうして恋人同士で巡ることもあるそうだ」
そりゃぁ学生同士はね~~っ!?
「それにリュイも学生たちから人気だ」
「それはね」
すれ違う哦性 ちゃんたちに手を振るなどしている。
「哦性 同士ならいざ知らず……もし欸性 の学生からも人気だと、私は嫉妬してしまう……」
そりゃぁ哦性 ちゃんたちの恋人や伴侶 の欸性 くんたちから話し掛けられることもあるけど……。
「学生相手だよ?」
「高中の講師だって……」
そりゃぁ老師 同士なら交流もあるし……。
「欸性 でも仲良しなのは大体女性の欸性 の老師 で……」
「それは当然だ」
「え……?」
何その即答。
「あ、皇 葎 老師 、校長~~」
と、思っていれば巡回の阮 花猫 老師 。阮 花猫 老師 のために、ゴンちゃんも一緒なようだ。
「げ……皇 葎 老師 ……と、校長!」
今『げ』って言わなかった?ねぇ、ゴンちゃん?
「びくっ」
「私がリュイといることに何かあるのかな?森 弓強 」
「い、いえ、そんなことは!相変わらず強く偉大な烈哦性 だなぁと……びくびく」
ゴンちゃん、びくびくしすぎ?
「ならば、先程のは私のリュイに話し掛けたとは見なさないよ」
「は……はいいいぃっ!!」
またびくびくするゴンちゃん。
「おい……いざというときびくびくしてたら許さんぞ……?誰が阮 花猫 老師 を守ると思ってんの」
「はい――――――っ!この命に代えても!!」
相変わらずびくびくしているが、気合いはたっぷりなのでよしとしよう。
「だが、伴侶 を持った以上、伴侶 の阮 花猫 老師 を遺して逝くなど許されん。この烈哦性 特性護符をやろう。即死級の技でも一度だけその攻撃を防ぐ」
「あ……ありがとうございます……!烈哦性 さまっ」
「うむ」
心意気は立派なので、烈哦性 特製護符を持たせる。
「鶏鶏睾丸 捥ぎからも、一回だけは無効化できるから」
「ひぃっ、そ、それは良かった……っ」
ありがたそうに特製護符をぷるぷるしながらしまうゴンちゃん。
「でも、やっぱり憧れるなぁ……。『私の』皇 葎 老師 だなんて」
そーお?
そして微笑む阮 花猫 老師 に。
「 花猫 だって、俺の……花猫 だかんな……?」
「 弓強 ったら……?」
そして周りから拍手が聞こえて来たことに、ようやっとここが校内だと思い出したゴンちゃんと阮 花猫 老師 が顔を赤く……。
「雄激 起こしたら……」
「それはありません!ありませんからぁっ!!!」
ゴンちゃんが阮 花猫 老師 を連れて逃げるように次の場所へと向かっていった。
「あ、んもぅっ」
「いいじゃないか。リュイ。私たちも、楽しもう?」
「う、うん」
俺の手をとり抱き寄せる玖 を見て、周りから黄色い歓声飛びまくりなのだが。
「……黄菜食べに行こうか」
「それはいいな。ほかにも学生が故郷の菜を出したりもしている。ほかの地方の菜も味わえるぞ」
「それはいいね……!」
「だが……お腹はまだ大丈夫か?」
「まだまだイケルっ!」
「そんな食い意地の張ったリュイもかわいいな」
玖 から前髪越しにちゅっと口づけを贈られてつつも、露店に向かって手を引いてくれる。多分俺の顔も……赤いかも。
ともだちにシェアしよう!