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第13話 静一家
さぁ~~て、とっても楽しみな日がやって来た~~!
俺の手元には、かわいらしい中華風世界の永遠のアイドルが描かれたパッケージ!
「熊猫 、熊猫、熊猫~~」
この間の城市 約会 では、最後に事件なんかもあり、熊猫グッズショップに寄れなかったのである。なので今回は、熊猫グッズショップに寄って、お土産の姜飴を買って車で移動中。
「ねぇ、玖 。この姜飴、個包装のパッケージもすごくかわいいんだ!」
個包装の飴のパッケージも見せてもらったのだが、かわいい熊猫がたくさん描かれていた。それも、この地域で親しまれている少数民族文字も添えられている。
「あぁ、きっと静 嵐 も喜ぶよ。あれはいつもキリッとしていてクールだが、わりとかわいいものも好きだったと思う。その面ではリュイとは気が合うかもな」
と、玖 が答えてくれる。
車の中では玖 と一緒である。
「そう言えば……!玖 と静 嵐 ちゃんって婚約者候補……だったんだよね」
「それはあまり気にしないでくれ。幼馴染みとしての知識の範疇だし……私と静 嵐 がそう言う関係になると思うか……?」
うーん……?
「何か、合わなさそう」
静 (ジン) 嵐 ちゃんは貝性 の女の子たちをかわいがりたいタイプで、玖 は俺を愛でたい……んだよね?
「ぷはっ」
玖 が吹いた!?め、珍しいっ!運転手むで一瞬えっ、てなったよ!?
「あ……ごめん。失礼なら取り消す……?」
「いや、いいよ。静 嵐 はリュイとは趣味が合うとは思う。だが性質の面では私と静 嵐 が似ていると言うのは、お互いに分かっていてな。爸 もそんな気はしていたらしく、無理にとは縁談が進まなかったわけだ」
そ……それは……確かにふたりとも欸性 でリーダータイプ。先頭切って仕切りそう。欸性 にはそう言う性質も多いと言われているから、欸性 同士の夫婦は大変だとも聞く。
しかしながらそれはあくまでも傾向であって、仲のいい欸性 の夫婦もたくさんいるだろうけどね。
「さて、もうすぐ静 嵐 の実家だ」
「うん!」
楽しみだなぁ。姜飴、喜んでくれるだろうか?
実は今日はなんと、静 嵐 ちゃんのお宅にお呼ばれしているのだ。
一応朋友 として飲茶 に……だったのだが、うちの玖 さんに見付かってしまった。
そして、それなら玖 も是非と誘われてしまったのだ。静 嵐 ちゃんは相変わらず気が利く。いや……欸性 と言う性をよく理解している。さすがは欸性 同士。
そして車が着いた場所は、静 嵐 ちゃんの一家の治める自治州の領主邸である。
行政区分で言えば、一番上が皇甫 一家の自治区。つまりは自治区長。その次に副自治区長、そして大きな都市を治める自治州があり、市長のような感じである。行政区としては武林がこの下の自治県に当たる。
そんな都市の長の公館は……。
「わぁ……おっきぃね……」
「うちの方が大きいぞ」
ドテッ。
「まぁ、確かにそうかも。でも静 嵐 ちゃんのおうちも大きい」
「それには違いない」
そして早速とばかりに、静 嵐 ちゃんやおうちの方が出迎えてくれた。
静 嵐 ちゃんの隣に立つ夫婦は……。
「母親 と父親 ですわ」
なぬーっ!?
確かにお母さんは静 嵐 ちゃんによく似ている!そして欸性 同士の夫婦なんだなぁ。それに何だかラブラブそう。静 嵐 ちゃんの親御さんたちも仲良さげで、朋友としては嬉しい限り。そして静 嵐 ちゃんの親御さんたちが、俺たちに拱手をしてくれるのだが。あれ、何だか格式高そうながっしりとした拱手……?
「お久しぶりでございます。皇甫玖狼さま」
「此度は皇夫人もご一緒にお越しくださって、とても嬉しく思いますわ」
はぅ――――――っ!そう言えばうちの玖 さん、領主一家の跡取りやないけっ!その歓迎はある意味納得してしまう!
「いやいや、私は夫 ただの付き添いなのでお気になさらず」
さらりと告げる玖 だが。
『えっ!?』
そりゃ静 嵐 ちゃんのご両親もびっくりするわっ!領主の息子がただの付き添いだなんて。普通逆だもんなぁ……?
「ですから、お伝えいたしましたでしょう?今回は朋友のリュイを飲茶 に誘いましたの。伴侶 さまと共に来られると言うので、わたくしは歓迎いたしましたのよ。欸性 の嫉妬心は、わたくしもよく分かりますもの」
静 嵐 ちゃんが告げれば、ご両親も「あらまぁ」と納得しながらも、中に通してくれた。
※※※
そして静 嵐 ちゃんに早速お土産の姜飴を渡せば……。
「まぁ、かわいらしい!わたくしも熊猫は大好きですのよ!嬉しいですわ!」
ぎゃふっ。心ぶち抜かれると思ったわ。貝性 の女子たちを虜にするのには、こう言うところもあるんだろうなぁ。
「こら、リュイ」
「え?」
不意に玖 に手首の辺りをトントンとされる。
何かマナー的にいけなかっただろうか……?
「リュイの欸性 は、私ひとりだぞ?」
なぬぅっ!?えっと、それはその、俺が静 嵐 ちゃんの微笑みに心ぶち抜かれそうになったの見抜いたの!?そうなの!?伴侶 の欸性 の特殊能力か何かかな!?
「全く嫉妬深いんですから」
「今さらだ」
そう言い合う2人は……やっぱり幼馴染みなんだなぁ。
「だが、誤解はするんじゃないぞ?リュイ」
「え?」
「そんな心配はありませんわよ」
「あ――――……うん?」
何と言うか2人って、幼馴染みと言うより息の合う兄妹みたいにも思えてきた。
やっぱりどこか、似てるんだもん。
そして次に静 嵐 ちゃんが用意してくれた点心を囲みながら談笑していれば、静 嵐 ちゃんのお母さんが申し訳なさそうに現れた。
「お母さま、どういたしましたの?」
「話中にごめんなさいね、嵐」
「いえ、そうしてまでもどうしても……でしたのでしょう?お母さま、一体どういたしましたの?」
「実は……鳳洋 さまがいらっしゃったのよ。お約束もないし、今日は嵐のお朋友 が来ているからとお伝えしたのだけど、強引に押し掛けて来て……」
えぇっ、名家でもある静一家に押し掛けるとかどんだけだよ。
「てか誰、それ?」
「実は……わたくしの婚約者……」
ええぇっ!?静 嵐 ちゃんの婚約者!?
「……を、勝手に主張しているお方ですの」
まさかの自称かよ!?まぁ、でもそれも分かるかな。朋友が来てるのにアポなしで無理矢理押し掛けるような輩……静 嵐 ちゃんの婚約者には全く相応しくないもの……!
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