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第15話 情人節
――――情人節。
この世界には情人節がある。それって何かって?正解は……バレンタインデーです!
因みに中華風世界では……バレンタインデー的なイベント毎月あるらしい。
その中でもビッグイベントとなるのが、冬のバレンタインデー。つまりは地球で言うと2/14。もうひとつが夏に行われる七夕バレンタインデー!
地球での日本でのバレンタインデーとは違い、贈るものは必ずしもチョコレートではなくていい。チョコレートってこの世界にあるの……?と言う疑問もあるのだが。巧克力と呼ばれ普通にある。
冬のバレンタインデーはチョコレートをあげるのもいいが、他にも相手の喜びそうな花やブランド物、食事やデートなどでもいいそうだ。
中でも特徴的なのは……男人 から贈ることが多い。
正確には攻めから贈ることが多い。
だから高中 で見ている哦性 ちゃんたちもウキウキしていた。哦性 ちゃんには受けちゃんが多いもんね。
因みに静 嵐 ちゃんは女性だけども……。
「私は年2回の大きな情人節にいつも応援してくれる貝性 の女の子たちに毎年お菓子を配りますのよ」
うおぉ、カッコえぇ。さすがは静 嵐 ちゃん。
「へぇ、いいなぁ。玖 も何かくれるから?」
「あら……それなのですけれど」
「どうしたの?」
「情人節と言うのは恋人たちの日なので、伴侶になるとやらなくなる場合も多いのです」
な……何ですと――――――っ!?俺と玖 は夫夫。つまりは……やらない……?
「恋人だったこともないのに……」
「あら……ではどうやって結婚を……?政略結婚はあれど、結婚前にお互いを知るための婚約期間はあるはずですわ……?」
「いや……その、武林に迎えに来た玖 と……そのまま」
「あら……これも自分の伴侶 を何がなんでも囲い込みたい欸性 の習性なのかしら」
はぅあぁぁっ!!
「でも、情人節を楽しむ夫夫もおりますのよ?気を落とさないで」
「静 嵐 ちゃん……ありがとう……!そうだ……むしろ俺からあげてやるのも……また烈哦性 !」
「まぁ!さすがですわ、リュイ」
「えっへへー、じゃぁ何かお菓子作ろうかな~~」
玖 め。今まで情人節してくれなかって分、今回の情人節は俺が一肌脱いでやっから覚悟するのだ……!
「応援しておりますわ!」
「うん!ありがとう!」
さて……そうと決まれば、早速食材の調達だ!
大学が終わり、玖 に送ってもらえば、颯爽と城市 に繰り出すうぅっ!
「わぁ……暗くなってきたから、きれい……!」
縦に列なった灯籠に灯りがともり、七夕の季節だからか電飾や、前に来たとき以上に灯籠飾りが増えていて幻想的!
でも……周りを見ればカップルが多いような……。
「り……リア、リア充爆破、リア充爆破……」
いやいや、今はひとりとはいえ、俺にも玖 がいるし!玖 のために食材を調達しに来たのだ!
「さぁ、行こう!リア充爆破!」
「それは何かの呪文か?」
「いや、その、寂しさを紛らわすおまじないというか……え?」
ついつい答えてしまったが、聞き慣れた声にハッとして横を見る。烈哦性 の俺ともあろうものが、サイドをとられるだなんて情けない……!でも……これも一種の不安故だろうか。
「そうか、寂しかったのだな、リュイ」
ふぉ――――――っ!?いくら恋人たちがたくさんとはいえ、玖 が堂々と俺の身体抱き締めてくる――――っ!?
「あぁぅ……ちょ……玖 っ」
「どうした?私とこうしてくっついて……安心しただろうか……」
ふーおーっ!?
「いや、そんなことは」
「リア充爆破と寂しそうに呟いていたではないか」
意味的に超物騒だけどな!?
「それで、どうしたんだ?こんな夜更けに……私にくれるお菓子の材料を買いにきたのかな……?」
何でそれ知ってるううぅぅ――――――っ!?
そして盗聴でもしてたんかい、玖 ~~~~っ!?
「私への……お菓子だよね?」
ひぁ――――――っ!?耳元で甘い吐息吹き掛けるんじゃありまっせんっ!
そこ集中的に確認したいの!?
「と……特別に……作って、やらなくも……ないかなってっ!」
ツンデレじゃないよ。烈哦性 流だよ!?
「ふぅん……?因みに食材を揃えるのなら超級市場 の方がおすすめだ」
さらにさらっとお得情報付けてきたぁ~~っ!しかしここら辺にスーパー?あるのか……?
「つ……連れてってくだしゃ……つ、……ツレテケ!!」
そしてついつい、烈哦性 節が出てしまったぁ――――――っ!?
俺、ある意味惨敗です!!
「あぁ、もちろんだ。私のリュイ」
ふぁ――――――っ!?だから耳元で囁かんといてっ!
※※※
「ここが超市 !」
むしろこの世界にもスーパーがあることにびっくりだが、便利なのに越したことはないよね。
「そうだ。大体何でもそろうが……来るときは私も誘うんだよ」
「な……何故っ」
今日はぐいぐい来るなぁ、もう。
「荷物持ちも欸性 の務めだ」
「そ……それは……っ」
烈哦性 の血が是であると言っている……!
「よく分かった」
欸性 は荷物持ち。
玖 は荷物持ち。
うむっ!
何か上手く乗せられたような気がするけれど……。
「ところで何を作る気なんだ?」
「雪花酥 にしようかと思って」
こちらに来てハマってしまったおやつ。
以前厨師長 おすすめのレシピをこそっともらってきたので、それを作るつもりだ。
「ほう……?楽しみだ。厨師長にレシピを聞いていたのもそのためか」
だから何故知ってる……っ!!
「だが……まさか気にしていたとは」
「ん?」
材料を玖 の持つかごにいれつつも、玖 がふと呟きを漏らす。
「毎月の情人節のことだ」
ほんとどこからどこまで、一体どこで聞いてたんだよ。
「で、でも……俺たちは恋人じゃなくて夫夫だから……」
「関係ないさ。愛しい伴侶 に愛を示せるイベントならば、いくらでもやりたい」
「……っ、じゃ、じゃぁ今までなんでやってなかったんだ?」
夫夫だからってことが理由じゃないなら、溺愛体質な欸性 の玖 がどうしてやってくれなかったのだろう……?
「それは……毎日が情人……いや、夫夫節のようなつもりだったからだな」
「はいっ!?」
「毎日伴侶 のために尽くし、時には贈り物をし、時にはその身体を蜜で包み、時には約会 も……」
「はぅあっ」
た、確かに今まで毎日のようにでろ甘だったかも~~っ!?
「だがそう言うことならば、毎月の情人節は、特別な贈り物をしよう」
しかも普通に毎月やることになってるぅっ!
「そ、その……っ、玖 は毎日やってるんだから、いい!」
「リュイ……?だが……」
「玖 が毎日夫夫節、してくれるなら……情人節は俺から贈る……から」
「……リュイ」
「それとも……夫 から贈るのは……変かな」
「そんなことはない。月に一度、夫 から贈り物があるなんて、最高だな」
はぅーんっ!?玖 の神々しい笑み~~~~っ!
「あ、ありがたく受けとるように……!」
「もちろんだ」
さらっと即答するあたりはやっぱり超級丈夫 である。
※※※
さて、雪花酥と言うのは。
マシュマロを中心にビスケットやドライフルーツを加えるお菓子。
雪花と言うからには外側が白く、【酥】が付くのでサクサク食感である。
作り方も簡単で、マシュマロやミルクを溶かして、熱いうちに砕いたビスケットとドライフルーツを素早く混ぜ、冷まし、切る!そんだけ!簡単だけど美味しいよ!甘いよ!
そうして作り終えれば早速玖 の元へ。
「お茶を淹れよう」
「うん」
玖 がお茶をささっと淹れてくれて……後はお茶っ葉が開くのを待つだけ。
俺はと言えば。
「ほら、玖 。あーんしろ」
雪花酥をひとつまみにし、玖 の口元へ運べば、ぱくりと口に含むが……ちょ、俺の指までっ!?
しかも雪花酥を口に含んだら、その後は俺の指先めっちゃ嘗めてくるぅ~~っ!
「ん……っ、うまいな」
「あうぅ~~っ」
余裕たっぷりに微笑んでるぅっ!俺なんて心臓バクバク……。
「リュイにも、あーんしていいかな?」
「……っ、その、うん」
「今日のリュイは素直でかわいいな。もちろんいつもの逞しいところも好きだ」
じ、玖 ったら。
まぁ、あーんされてやるけども。
はむっ。
もひもひ。
甘っ。
でも安心してくれ、みんな。中華菓子が甘い場合、そのためにお茶がある。
ぐびっ。
お茶も美味しいなぁ。お茶と一緒に食べるとうまい具合に中和されて美味しくなる気がするんだよね。因みに俺は……桃包 はお茶ないと甘くて食べれなくなる。でも桃包は美味しいから食べるけど。
「やはり……リア充爆破と言うおまじないのお陰だろうか?」
「ぐはっ」
それはその……今のでろあまな状況のひとらに使う言葉だからぁっ!
しかし俺の心の叫びをよそに玖 は涼しい顔。あのー……玖 さんや、ほんとに意味……知らないよね……?
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