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第17話 烈哦性的発情期
「リュイ、今日は城市 の探索に行かないか?」
「わぁ、いいね。行く行く」
温泉街探索なんて、よくある異世界ファンタジーのダンジョン並みにわくわくしないか?え……しない?
俺は特にお土産屋さん巡りが好き……いや、無駄遣いはしないよ……?
「因みにあちらの通りだが」
「ん?」
昼間だからかそんなに賑わってはいないが……こちらの温泉街とは何となく雰囲気が違う。
いや、決して怪しいってわけではないのだが。
「あっちは何?」
「大人の夜の社交場だ」
「……はい?」
「だから、大人の夜の社交場だ。リュイは……よく知らなかったか?男女または男同士であはんなことやこ~んなことをする夜の店が並んでいる」
そ……それは分かるわぁ――――っ!
「何でそこ紹介したの……!」
「リュイが誤って迷い込んだら大変だろう……?声をかけたり絡んだりした方が」
はぅ……っ。確かにナンパでもされようものなら一発で沈めそうである。だって俺には玖 がいるもの。
「だからあちらには行ってはいけないよ」
「玖 さんや、それは受けちゃんが誤って迷い込んでしまうフラグでは?むしろ迷い込んじゃぇラッキースケベって声まで聞こえるよ」
「どこからそんなものが聞こえてくるのか……しかし、リュイ。気を付けるに越したことはない」
「まぁそりゃぁ……ね」
では早速健全な温泉街の探索だ!
「こっちも屋台が出ていていい匂いがする~」
「そうだな。何か食べたいものはあるか?」
「そうだなぁ」
ここは海産物がとれるから……。
「あ、帆立!」
「帆立のバター焼きか?分かった。買おうか」
「うん……あ、ちょっと待って……っ」
バター焼きだなんて食欲そそ……っ。
「うん……?」
「毒は……毒は入ってないよね!?」
貝と言えば毒――――っ!
異世界ファンタジーのチート主人公たちよ!ごく普通に貝を焼いているが知っているのか!?貝には……毒があるのだ!
毒があるのはキノコだけじゃない!貝にだって毒はあんのに何でシビレダケにばっかりあたんねん!気を取られるな!シビレ貝にあたる可能性を考えてたまえよおぉぉっ!
「うろは取っている」
「……っ」
「毒が残っていれば、売れないだろう?そこら辺は大丈夫だ」
「完璧すぎる食の安全対策……っ」
「ほかの周辺自治区との差をつけてみた」
じゃぁほかの自治区は違うのぉっ!?
「それは確実に……人気が出る」
「そうだろう?だから、リュイも食べてみるといい」
「う、うん!」
前世ぶりの帆立だぁ~~!
「はむっ、ん……おいひぃ……っ」
あぁ、すばらしや……帆立!そしてバター焼きっ!
「帆立の貝柱の干物セットもあるぞ」
「買いますうぅぅっ!」
山側でも……帆立が食べたいっ!!
あぁ……幸せぇ。因みにししゃも焼きも食べた。ギリギリ早揚げの子持ちししゃもがあって、美味しかった。やっぱりあの食感は……子持ちししゃもでしか味わえないっ!
「焼き魚……は武林でもとれるそうだが、焼き魚かどうかに構わず、リュイは海産物に抵抗がないんだな」
「ギクッ」
「それに時折、不思議な言葉を知っているね」
「ギクッ」
「武林伝来のものかとも思ったが……:媽(母)は知らないと言っていた」
はうぁっ!同じホアン武林の鶯媽 に事前に聞くと言う、徹底ぶりっ!!
「だが……」
「……うん?」
「烈哦性 の秘密を無理矢理暴こうとするのなら、鶏鶏睾丸 捥ぐぞと注意されてしまった」
さすがは鶯媽 !息子の息子にも……一切の躊躇なし!いや、それでこそ烈哦性 !
「その……無理矢理じゃなきゃ、いいんでしょ?」
「……」
「えと……玖 には聞いて欲しいんだ。俺の……秘密」
「リュイ……」
「どこかひとのいないところ……宿の方がいいかな?」
「あそこの亭 はどうだ?」
「……っ、いいかも」
亭とはいわゆる西洋風ファンタジーのガゼボにあたるものだ。しかしもちろん中華風の朝顔をひっくり返したような形の屋根に、四方を支える4本の柱。中は休憩スペースになっており、雨宿り……でもなければ、追加で客人が来ることもないだろう。
亭の椅子に腰掛け、深呼吸をする。
「あのね、玖 。その……俺さ、前世の記憶があるんだ!」
「……前世?」
「そう、しかも違う世界の記憶だ。俺が生魚が好きなのも、たまに聞き慣れない言葉を使うのも……その影響なんだ」
玖 はきょとんとしながらも俺を見つめる。
「夢物語……だと思うよね」
「……いや、リュイが教えてくれて、嬉しいよ」
玖 が俺のことをそっと抱き締めてくれる。
「リュイのことをまた知ることができて、幸せだな」
「……っ」
まさかそんな風に言ってもらえるとは思わなくて。
「もっとリュイの前世の世界のことを知りたいな」
「そう……?その世界には欸貝哦世界 って設定がなくて、それからこの世界の雰囲気は中華風って言われるかなぁ」
「ふむ……それで、恋人はいたのか?」
「……はい?」
「結婚は?」
「し……してない……してない。恋人も……できなかったけど……」
何せリア充爆破呪文を鍛えた身である
「なら、私が初めてと言うことになるな」
何かこれでもかってほどの満面の笑みなんだけど!?欸性 の独占欲満開じゃない!?
「とても光栄だ」
それから俺の手をとって……口付けを贈ってくる。
うぅ……まぁ、この世界に転生して、こうして愛されるのは……悪くはないかな。
※※※
亭で小休憩を終え、宿に戻るために玖 と手を繋ぎながら歩いていれば、叫び声が響く。
「烈哦性 の、発情期 だぞおおぉぉ――――――っ!」
……え?
玖 さん、ついつい俺を見て頬を赤らめる。
「いや、俺じゃないし!」
むしろ俺が発情期 になってたら大変だよ!?それにしても……発情期 ……そう言えば俺もそろそろだと思うんだけど……でも違ううぅっ!
「何だ、リュイの初発情期 じゃないのか」
しゅんっとしないで、しゅんっと!烈哦性 の発情期 喜ぶなんてさすがは烈哦性 の伴侶 の欸性 だけども!玖 との初発情期 はまだ先ですぅっ!!
しかしそうしているうちにも騒ぎは大きくなっているようだ。
「欸性 ――――っ!欸性 は逃げろ!」
「とにかく逃げるんだぁ――――――――っ!」
「襲われるぞぉっ!」
「鶏鶏睾丸 捥がれるぞおおぉぉっ!!!」
まぁ、そうだね……?烈哦性 の発情期 は逃げろが欸性 の合言葉。
――――そして。
「場所は広間の中心部のようだな」
玖 が俺の項をくんくんしながら言ってくる。いや……それは分かるんだけども。烈哦性 の哦激素 にやられないようにするために俺の項を嗅いでるんだと思うんだけども。それでいいのか。究極の防衛術がそれでいいのか、超級丈夫 欸性 !!
画期的すぎて逆に恐いわっ!!
「玖 、俺行ってくる」
「……リュイ」
玖 が俺の項に唇をくっつけながらも、心配そうに俺の名を呼んでくる。
「俺だって烈哦性 。発情期 の時のあのどうしようもない闘争本能は分かる。分かるからこそ、放っておけない!俺が時間を稼ぐから、玖 は発情期 している烈哦性 の伴侶 を探してくれ!」
「……っ、分かった。リュイ」
玖 はついに俺の項から唇を放し……そして力強く頷いた。
「じゃ、行ってくる……っ!」
俺は勢いよく地を蹴ると、どうなってんだと言う跳躍で群衆の並みを飛び越え、哦激素 マックスの烈哦性 の前に、ズドンと地面に亀裂を入れつつも着地し、すっくと立ち上がり、拱手 を上げる。
「我が名はホアン武林の阿那孔打 ・皇 ・葎巫焰 !その烈哦性 ・発情期 、この阿那孔打 ・皇 ・葎巫焰 が相手を引き受けよう!」
そして相手の烈哦性 が、くわりと顔を上げ、そして同じく拱手 を上げる!
「我が名は阿麗圭特 ・皇 ・鶯巒案昂 !阿那孔打 ・皇 ・葎巫焰 よ。烈哦性 ・発情期 のお相手の申し出、大変感謝する……っ!」
いや、まさかの鶯媽 かあぁぁぁ――――――い!何してんのこんなところで!そしてお義父さんどこ行ったぁ――――――っ!は……待てよ……?鶯媽 はもう番った人夫 。烈哦性 の哦激素 は効かないはずである……!つまりはあの項くんくんは玖 がやりたかっただけである!だ……騙されたぁ――――っ!しかし発情期 中の烈哦性 が危ないと言うのは番っていても関係ない。滾る闘志は揺らがないからである!つまりムラムラして暴れたい、欸性 の鶏鶏睾丸 捥ぎたいことには変わらない!
――――だから。
「いざ!」
「お相手致さん!」
鶯媽 と俺が互いに地を蹴り、そして拳を交える。
「うおおぉぉぉぉっ!!」
「ムラムラするうううぅぅ――――――――っ!!!」
「鶯媽 の昂りを……俺が全て受け止めるううぅぅっ!」
「リュイちゃぁぁんっ!」
今、義母子の拳がぶつかり合い、脚が空中で交差し合い烈風を引き起こす!
「おーい、鶯 、済まないな。打ち合わせを抜けて究極来たぞ」
この、声は……っ!
「あら、珊 !」
お義父さんの顔を見て、鶯媽 が火照る顔をほころばせる。
隣には玖 も来ている。
「んもぅ……遅れた分……搾り取るわよっ」
「もちろんだ。楽しみだな」
やはり父子。烈哦性 大好きなところは揺るがない。
「阿那孔打 ・皇 ・葎巫焰 !」
「は……っ、阿麗圭特 ・皇 ・鶯巒案昂 !」
慌てて拱手を組む。
「此度の手合わせ、感謝する!」
「こちらこそ、阿麗圭特 ・皇 ・鶯巒案昂 との手合わせ、光栄であった!」
そう返せば、鶯媽 がにこりと微笑み、お義父さんを脇にさっと抱えれば跳躍しどこかへ向かって行った。多分……目一杯エッチできる場所である。
「てか、何で鶯媽 とお義父さんがいんの?」
「私がリュイと旅行に行くと言ったら自分たちも行くと言ってきてな。だが新婚旅行を邪魔してはいけないと内緒にしていたのだ」
「せめて場所変えればよくない!?いや、だからこそ鶯媽 の発情期 に対応できたから……いいけども!」
「ははは、終わり良ければすべて良しだ」
ほんと余裕だらけだなぁ、玖 ったら。
「さて……宿に帰る前に、あっちの大人のお店に行こうか」
「はい!?」
「迷い込まないうちに、先に行っておこう」
結局大人の社交場に入らされるのか、俺ぇ――――っ!まぁ、玖 が一緒ならいいけども!
大人のお店ではナンパしてきた数人をシメたが……お土産のいい麻縄を買えたからいいかなぁ。
ハプニングはあったものの、なかなかいい旅行だったかも。
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