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第8話 初夜1★

(っていうか、まるで見当違いでもないっていうのが怖い……)  確かにライリーは、魔法薬の力を借りてこそとはいえ、セオが言う特殊オメガ状態だ。ヒートがこないだけで、実はきちんと子を孕んで産めるという。  しかし、ここでそれを認めるわけにはいかない。 「あ、あはは。そんなオメガがいるはずが……」 「ない、とは断言できないだろう。それに」  セオの美しい顔がぐっと近付いてきて、そっとファーストキスを奪われた。ゆっくりと顔を離すと、愛おしげな目でライリーの瞳を覗き込む。 「私たちは夫夫だ。子ができずとも、愛し合うことになんの問題がある」 「え、ええと……」  ナニガ、ドウナッテイル。  セオの主張はもっともだが、突然の手の平返しに唖然とするほかない。後宮入りした当初、自分の子供を産みさえすればいい、と冷たく言い放っていたのに。どういう風の吹き回しだ。  いや、それよりも。 (な、なんとか逃れる術はないか!?)  結婚式が終わるまでは処女を守りたい……って、ライリーに挙式する予定はない。そもそもそれでは、先延ばしにするだけで回避することにならない。  必死に頭を回したが、混乱していることもあって上手い言い訳が思いつかなかった。そうこうしているうちに、セオの手がライリーの衣服を脱がしていく。 「……綺麗だ」  ライリーの裸を見て、セオはそうこぼした。  ついばむようなキスの雨が、ライリーの全身に降り注ぐ。素肌に触れるその手つきは、壊れ物を扱うかのように繊細で優しい。 「あぁっ」  愛撫する手が中心に触れた瞬間、思わず声が漏れ出た。慌てて手の甲で口元を塞いだが、セオはその手首を掴んでシーツに縫い付ける。 「もっと、可愛い声を聞かせてくれ」 「~~っ」  なんだ、これ。  なんなんだ、この展開は。 (お、俺が一体何をしたっていうんだよ――っっ)  このままでは、セオに抱かれてしまう。今夜は子ができる心配がないと言ったって、なぜセオと愛し合わねばならないのだ。  本音は拒否したい、が。セオの王婿なのだから、夜伽の相手を務めるのはライリーの役目でもあることは確か。  そもそも、欠陥オメガを偽装すれば、セオと性行為することはないだろう、と考えていた自分が甘かった。 (う、受け入れるしかない……か)  腹をくくれ。殺されるわけではないのだから。  処女を捧げることくらい、なんてことはない。多分。  ライリーは抵抗をやめ、諦めた。 「セオ陛下。その、や、優しくして下さい……」  こわごわと言うと、「分かっている」といつもより柔らかい声音の返事があった。  セオが覆いかぶさってきて、再び唇を奪われる。緊張して閉ざしていた口を舌でこじ開けられ、ぬるりとした舌が侵入してきた。  おずおずと舌を絡ませ合う。 「んっ、ぁ……」  よく小説では甘い味がどうのこうのと書かれているが、実際には無味無臭だ。だが、舌をちゅっと吸われると、下半身に痺れにも似た快感が直撃した。  しばらくディープキスをした後、セオの顏はライリーの乳首に移動する。右の乳首を口に含まれて、左の乳首は指で摘ままれて。舌による優しい刺激と、指による強い刺激が、同時にライリーを襲う。 「あっ、んんっ」  緩やかな快感が全身を支配する。下半身が疼いて足をもじもじとさせていると、セオは小さく笑って、すっかり硬くなった中心に手を伸ばす。  やんわりと握られて、上下に扱かれるとたまらなく気持ちいい。 「気持ちよさそうだな」 「そ、そんなこと……あぁっ」  咄嗟に否定するが、喘ぎ声を出していては説得力がない。挙句、竿の先端から先走りが溢れ出てくる始末。  くちゅくちゅと室内に響く水音が、ライリーの羞恥心を煽る。お前は感じているんだ、と突きつけられているようで。  竿の丸い窪みからセオは先走りを指で掬って、その指をお尻の窄まりに這わせる。出入り口に先走りを塗りたくり、つぷっと中指を差し挿れてきた。  未知の感覚に、体が強張った。そのことに気付いたセオが、宥めるようにライリーの額にキスを落とす。 「大丈夫だ」  菊門を犯す指がまた一本、増える。円を描くようにくるくると掻き回し、まだ未通の処女門をほぐしていく。 「……そろそろ、挿れるぞ」  下着ごと下ろしたズボンの奥から露になる、セオの欲望。はち切れんばかりに硬く膨れ上がって、天を衝いている。  ライリーは、ごくりと生唾を飲み込んだ。 (あ、あれが尻に入るのか? 本当に?)  赤ん坊が出られるくらいなのだから、そりゃあ入るだろうと思うが……相当、痛いのでは。  怖気づいたライリーは、やめろと言いたくなった。が、口にするよりも先に、セオは肉棒をライリーの後孔にあてがった。  正常位の体勢でぐっと圧力をかけられると、少しずつそこが開けていく。怒張したモノがゆっくりと中に入ってくる。  丹念にほぐしてもらったからだろうか。想像したような激痛ではない。痛みはほんの少しだけだ。それよりも圧迫感が強く、胸の辺りが苦しい。 「入ったぞ。大丈夫か」  気付いたら、根本まで中に収まっていた。だが、そこの感覚が鈍いのか、あまり存在を感じない。この胸の圧迫感がなかったら、入っているのか分からなかっただろう。 「だ、大丈夫です」  もうここまできたら、引き返せない。さっさと終えてもらおう。  大丈夫だと聞いて、セオは「では、動くぞ」とそろりと腰を引いた。そして、またゆっくりと押し入ってくる。  その際、先端が奥に当たって、痺れるような快感が弾けた。 「あ、んっ!」  喘ぎ声が出たことで、気持ちいいのだとセオは察したらしかった。抜き差しを繰り返しながら、そこを重点的に攻めてくる。  奥を突かれるたび、頭に火花が散る。喘ぎ声が止められない。 「あぁっ、やっ、んんっ」 「何が嫌なんだ。ここが好きなんだろう」  意地悪く言いながら、ぐりぐりと押し付けられると、たまらなく気持ちいい。  不思議ともう痛みはなかった。圧迫感も消え、与えられるのは快楽だけ。 「そんなことな……あぁっ!」  ずんと一息に貫かれて、あろうことかイってしまった。  突然の強烈な攻めに、ライリーは恨めしげにセオを見上げる。しかし、潤んだ瞳で睨まれても、痛くも痒くもないらしい。涼しい顔をして、ライリーの後孔を穿つ。  意地悪だと思いつつも、激しさを増していく抽挿による快楽には抗えなかった。 「あっ、あぁっ、やぁっ」  嫌だと言いつつ、腰が勝手に動く。はしたないことをしていると分かっているが、快楽を貪ることをやめられない。  セオは仄かに笑い、 「中に出すぞ」  腰を大きくグラインドさせた。  膨張した雄が中で爆発し、蜜液で肉奥を濡らす。その衝撃で、ライリーもまた、再び硬くなっていた熱芯から蜜液を吐き出した。

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