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第19話 新たな侍従10★
その日の夕方。イーデンは後宮を去った。
無論、見送りには行かなかった。知恵熱がぶり返して具合が悪いということにして。
イーデンの今後が全く気にならなくなったわけではない。だが、ライリーにはもうイーデンが幸せになる未来を願うことしかできない。
(イーデンさん。お元気で)
これからもう互いの道が交わることはないだろう。
ライリーは、自室の窓から遠目にイーデンの背中を見送った。
さらに時計の針は進んで、夜。
夕食を終えて自室でまったりと過ごしていると、顔を出したのはセオだ。ライリーは椅子から立ち上がって、セオの下まで駆け寄った。
「セオ。イーデンさんのこと……ありがとう」
自身の好感度が下がるにも関わらず、ライリーのために実行してくれた。
隠し事をしていたことだってもっと怒ってもいいだろうに、一言も責めない寛容さには頭が下がる。そういえば、トマスが以前言っていた。セオの心根は優しいのだと。
本当にその通りなのかもしれなかった。
「あと、本当にごめん。相談するのが遅くなって」
「私の方こそ、気付いてやれずすまなかった。知恵熱を出すほど悩んでいたというのに」
話しながら、いつものように寝台の端に隣り合って座る。
セオの両手がライリーの頬を包み込んで、秀麗な顔が迫ってきた。ライリーはそっと目を閉じて、優しいキスを受け入れる。
「んっ、ふ…ぁっ……」
少しずつ深くなっていくキス。舌と舌を絡ませ、貪り合う。
性行為をするのは、実に一週間ぶりだ。ちなみにその間に発情期は過ぎてしまった。三ヶ月後にまた、拒否するいい言い訳を考えておかねばならない。
でも、それ以外では。セオの夜伽の相手をきちんと務めなければならない。
(俺は王婿なんだから……国王に抱かれるのは当たり前、だよな?)
子ができるわけではあるまいし、処女だって捧げたのだ。失うものなんてない。キスにも行為にももう慣れてしまった。
ライリーがセオに抱かれるのは、義務でしかない。そう、それだけだ。
だから――久しぶりの性行為が待ち遠しかったように思うのは、気のせいなのだ。
「ライリー」
寝台に押し倒しながら、セオは恐れていた質問を口にした。
「イーデンからは何もされなかったか」
ぎくっ。
衣服を脱がされながら、ライリーは返答に窮した。
(ふ、不貞になるかな……あれ)
イーデンがやってきた初日の、入浴時の一件。イーデンに下心があったのか確かめる術はもうないものの、おそらく全く無かったわけではないだろう。
それに他にも。体を密着させられたことだとか、指と指を絡ませられたことだとか、額にキスをされたことだとか。小さなことならままある。
「う……えっと、その」
「正直に話してほしい。責めるつもりはないから」
首筋に優しくキスをされる。
優しくされると、罪悪感がこみ上げてきた。一方的な好意だったのだし、ライリーはやましく思うことじゃないはずなのだが、それでも開き直れるほど神経は図太くない。
ライリーはおずおずと口を開いた。
「イーデンさんがやってきた初日に、お風呂で体を洗ってもらったんだけど……か、下半身を触られた……」
他にも覚えのあることを、洗いざらい白状する。
責めるつもりはないと言ったって、聞いていて気分のいい話ではないだろう。気分を害するだろうなと覚悟したが、予想に反してセオの機嫌は悪くはならなかった。
ただ、「そうか」とだけ言って、なぜか脱がしかけていた衣服を着せ直す。ライリーは戸惑うしかない。
「セ、セオ?」
表情に出ていないだけで、実は気分を害したのだろうか。それで、ライリーのことを抱く気が失せてしまったのでは。
性行為せずにすむのなら喜ばしいことのはず、なのに。ライリーの胸に言いようのない不安が広がっていく。
このまま、部屋を立ち去るのだろうと思った。王城に戻ると。
――が。
「浴室に行こう」
ライリーは、きょとんとした。
「え?」
「思えば、一緒にシャワーを浴びたことがなかっただろう。せっかくだ。一緒にシャワーを浴びてから、ここで寝よう」
「え、あ……う、うん」
思いがけない提案だったが、ひとまず決して抱く気が失せたわけではないことに、ライリーはほっと胸を撫で下ろす。
セオに手を引かれて、ライリーは自室から脱衣所に移動した。脱衣所で互いにいそいそと衣服を脱いで、隣室の浴室に進む。
滝のようなシャワーを浴びながら、二人は正面から抱き合った。
(あ、当たる……)
身体を密着させているので、少し動くだけで互いのそれが擦れてしまう。シャワーを浴びているだけなのに、気分まで湿ったものになっていく。
「洗おうか」
セオは一旦体を離し、石鹸を布で泡立てた。たっぷりと泡をライリーの中心に纏わせて、根本から先端まで包み込む。その下の双果にも擦り合わせるようにもみ込まれる。
「んっ、あっ」
泡はふわふわとしていて、それでいて滑りがいい。上下に扱かれると、優しい刺激でもたまらなく気持ちいい。
「う……も、もういいよ」
このまま、反応してしまいそうだ。
やめるように訴えたが、セオは構わず愛撫を続けた。ねちっこい愛撫に先端の窪みから先走りがこぼれる。タイルに落ちたそれは、けれど泡ごとシャワーのお湯に流されていく。
「あっ、はっ……も、もう、出る」
「出せばいい」
吐精を促すかのように一際強く扱かれると、ライリーは達してしまった。どろりとした白濁したものは、あろうことかセオの手を汚してしまう。
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