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第20話 新たな侍従11★

 ライリーは慌てた。 「ご、ごめん。早くシャワーで……」 「いい。それよりも、ライリー。壁に手をついて、尻をこっちに向けろ」  ――そんな恥ずかしい体勢になれだと!?  ライリーは頬を赤く染める。嫌だと拒否しようかと思ったが……今回の一件でセオには迷惑をかけてしまった。不快な思いもさせただろう。そう思うと、少しくらい言うことを聞いてもいいのでは、という考えが頭をもたげた。  ライリーは意を決して、壁に両手をつける。少し足を開いて、お尻をセオの方にそろりと突き出した。  すると、セオの手が双丘をぐいっと左右に割る。晒された窄まりに、先ほどライリーが吐き出した蜜液を塗りたくった。潤滑剤代わりだろう。 「挿れるぞ」  腰をがっちりと掴まれ、充溢したモノが後孔にあてがわれる。猛々しい雄棒が、襞を押し広げながら、中に埋め込まれていく。 「あぁっ……」  吐息がこぼれる。  後背位というのは初めてだ。浴室で致すというのも同様に。 (そういえば……脱衣所に鍵をかけたっけ?)  すぐにシャワーを浴びて出てくるだけだと思っていたので、鍵をかけたか記憶が定かではない。宮女たちが空気を読まずに声をかけてくるとは思わないものの、いつ誰に見られてもおかしくないという緊張感が、さらなる興奮を掻き立てる。 「動くぞ」  ゆっくりと、抽挿が始まった。  ここ数ヶ月の性行為ですっかりセオの形になったライリーの中は、出て行こうとすると引き止め、入ってくるときは包み込むように受け入れる。  生き物のようだ、とセオは仄かに笑った。 「あぁ、あぁっ、っんん!」  抜き差しされるたび、気持ちのいいところが擦れて、喘ぎ声が止まらない。甘い電流が走ったような快感に襲われる。  それになんだか、正常位よりも深い。身体の奥深くまで熱芯を感じる。 「ライリー。愛している」  背中に、優しい口づけが落ちた。  たったそれだけで感じてしまい、セオの分身を締めつけてしまう。よほどきつかったのか、セオは「くっ」と顔を歪めた。 「すごい締めつけだな。そんなにいいのか」 「ち、ちがっ……あぁっ!」  ズゥンと重い一撃を見舞われて、ライリーは一際大きな嬌声を上げた。基本的に優しいセオではあるが、ライリーが素直じゃないことを言うと、意地悪く攻めてくる。 (これからは優しく抱くんじゃなかったのかよ!)  弾む熱い吐息。ライリーの喘ぎ声。くちゅくちゅと鳴る水音。  淫靡な音だけが浴室に響く。 「ふ…ぁっ……あぁっ!」  腰を打ちつけるセオの動きが、次第に加速していく。押し寄せる快感の波に頭の芯がぼぅとしてきて、ライリーはただ快楽を享受することしかできない。 「あっ、あっ、俺…っ……もう」 「ああ。イくといい。私も出そうだ」  ライリーの中で、どくりと雄が膨張した。ぐいっと腰が突き出されると雄が弾け、中に熱いものが迸る。同時にライリーも再び絶頂を駆け上がって、花棒から蜜液を吐き出した。  ――部屋に戻ったら寝るんだろうな、と思ったら。 「え、ちょ、ちょっと、――また!?」  寝台に上がるなり、セオに押し倒された。  ライリーは頭上にある美しい顔を、こわごわと見上げる。 「あの……浴室でした、よな?」 「あれでは足りない」  な・ん・だ・と。  ライリーは二回達したからか、もう性欲なんて感じていないのに。覆いかぶさってくるセオの胸板を、ライリーは押し返そうとした。が、腕力でセオに勝てるはずもなかった。 「嫌か」 「い、嫌っていうか……何事も適正回数があるんじゃないかなーって」  そんなにヤりまくっていたら、発情期の猿のようだ。  セオは不服そうな顔である。 「一週間ぶりなんだ。その埋め合わせと考えたら、一回では足りない」  その理屈でいったら、あと六回ヤらなければならなくなる。冗談じゃない。また疲労から寝台に寝込む羽目になってしまう。  ライリーもライリーで困っていると、セオの熱を帯びた眼差しがじっと見つめる。 「もっと、愛させてほしい。私以外の男に気が向かないように」 「待て。イーデンさんのことはどうも思ってなかったよ」  気にかけていたのは、娶るはずだった人という責任感からでしかない。……が、傍目から見たら、妙に特別扱いしていたように見えていてもおかしくはないかも、とも思う。  さて。どうセオを宥めたらいいのか。 「俺はセオの王婿なんだから。セオ以外の男を好きになるわけないだろ」  セオ本人のことだって別に好いてはいない……けれど。 (まぁ、嫌いではないけどさ……)  恋愛対象として好きなのかと聞かれたら、返答に窮する。そもそも、これまでライリーは恋愛とはとんと縁がなかったのだ。恋愛感情というのはよく分からない。 「……なら、ライリーからキスをしてくれ」 「え?」 「そうしたら、今日は引き下がる」  ――子供かよ。  突っ込みは心の中にとどめ、ライリーは渋々とセオに顔を近付けた。目を閉じているセオの唇に、ちゅっと口づける。 「さっ、寝よう」  さっさと布団に潜り込んで、横たわる。セオも満足したのか、寝台に横になった。背後からライリーを抱き締めるような体勢で。 「愛しているよ。ライリー」  耳元で囁く愛の睦言。  どうも思わないわけではない。だが、五年後には、セオはエザラとの間に子を授かるのだ。その頃にはきっと、この謎の溺愛モードも終わっていることだろう。  耳半分で聞いておくのが、賢い判断というものだ。  ちなみに、ライリーの侍従の件だが。  ライリーは相手がオメガでも魅了してしまうとセオは頭を抱え、結果――トマスが呼び戻されたのは、まぁ言うまでもない。

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