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Mad About You 後編 ※

シャワーを終えると、濡れた髪のまま押し倒されるようにベッドに沈み込む。「濡れちゃうよ」って言おうとしたら、途中でキスされて最後まで言えなかった。 火照った身体が更に熱を帯びて、肌が重なり合う部分は少しずつ汗ばんでいく。漏れる吐息、熱っぽい視線、伝わる体温‥どんなに小さな快感も逃すまいと五感全てで必死にそれを手繰り寄せると、徐々にオレはオレでなくなっていく。 修くんの目に、今のオレはどんな風に映っているのかな。 背中を滑らす手を止めて修くんがオレの首元に顔を埋めたから、ふっと意識が戻る。 「‥どうしたの?」 「ナナの匂いじゃない」 「だってお風呂はいったもん」 「俺さ、ナナの匂い好きだよ。だけど今の匂いも好き。俺と同じ匂いがするの、すごく興奮するんだ。何か「俺のモノ」みたいで」 確かめるように抱きしめられたから、オレも同じようにしてそれに応える。 「修くんそれ‥何かエロい」 「だってこれからエロいことするんだよ‥?」 吐息交じりの囁きが耳を掠め、高揚感と期待感でオレの身体は正直に反応した。 今日の修くんはカッコよすぎる。 オレの中で修くんはいつだってカッコいいんだけど‥今日は特別カッコいい。 頬や髪を撫でながら触れるだけのキスを何度もして、それだけじゃ全然足りなくなってきて、オレは必死に舌を伸ばす。そんなオレを見透かしたように、修くんは唇にばかりキスをして。オレが泣きそうになると「ゴメン」って笑って、そこでようやく舌を絡めて深いキスをくれた。 息が上がるくらいの激しいキスをしながら、内腿に修くんのが擦れるたびにオレの内側はどんどん熱くなっていって、もう早く欲しくて欲しくてたまらなくなる。 徐々に修くんのキスが下におりてきて、ある部分に触れられると思わず声が漏れる。厭らしく勃った胸の突起が目について慌てて視線を逸らすと、それに気がついた修くんはそこばっかり責めてくる。オレの弱い場所を知っているから、敏感になっているその部分に大げさな音を立てて何度も吸いついて、舌で弄って‥オレの反応を愉しんでるみたいでホント、意地が悪い。 やられっぱなしは嫌だから、いつもだったらオレもおんなじことをし返すんだけど、今日はそんな余裕、全然ない。 疼く入り口に修くんの指が押し当てられる。いつもは時間をかけてゆっくり慣らしていくそこも、今日は何度か撫でられただけで修くんを受け入れることができた。 「ナナ、今日すごいよ」 「あ‥っん‥はぁ、っあ‥ぁ」 異物感はすぐに快感へと変わって、オレはその波にただ飲まれるしかなかった。 離れている間、時々無性に寂しくなって、修くんが恋しくなって、オレは修くんのことを考えながら一人で欲を吐き出していた。前よりも後ろのほうが感じるようになってしまった自分自身に嫌悪感を抱きながら、それでも自分の指で疼く部分を何度も何度も慰めた。‥だけど全然物足りなくて。 オレのより大きい修くんの手で、指でされるとやっぱりすごく気持ちがいい。身体だけじゃない。修くんと一緒にいることが実感できて、心の底から幸せな気持ちになれる。 ふと、自分の声の大きさに気づいて慌てて口を塞ぐ。それに気づいた修くんはオレの手をゆっくりと解いて 「今日は隣、いないから」 小さく笑ってそう言うと、オレの中に2本目の指を滑り込ませてきた。 修くんの指が動くたびに、オレの身体は面白いくらい反応する。浅いところを擦られて身体が大きく反れると、修くんはキスを落としながら何度もそこを刺激した。 「ナナ‥」 切なげにオレの名前を呼ぶのは、修くんが我慢できなくなったサインだ。 「修くんの‥して、ない‥っ」 「いいよ、もう十分」 そう言ってオレの手を掴んで熱くなった自身に触れさせると、修くんはいつものように眉を少しだけ下げて困ったように優しく笑った。 「はっ‥あ、あぁ‥っ」 「‥っ、あっ‥」 狭い入り口を割って入ってくる感覚は、いつだって震える。恐怖と、その先にある快感を知っているから、オレは何度だって修くんを受け入れる。 「ごめん‥今日は優しくできないかも」 何だか笑っちゃう。だって‥そう聞いてくれるだけで十分優しいから。 「奥までちょうだい」 汗ばんだ背中に腕を絡め、オレは必死に修くんに縋りつく。修くんは呆れたような、幸せそうなため息を吐いて一気にオレの中へと入ってきた。 ヒュっと声にならない声が喉の奥で鳴り、その後はもう、修くんに合わせて欲望のままにただ喘ぐだけ。腰を浮かせもっともっとと求めると、目が眩むような快感に堪らず涙が溢れた。 幸せすぎて、時々すごく不安になる。 気持ち良すぎて、怖い。 「しゅ‥くん‥‥て‥キス、して‥」 汗と涙と涎と‥きっとグッチャグチャの酷い顔だろうなって思う。だけど。厭らしくねだるオレに、修くんはたくさんたくさんキスをくれた。 「ナナ‥っ、ナナ好きだよ‥」 「は‥ぁっ‥オレも、‥修く‥っあ、ぁ」 名前を呼ぶ声は修くんに届いただろうか。 動くスピードが速くなって、いよいよ限界がみえてくる。深い所を何度も突かれると、全身電気が走ったみたいに痺れて、それで‥もう気持ちいいしか考えられなくなる。目を閉じると、ローションか先走りかわからない液体の擦れる湿った音と、大げさに喘ぐ自分の声が嫌でも耳について、ゾクゾクと身体が震えた。 程なくして、声にならない声を上げて内側が小刻みに痙攣すると、オレを抱きしめる修くんの腕にギュッと力が入った。 * 「ねぇナナ」 「んー?」 名前を呼ばれ、まだ気怠い身体をベッドに横たわらせながらヘッドボードにもたれかかって座っている修くんに視線を送る。 「俺さ‥いつもはカッコ悪い?」 真剣な顔で言うもんだから、しばらく真面目に考えちゃって‥オレが答えに詰まっていると、修くんは「やっぱいいや」って笑いながら慌てて自分の髪を掻き混ぜた。‥そう言われると気になってしまうから、オレはゆっくりと身体を起き上がらせて修くんの顔を覗き込む。 「‥何で?」 「いや、あー‥さっきさ、「いつもと全然違くて」って言ってたから‥」 ‥そういえばあの時、修くんすごい微妙な反応してたっけ。今の言葉を聞いて、ああそうかって納得した。 「修くんはいつだってカッコいいよ」 ニッと笑って思うままの素直な気持ちを伝えると、修くんはさっきより大きなため息を吐いてまた項垂れてしまった。‥なんでだ?? 「あの‥修くん?」 「ねぇナナ、もう1回‥」 「ちょっ‥ダメ!」 絡みついてくる修くんに思いっきりデコピンしたら、また小さい子供みたいに拗ねてしまった。もー、心配して損したっ! 「あ、」 「?」 手を伸ばして床に落ちていた丸まったティッシュを拾い上げると、修くんは紫色の瞳をキラキラと輝かせて自信満々に言う。 「これが入ったらもう1回な!」 勢いよく投げられたティッシュがゴミ箱の横に落ちたのを見て、オレは大笑い。 もうホント、カッコつかないなぁ。 ‥だけど、そんな修くんが大好きだ。 割と本気で凹んでる修くんを抱きしめてゆっくりと唇を重ねる。こんな幸せな時間がこれからもずっと続けばいいなって、オレはいつも思ってるんだ。 おわり

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