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How to

※性描写ありです。受どうしの触り合い(自慰行為)、苦手な方はご注意を。 「でもさー、飛鳥の早朝トレーニングを考えるとさ、ペースって週一とかでしょ?」 「へ?う、うん…」 「うーん、ひとつ屋根の下に住んでる思春期高校生男子がそれで足りてるわけ?」 「……いや、その、それは、」 男子寮の狭い部屋。二人だけの空間でそれでも声を潜めてたずねれば、飛鳥は色白の肌を耳まで真っ赤に染め上げた。 そろそろ夕食行こー!と色と飛鳥の部屋へ顔を出せば、珍しくそこには飛鳥一人しかいなかった。 色はどうやらお仕事の期限が迫っているらしく、第二音楽室に缶詰らしい。 もう少しだけ弾いてから帰る。と連絡がきたのがつい先程らしいから、しばらく帰ってこないんだろう。 そんなわけで色を待つのか、それとも先に食事済ませちゃうかと相談から入ったはずの世間話は気がつけば何故だかあらぬ方向に流れていってしまっていた。いや、まぁ、興味本位で僕が流したんだけれども。 猥談なんてした事なさそうな飛鳥が一体どんな反応を示すのか。そもそも色とそういう行為に及んでるというのがどうにも想像つかなくて、ついつい聞いてしまっていた。 「あ、あの、」 顔を真っ赤に染めた飛鳥がおずおずと視線をあげる。 「……やっぱり、足りないのかな?」 声が小さく弱々しいのは羞恥のせいだけじゃないんだろう。その亜麻色の瞳は不安に彩られていた。 「僕の身体を気遣ってくれてるの、うれしいんだけど、でも、その、やっぱり色は辛いのかな?」 「あー、実際飛鳥はどうなの?足りてる?」 質問に質問で返せば、飛鳥は再び恥ずかしそうに俯いたあと小さく首を横に振った。 今どき珍しく純粋という培養液に浸って育ってきた無垢な人間だと思っていたけど、ちゃんとそういう欲求はあるらしい。それはちょっと衝撃だった。 「その、色に、ま、満足してもらうにはどうしたらいいんだろう……」 それでもやっぱり自分の事より相手の事を考えちゃうところは飛鳥らしい。 縋るような視線を向けられ、飛鳥には申し訳ないけど、可愛いなぁと心の中で笑ってしまった。 本人はいたって真剣らしいので、僕もここはちゃんと答えてあげるべきなんだろう。 「方法は二つかな。」 僕は飛鳥の目の前にぴっ、と人差し指を立てる。 「一つは濃度をあげること。まぁ、要するに一回で何回やるかって話。」 「な、なるほど。」 背筋を伸ばし、メモでもとりそうなくらいに真剣な顔で頷く飛鳥に思わずふき出しそうになりながら、僕は二本目の指を立てる。 「もう一つは身体に負担が小さい方法を入れる事。要は最後までしなくとも抜いてあげる日を作っちゃえば?」 「ぬ、……な、るほど。」 顔の赤みがさらに増した気がする。 飛鳥は羞恥に耐えるように膝の上でぎゅっと自らの拳を握りしめた。 なんか、ここまで過剰に反応されちゃうと悪いことしてるみたいだな。 「そ、その、あの。…の、濃度、に関しましてはですね。その、僕毎回その……気を失うくらいには既に濃くて、ですね。だから、その、」 「……あー。」 色のやつ、今度お説教だな。うん。 「そ、それでその、抜…のは、ぐ、具体的にはどうすれば。」 縋るように向けられる瞳は既に涙目だ。 こんな純粋な人に教え込んじゃっていいんだろうか。というか、この先の話に耐えられるのか?ちょっと不安になってきた。同い歳だとわかってはいるのだけれど、どうにも幼い子供にものを教えてる気がしてならない。 「その、どうやって、そういう行為に持っていけばいいのかわからなくて。でも、こういうの、聞ける人がいなくて。」 いや、もうホント何この可愛い生き物。しゅんとうなだれる姿は庇護欲をかきたてられる。 どうしよう、ちょっと色の気持ちがわかっちゃったかもしれない。飛鳥は間違いなく……虐めたくなっちゃうタイプだ。 「……軽くボディタッチから入ればいいんじゃない?」 それは、一パーセントの親切心と九十九パーセントの興味だった。 僕は飛鳥に身体を寄せ、そっとその背筋を指でなぞる。 「ん、」 ぴくりと身体が震え、その口からは吐息が漏れた。 「あ、きら…」 「普段色にどうやって触れられてるか思い出して、同じ事返してあげればいいんだよ。」 耳元で囁いて、今度は脇腹をなぞる。上から下に線を書くように指をはわせて身体のラインをなぞり太腿まで辿ってやれば、飛鳥はぎゅっと瞳を閉じて身体を小さく反らせた。 「ぁ、」 明らかに熱を孕んだ吐息。 仰け反った首筋から鎖骨を辿り、つん、と張られた胸をひと撫ですれば、その身体は一際大きく反応を示した。 「ひぁ、」 「気持ちいーんだ?」 返事の代わりにこくこくと頷かれ、思わず口角が上がる。 これは、やばいかもしれない。 「あ、きら…、」 縋るようにのばされた飛鳥の白く細い指が僕の鎖骨を辿った。 「っ、」 「こ、う?」 「ん、じょーず。」 僕の動きを追いかけるように、触れるか触れないか、ギリギリのところで身体のラインをなぞる指。それが互いにぷくりと存在を主張しはじめていた胸の突起に触れたのはほとんど同時だった。 「「っぁ、」」 僕達は互いに身体を反らせ、それでも触れるその手は離さなかった。 シャツの上から指でくにくにと刺激してやれば、僕に触れる指も軽く突起を押しつぶすように触れてきて、ぞくりと背筋が粟立つ。 「あすかも、ここ、きもちーんだ?」 「っ、」 「ここで気持ちよくなれるくらい、たくさん触ってもらったんだね。」 「っ、いわ、ないでっ、」 いつの間にか両の手がのびて、夢中で互いの胸をまさぐり合っていた。 狭い部屋が、二人分の濃密な吐息で溢れていく。 「ぁ、あきらっ、も、これ以上は、」 きゅ、と突起をつまみあげてやれば、飛鳥の口から一際切ない嬌声が漏れた。遅れて僕の胸にも同じ刺激がもたらされて、思わず身体がしなる。 もう、限界かも。 僕はもぞもぞと身をよじる飛鳥の内腿に手を伸ばし、ジャージの布を押し上げ存在を主張していたそれに布越しに触れた。 「ひァっ」 仰け反る身体が倒れないよう腰に手を回して支えてやれば、濡れた瞳が無言で訴えてくる。 「色のだと思って自分の触ってみなよ。」 「っ、はずか、し…」 「大丈夫、ぼくも、一緒だから。自分が気持ちいいように、触ればいいんだよ。」 「っ、」 おそるおそる飛鳥の下肢にのばされた手が、張り詰めたジャージの中に入り込む。 「ん、ぁ、」 もぞもぞと蠢く手がジャージの布を押し上げるさまはなんとも淫靡な光景だった。 僕は思わず息を飲み、自らの下肢に手をのばす。目の前の甘い光景に煽られて、僕のそこも既に張り詰めていた。 窮屈になったズボンのファスナーを下ろして熱を持ったそれを外気に晒す。 「ぁ、しきぃ、っ、」 飛鳥はぎゅっと瞳を閉じて、半開きになったその唇からは切なく声が漏れ続けている。 その脳内ではきっとあの無愛想な顔が余裕をなくしているんだろう。 「いつもどんな風に触ってもらってるの?」 「ァ、んぁっ、ゆび、で、わっか、あ、じょ、げ、にっ、あっ、ん、」 「同じようにしてあげなよ。」 「んっ、だめっ、も、だめっ、」 もどかしそうに腰を揺らしている姿は色でなくとも興奮を煽る。 僕も、いつの間にか腰を動かしてしまっていた。 「ね、あすかはいつも色のこと考えながらしてるの?」 うわ言のように色の名を呼びながら、こくこくと飛鳥は首を縦に振った。 「ん、おもい、だしてっ、て、動いちゃうっ、」 「それ、色に言ってあげるといいよ。……たぶん、もっと気持ちよくしてもらえるから。」 耳元で囁けば、飛鳥の身体がぴくんと跳ねる。 その瞳がうっすらと見開かれ、熱に浮かされた亜麻色が焦点の合わないまま僕を見つめた。 「ん、……きら、は?晃、も、しきのこと、考える、の?」 うっすら滲んだ涙の意味は果たしてなんだったんだろ。僕も余裕をなくしていて、自らの熱を高めるために指を動かしていた。 「だいじょ、ぶ。そんな事、考えてない、からっ、」 ぞくぞくと背筋を這い上がる快感に身を委ねながら何とかそれだけ伝えてあげれば、何かに耐えるように眉間に皺を寄せていた顔がほんの少しだけ弛緩した。 「……じゃあ、せんせい、?」 一瞬、僕の頭を雑に撫ぜる手を思い出してしまった。 どくりと心臓が脈打つ。 「ぁ、うそ、…んでっ、」 その存在を思い出した瞬間、僕の手は自らの制御を外れてしまった。 「ぁ、んっ、」 どうしよう、身体、あつい。 「あきらも、きもち、いーの、?」 「んっ、いい。気持ちいいっ、」 もう自分で何を言っているのかもわからなくなっていた。 とにかく身体の内で燻る熱を何とかしたくて夢中で自身を擦り上げて。……誰かの名前を呼んでいた気がする。 「あ、んっ、も、しきぃっ、」 「……っし、さん、」 飛鳥が身体を痙攣させ絶頂を迎えるのを横目で見ながら、僕も自らの昂りに爪を立て、脳髄を駆け上がる快感にぎゅっと瞳を閉じた。 「……で、こんな状態になってる、と。」 事の顛末を聞いた色は、こめかみを押えながら何とも形容しがたい声でぽつりと呟いた。 互いに熱を放った快感が抜けきれなくて、互いの胸に顔を埋めて息を整えていた時に、突如開かれたドア。 僕達の惨状を目にした色は、状況が理解出来ずに固まってしまった。 独特の青臭い臭気に顔を赤らめ呼吸の荒い僕達。何より僕らの手にはいまだ白濁とした欲望の塊が絡みついたまま。 何が行われていたのかは明白だろうけど、思考が追いつかなかったらしい。 「え、っと、……お前ら、何してんの?」 「だからあれじゃない?……ナニしてたんだよね?」 「へ?え、えっと……あれ…?」 まだ意識がぼんやりとしている中で色にかけた第一声は、冷静になった今ではツッコミしかないんだけど。 まともな思考を保っている人間が誰一人としていない中でとりあえず誤解のないようにと正直に事の顛末を説明すれば、色の顔は赤くなり、青くなり、最後には顔をひきつらせ言葉を失ってしまった。 何か言いたげに開きかけた唇は、いまだぼんやりと焦点の合わない飛鳥に向けられた途端、ぐ、とつぐまれる。 とろんと蕩けた亜麻色、上気した頬に、唇から漏れる粗く熱っぽい息づかい。 ごくりと、色の喉が鳴った。 「……色々言いたいことはあるが、とりあえず、」 汚れた手をティッシュで清め終えたところで、色の手が僕の腕を掴んだ。 「ちょ、」 抵抗する間もなく無理やり引きずられ、部屋の外へと追いやられる。 ぎ、と睨みつけられれば、抗議の言葉は噤むしかない。 いつも以上にへの字に曲げられた口は、嫉妬か、羞恥か、はたまた怒りか。 恋人を気持ちよくするために友人と実践するのは果たして指南なのか浮気なのか。微妙な胸中を僕にぶつける余裕はどうやら今の色には無いらしい。 「とりあえず、夕飯は一時間後な。」 言うが早いかバタンと思い切りドアを閉められ部屋から追い出されてしまった。 『あれ?……晃、?』 『で、飛鳥さんは晃先生に何教わったんですかねぇ?あ?』 『へ?ちょ、……んぁ、』 「……ですよねぇ。」 多分、一時間じゃ済まないな。 僕もシャワー浴びて出直してこよう。 ちょっぴり寂しい気持ちを感じつつ、ドアの向こうから聞こえたきた嬌声に再び当てられる前にと、僕はそっと濃密な空間を後にした。 とりあえず、だいぶ遅くなった夕食の席では色が妙に上機嫌だったので、どうやらいい結果に落ちついたんだろう。 ……第二回は果たしてあるのかないのか。これ、ちょっとハマりそうかも。

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