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第5話 冷遇婿ライフ終了2★

「や、やめ……」 「やめない。あなたの心から他の男が消えるまでは」  惜しげもなく鍛え上げられた裸体を披露し、はち切れんばかりに膨れ上がった雄芯を、正常位の体勢で俺の後孔にあてがう。  いやいや! そんな太いのが入るわけがないだろ! 仮に入ったとしても、尻が裂けるって、絶対!  という俺の心の突っ込みとは裏腹に、雄芯はゆっくりと俺の中に押し入ってくる。覚悟していたような痛みはなく、少しずつ根本まで飲み込んでいった。指で丹念にほぐされたからなのか、あるいは俺がオメガだからなのか。  ローレンスはすぐには動かなかった。中に馴染ませてから、抽挿を開始する。 「あっ、あっ、あぁっ」  リズミカルに腰を打ちつけられるたび、喘ぎ声が口からもれる。指とは比べ物にならないほど、質量と重量感があって、最奥のしこりを突かれると耐え難い快楽の波が押し寄せた。  うわっ、なんだこれ。き、気持ちいい……!  男に抱かれるのが、こんなにも気持ちいいものだとは知らなかった。国王陛下の側婿だった俺だけど、四人の側婿の中から正婿に決めた婿を一番初めに抱く、という国王陛下の意向でまだ手を出されていなかったんだ。  だから、今回で処女喪失……という表現が適切かは分からないけど、とにかく男に抱かれるのは初体験だ。いや、誰かを抱いた経験もないんだけどさ。 「やっ…ぁ……んん!」  もう喘ぎ声が止められない。  中をもっと擦ってほしくて、もっと抉ってほしくて、腰が勝手に動く。いやらしいことをしているという自覚はあったけど、羞恥心なんて快楽の前では綺麗さっぱり消えた。  ううっ、尻に男根を突っ込まれて感じてるなんて……!  ローレンスの動きが段々と速くなっていく。激しい抽挿に感じさせられながら、俺は絶頂へと駆け上がっていく。 「ん…ぁっ……イ、く! あぁぁぁぁぁ――……っ!」  身体が浮き上がるほど勢いよく突き上げられると、俺は再び達してしまった。同時に中がキュンと締まって、ローレンスの雄を締め付けたようで、ローレンスもまた俺の中に吐精した。  ずるりと俺の中から男根を引き抜かれる。 「気持ちよかったか」 「………」  俺はぼぅっと虚空を見つめた。――男に犯された。その上、イってしまった。  快楽の時間を終えて冷静になった今では……もう泣きたい。とにかく、泣きたい。  っていうか、なんでこんなことになったんだよ。まだ国王陛下を慕っているっていう設定にしたのが間違いだったってこと? でも、忘れさせる方法が抱くって、少女漫画でもこんな強引な展開にならないだろ。  これがゲームだったら、今朝に戻ってやり直したいよ……。  天国と地獄を両方体感したこの日をもって、俺の理想とする冷遇婿ライフは終了した。  忘れさせるというからには、手を出してくるのはこの一度きりじゃないだろう。そんな俺の予測は大当たりだった。  それからというもの、ローレンスは毎晩のように俺を抱きにきた。拒否するいい理由が思いつかず、なし崩し的に交合する羽目になっている。途中からは俺も投げやりな気分だった。  さらに二ヶ月が過ぎ、晩秋を迎えた頃。そろそろ、ローレンスに心が傾いたということにしようかな、と思うんだけど……困ったことに好きになった理由が思いつかないんだ、これが。  いまさら美貌に惹かれたというのはおかしな話だし、かといって他に惚れるような何かがあったわけでもない。人を好きになるのに理由なんて必要ないかもしれないけど、でもそれじゃあ、説得力がないような気がして。 「では、行ってくる」 「はい。いってらっしゃいませ」  今日も勤めで王城へ行くローレンスを玄関まで見送ると、ローレンスはそっと俺にキスをしてから家を出て行った。これも今や毎朝のことで、拒否しようという気もわかない。  こうして愛情表現してくれるから、心変わりしたっていう設定にしてもいいんだけど……それだとなんとなく尻軽のような気がしてなぁ。迷ってる。  うーん、どうにか好きになったそれっぽい理由はないものか。 「ふふ、相変わらずお仲がよろしいことで」  俺の後ろで微笑ましい顔をしているのは、オリビアさんだ。そう、オリビアさんたち使用人の前でも、あいつは平気でキスしてくるんだよ。その手の羞恥心はないのかよ、あいつ。 「ご結婚された当初は、ちっとも甘い雰囲気がなかったのに。旦那様は変わられましたね。旦那様の成長を見守ってきた立場としては、感慨深いです。これはお子を授かるのも時間の問題ですね。楽しみにしていますよ」 「あ、ありがとうございます……」  俺は頬を赤らめつつ、努めて笑みを返すので精一杯だ。子供なんて期待されても困るよ。子供ができたら、冷遇婿ライフを取り戻すどころじゃなくなっちゃうじゃん。  そんな、傍から見たら甘い新婚生活を送っていたある日のことだ。仕事から帰ってきたローレンスが、国王陛下の生誕祭の招待状を俺に手渡してきた。  生誕祭とは文字通りのことだ。王城へ各地から貴族が集まって、国王陛下が生まれた日を祝福するパーティーのことだ。 「一ヶ月後の生誕祭に、あなたも招待された。参加できるか?」  俺も男爵夫人で貴族なわけだから、参加する資格はある。でもまさか、招待されるとは思わなかった。だって、後宮を追放された身だぞ。普通、招待しないだろ。 「えーっと……参加するのは構わないですが、どうして私にも招待状が? あれだけのことをして後宮を追放された身ですのに」  ローレンスは国王陛下の側近騎士なんだから、何か理由を知っているんじゃないかと思って聞いてみたら、あっさりと答えは返ってきた。 「あなたが過去の過ちを悔い改めたことを陛下にお話したことがある。だからだと思う」 「そう、なんですか……それでしたら、お心遣いありがたく参加します」  そうして招待状を受け取って了承したものの。俺は内心顔をしかめていた。  正直、貴族の集まりに参加するなんて堅苦しい上に面倒臭い。だけどまさか、しがない男爵夫人の身で断れるはずもない。ローレンスにだって立場があるだろうし。仕方ない、か。  という流れで渋々と参加した生誕祭で、まさかあんなことになろうとは、この時の俺は知るよしもなかった。

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