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第2話 法廷では静粛にっ!
―――3時間後
「さて、ラティラ・カレイド。何故ここに呼ばれたか、わかっているな」
そう告げたのは、俺と同じ銀色の髪に紫色の瞳を持つナイスミドル・無論俺の父であるカレイド王国国王である。その場には宰相や各官吏、そして当事者である第2王子・ルイス、俺の元婚約者であったレガーロ公爵令嬢・ラピスがいる。
更に傍聴席にはラピスの両親であるレガーロ公爵夫妻、第2王子側近のロイドがおり、本来国王の隣の席に座るはずであった正妃、つまり俺の母上は泣き崩れて少し離れた場所でしくしくと泣いている。
俺の後ろには2人の騎士が逃げないようにと控えており、更には俺が新たに婚約を結ぶと宣言してしまったルチアがいた。
ルチアもまた女性騎士に付き添われて法廷入りをしている。まずは俺の番と言うことか。
俺が答えようとしたその時だった。
「国王さまぁっ!!」
うおおおぉぉいっ!今お前のターンじゃねぇだろルチアあああぁぁぁっっ!!!
何故、俺は今までこんなバカっぽいお花畑少女と恋愛ごっこをしていたのだろうか。前世の記憶が蘇ってからは全く以って彼女に興味がない。と言うか俺はグラディウス帝国の皇帝アイルが好みなんだよ!あぁ、アイル。あの美しい顔を思い起こすと溜息が出てしまう。うぅっ。多分今も苦しんでいるだろうアイル。絶対俺、お前のとこにお嫁に行けるように頑張るからな!よしっ!!
「どうしてこんなひどいことをするんですかぁっ!?私はラティラさまと一緒に幸せになりたかっただけなのにぃっ!」
「発言を控えよ、ルチア・レガーロ嬢」
国王陛下の鋭いひと言が飛ぶが。
「うええぇぇぇんっ!酷いよ酷いよぉ~っ!」
そうだった。ルチアはいつもこうだった。都合が悪くなると泣きまねをするのだ。前世で読んだ小説『カレイド王国物語』でもそうやってざまぁされヒロイン道をまっしぐらに進んでいたっけ。そしてそんなルチアにうまく乗せられて婚約破棄までしてしまったバカ王子がこの俺だ。
「国王陛下、発言をお許し願えますでしょうか」
「良い。述べよ。ラティラ・カレイド」
父王の重たい声が響く。うぅ、いつも以上に重たい。
「五月蠅いので裁判は別々にやってくださいませんか」
―しーん。―
その場が一瞬で凍り付いた。
そして案の定最初に口を開いたのは。
「ら、ラティラさまっ!?どおしてですかぁっ!?」
お前が五月蠅いからだよっ!アバズレがっ!!
「私たち、愛し合っていましたよねっ!?」
記憶が戻る前の俺だったらそう思うだろう。そしてルチアを庇っていただろう。しかしながら、前世の記憶を思い出した今、俺の計画を語るには彼女は邪魔でしかない。てか、騒音被害半端ない。
「あぁ、かわいそうなルチアっ!」
「あなたっ、うぅ」
あぁー、傍聴席から来たか。やっぱり来たか。ルチアの両親、レガーロ公爵夫妻。
「傍聴席も五月蠅いので一掃してくださいませんか」
―しーん。―
再びの沈黙。ルチアも唖然としている。ルチアの両親はさすがに王子である俺に盾突いてぎゃーぎゃー言ってくることはなかった。
「ら、ラティラさまはラピスお姉さまに脅されているのよ!!」
いや、止めろルチア。それ以上ラピスの侮辱をするなああぁぁぁっ!!俺の計画が狂ったらどうしてくれるっ!!
「いい加減にしないか!ラピスがそんなことをするわけがない!それともラピスがやったという証拠はあるのか!?」
おぉ、ここで小説の主人公が口を開いた。カレイド王国第2王子にして俺の異母弟ルイスである。ルイスは黒い髪に青い瞳を持つ美青年だ。こっちはこっちでオリエンタルな魅力がある。しかし、俺はアイルの方が好みなんだ!あの妖艶さがたまらないというか、あの妖艶な顔でふっと微笑んでもらいたいいいいぃぃぃっっ!!!いや、それは今いいか。とにかくだ。
「五月蠅いのであの3人、下がらせていただけますか」
―し―――――ん。―
「その方がよさそうだ」
そう、俺の歯牙にもかけない態度に父王も頷き、場違い父母娘 は一旦それぞれ別室に待機となったのである。
はぁー、やっと静かになった。むしろ最初からそう申請しておけば良かった。
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