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第8話 帝都へ出発
YES!I AM THE アイルたんの嫁―――!!
気合十分な俺は遂に帝国へ嫁に行くために祖国カレイド王国を出発する日を迎えた。
「ラティラ、向こうでもしっかりやるんだぞ」
「はい、父上」
父王が泣きじゃくりながら俺の両肩をぽんぽんしてくれる。国王の威厳はどこ行ったよ。
「ラティラさまにはいくら感謝してもしきれません」
次に声を掛けてくれたのは、病み上がりなので椅子に座りながらも見送りに来てくれた王妃のスザナさまだ。まだ正式に復帰するまでには時間がかかるらしい。
「うぇっ、兄上がお嫁に行っちゃうなんて」
横で泣きじゃくっているのは銀色の髪に青い瞳を持つショタっ子第3王子のゼン。記憶を取り戻す前からもそんなに会うことも話すこともなかったのだが。自身が最も尊敬する兄・ルイスとラピスの縁を結び、実母であるスザナを助けたということで彼の中では新聞と同じく俺が英雄的な存在になってしまったらしい。
うぐっ、てか何このショタっ子かわいすぎる!いや、俺は皇帝・アイルたんの嫁だけどもっ!
「スザナさまもゼンも健康に気を付けて、お元気で。落ち着いたら手紙を出しますね」
「えぇ、楽しみにしております」
「ぼ、ぼくもです!」
うわっ、ショタっ子萌えー。
スザナさまと会ったことなどほとんどなかった俺だが、スザナさまは俺に対して感謝しきれないという感じで親愛の情を向けてくれるようだ。これからも仲良くできそうでよかったな。ま、定期的に予言書は送ろうと思う。
続いては。
「ラティラ兄上、あぁっ、ラティラ兄上~~~っ!」
がばっ、ぎゅー。
ルイスはイケメン主人公性ガン無視で俺に抱き着いてきた。お前、いつの間にそんなに涙腺ゆるくなったん?しかもラピスもその隣でハンカチを手に涙を拭っている。
「もっと、もっとラティラ兄上に学びたかったです!」
いや、俺が持ってる学で使えそうなのは小説での知識だけ!!
「ま、何かあったら手紙で相談してくれ」
「はい、兄上!」
「うぅ、お元気で。ラティラお義兄さま」
何故かラピスにもお義兄さまと呼ばれることになった今日この頃。
その他にも王城の大勢のひとたちからの盛大なる見送りを受け、側近のルークや帝国までの護衛と御者としてお供を連れながら、俺は仰々しく出立した。
因みにこのまま帝国に残るのはルークだけで、他のみなは帝国に俺を送り届けたら帰国することになっている。何だか俺を送迎できることをめちゃくちゃ喜んでくれていた。送迎当番については争奪戦になるほどに白熱したらしい。
そして道中は本当にお祭り騒ぎ。沿道の民衆たちに馬車の中から手を振り、笑顔を振りまき、めちゃくちゃ疲れた俺は、帝国領に入るなり疲れ切って熟睡した。
―――帝都・帝国城
さて、ここが俺の愛するアイルたんが治めるグラディウス帝国の帝都で帝国城!
つくなり出迎えたのは、愛しのアイルたんではなく。
「ようこそお越しくださいました。ラティラ・カレイド第1王子殿下」
「こちらこそ、お出迎えありがとうございます。コンラート・グラディウス皇弟殿下」
そう、コイツコミカライズで見たことある。金茶の髪に赤い瞳を持つ見た目は爽やか系美青年。俺の夫・アイルたんの弟。一見いいひとそう!と思うのだがお兄ちゃん大好きっ子な狂犬でもある。原作小説では主人公・ルイスと対立し、激しい攻防戦を繰り広げる戦闘狂 である。
互いに挨拶を済ませ、荷物や献上品を運んでもらう。一休みしたらルーク以外は帰国してもらう予定だ。俺はルークと共にコンラートに城内へ案内される。
「では、まずはこちらへ」
案内されたのは貴賓室のようだ。いきなり後宮に行くと思っていたのだが。
「護衛の方は外でお待ちください。皇帝陛下への謁見にあたり注意事項などをお話します。機密事項も含まれますので」
そう、コンラートが爽やかな笑みで告げるが、コイツはアイルお兄ちゃんのことになるととことん腹黒になるのである。そして部下の前では本性をあらわにする。
「あ、そう」
「えっ」
別にいいけど?みたいにさらっと言ってのける俺の側近・ルークに対し、コンラートがきょとんとした表情になる。
「何だ、そちらが言ったんだろう」
「えぇ、まぁ」
「なら、早くしてくれ。俺も疲れてるからとっとと休みたいんだ」
そう言って、そこら辺の壁に背を凭れるルーク。お前帝国城でもそのスタイルかよっ!!しかし今更なので俺は何事もなかったかのように対応する。
「それで、入られないので?」
「あ、どうぞ」
俺のとびっきりの笑みに、コンラートがしどろもどろになりながらも応接間の中に案内してくれた。応接間の中では、四方に護衛騎士が控えている。あれはただの護衛騎士じゃない。お兄ちゃん大好きっ子・コンラートの命令なら何でも聞く子飼いの狂犬騎士どもだ。いや、騎士と言っていいのかどうか。そう言う連中である。
俺が彼らをものともせず腰掛ければ、俺が何も知らないバカ王子だとでも思っているのか。コンラートが不遜にほくそ笑んだ。
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