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第25話 記念式典の知らせ
「記念式典?」
いつもの夕餉の折、本日のメニュー・エッグハンバーグを味わいながら、アイルたんがそう告げてきた。
―――そう言えば。第1王子として参加したことがあった気がする。アイルたんが即位した日を祝う記念式典で毎年開かれている。俺は父上と共に出席することもあったけど。大体テゾーロ神聖国のメンツに捕まってたから、アイルたんに挨拶するときくらいしか言葉を交わしたことはない。
「そう言えば、もうそんな時期だな。プレゼントでも用意しようか?」
「プレゼント、か」
喜ぶかな、と思ったのだがアイルたんの表情は浮かないようだ。一体どうしたんだろう?
「欲しいものとか、ある?俺が用意できるものなら」
もちろん良心的なものに限るが。税金の無駄遣いはしない。うんっ!
破滅フラグ回避のため、ひいては世界滅亡の危機回避のためにできるだけのことはやっておかねば。もちろん、そのための賄賂としてルークにへのグルメ提供も欠かせないが。
「欲しいものなら、あるな」
アイルたんが先ほどまでの浮かない表情を隠し、俺をまっすぐに見つめてくる。
―――ドキッ
あ、アイルたんに見つめられてる―――。フォーク落としそうになるわぁ―――。もうテーブルマナーなんてどうでもいいやぁ。いや、良くない良くない。
「な、なぁに?」
何か食べたいものでもあるのかな?それとも一発芸?いやんなわけあるかいっ!
「ティル」
「へ?」
「ティルの全てが欲しい」
ひあああぁぁぁぁ―――っ!!!アイルたああぁぁぁ―――んっっ!!な、なんということだっ!!
「いや、その。俺は既にアイルたんの嫁なんだから。俺の身も心も全てアイルたんのものだよ?」
俺はアイルたんに身も心も捧げると誓ったのだ!いや、もちろん皇后の仕事はちゃんとやるし献身的に取り組むけども。
「では、今夜も」
「ん、わかった」
あぁ、アイルたんに初めて抱かれた夜。そしてその次の夜もたーんと抱かれた俺。毎日初めての夜と変わらぬペースで愛を注がれ続けております、俺。
どうやら今まで聖魔力に飢えていた分、その分を補充しようとアイルたんの肉欲が旺盛になっているような気がする。
あぁ、今夜もアイルたんに愛を注がれ、そして翌朝聖魔力をめっちゃ消費するっと。まぁ、朝飯作る分は残ってるから、後は夜に向けて魔力が回復すればいいんだけどな。最悪MP回復ポーションでも作るか。
※これでも自作できる
「それで、最初の話の続きだけど。その記念式典って、俺も出るの?」
ま、皇后だし。アイルたんが必要としてるなら俺は参加するけども。
「―――ティルのお披露目も兼ねることになった」
「まぁ、ちょうどいいタイミングだよね」
大規模な催しになるし、帝都も活気で溢れるお祭り騒ぎだった気がするし。それほどまでにアイルたんの治世は民衆に希望を与えているのだ。
「衣装はどうする?デザインはお揃い派?―――それとも」
「衣装もアクセサリーも俺が用意する」
おぉっ、全身アイルたんセレクトコーデか。それもなかなかに楽しみだな。
「だが」
「何か懸念が?」
つい最近中立派と嘯いた連中を処断したので、先代皇妹派も暫くは大人しくするはず。連中が担ぎ上げようとしていた俺が完全にアイルたんの肩を持ったからな。
―――次に連中が担ぎ上げようとする候補は見当がついているけれど。俺を担ぎ上げれば神聖国がバックにつくだろうから、彼らが早々に諦めるとは思えない。多分、折を見て接触してくるだろうけど。
「ティルを俺だけのものにしたい」
あ、ああああアイルたああぁぁぁんっっ!!?
「ティルが周囲の注目の的になる度にその視線を送るものを始末したくなってくる」
うぐおおあぁぁぁぁぁっっ!!!アイルたんの愛がっ!嫉妬がっ!独占欲がぁっ!!あぁ、アイルたんアイルたんアイルたん。もうなにこれ。何このイチャイチャ新婚生活最高、アイルたん。
「ん、よい脳内BGMだな」
あ、あああアイルたああぁぁぁ―――んっっ!!!
「できれば、実際に声に出しても呼んでほしい」
「あっ、アイルたんっ」
「あぁ、ティル。愛してる」
「ぐはっ」
「ティルは?」
アイルたんは仏頂面のままだが、こてんと首を傾げて俺を見つめてくるさまは、めっちゃかわいい。すごいかわいいアイルたん。めっちゃイケメンで美人で超尊い。
「あ、愛してる」
「ん、良いな」
「うんっ」
即位記念式典かぁ。当日のアイルたんのカッコいい衣装が楽しみ。そして俺のはどんなデザインなのかな。お揃い?なぁんて。
―――あ、そうだ。
「あの、アイルたん」
「ん?」
「―――ドレスは、ナシでお願い!」
ココだけは譲れないっ!!
「それは考えていなかった。だが、それだとデザインもお揃いとはいかないし」
アイルたんったらハッとしないで、そこ!
「俺、アイルたんとお揃いがいい!」
「ん、ではその方向で調整しよう。楽しみにしていてくれ」
「うんっ!」
―――どうやら最大の危機は乗り越えたらしい。うん、本当に良かった。
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