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第31話 んにゅう~~
―――んにゅぅ~~~。アイルたんのお膝枕ぁ~!
穿いているズボンの生地が高級だからまた肌触りが良くって。そしてほんのり温かいアイルたんの温もりが、あぁ最高。
「それで、これはいったいどう言うことだ」
あ。アイルたんの声~。いつ聞いてもいい声っ!
「恐らく原因は、お酒かと」
ユーリの声である。
「ティルは酒に弱かったのか」
「い、いぇ」
次はラピスの声だな。
「お酒は、強いです。―――物凄く」
ルイスったら良くわかってるぅ~。もぅ最近はお兄ちゃん大好きっ子なんだからぁ~。ブラコンラートとは違って、ルイスの方はピュア!主人公だからピュア弟なんだよな~。
「では、これはどういうことか」
「は、話せば長くなるのですが」
ラピスが恐る恐る口を開いたようだ。
「―――構わない。ティルの話ならば10時間は余裕で聞ける」
あ、アイルたああぁぁぁんっっ!わぁっ、んもぅ大好き~!
※状態異常:ツッコミ放棄
アイルたんの太ももの間にすりすりすり~。あ!アイルたんが頭なでなでしてくれてる~!
「では……。以前、国際会議にてサザン諸島へ赴いたことがあるのです」
「貴様とふたりきりでか」
ん?そりゃぁラピスは当時の婚約者だったし。パートナーとして一緒に参加したんだよな~。
「いえ、護衛や外交官、侍女や侍従も一緒でしたが」
「ならばいい」
「え、着眼点はそこなんですか?」
何だかユーリがツッコミ代行してくれている気がする。あぁ、アイルたんアイルたん。太ももすりすりすり~。
「その際に、現地のもてなしを受けまして。お義兄さまはその現地の料理である“カレー”にハマってしまわれたのです」
あの頃はまだ前世の記憶を取り戻していなかったけど。カレーに出会い、カレーにハマってしまったのは、今考えれば運命だったのかもしれない。魂の奥底に封印されたカレーへの愛がぁ、愛……、愛してるアイルたぁ~ん。むにゃむにゃ。
「そして後日語学留学との名目で、カレーの作り方をマスターするために再び訪国したのです」
そう言えば~。カレーを習いに行くっていう名目は父上にさすがに止められたんだった。そんで、語学留学ってことで当時婚約者だったラピスと一緒に滞在したんだっけ~。
※なお、俺は滞在中はずっとカレーを習い、ラピスは現地の学校に通っていた。思えば、毎日作ったカレーをラピスやついてきた護衛や使用人たちにご馳走してたなぁ~。因みにルークも一緒であった。
※ついでに、グラディウス帝国・カレイド王国での公用語とサザン諸島の公用語は異なる
※カレーを作りながらも現地民と会話していたので、ちゃんと語学の勉強にもなっていたはずである。―――うんっ!
「その際に、現地の王族の方々から歓迎の宴に招かれたのです。その場で、私はお酒があまり得意ではなく。しかしお断りするのも失礼なので困っていたのです。そんな時、お義兄さまが代わりに飲んでくださって」
そう言えば、そんなこともあったなぁ。ラピスはお酒が苦手だったっけ。酒が出る席では俺が代わりに飲んでたっけ。
「私も、油断していたのです。普段は代わりに飲んでくださっても1~2杯で、平気なお顔をされていたので」
「ティルは何杯飲んだんだ?」
「物凄く飲んでましたね。さすがに飲み過ぎかとおとめしたのですが、遅かったようです。申し訳ありません」
え、そうだったっけ?ユーリったらよく見てるなぁ。てか、お酒だったっけ?炭酸ジュースと、炭酸ジュースと、あれ―――お酒だった?
「良い。酒に酔って俺に甘えるティルもなかなか乙なものだ」
わぁいっ!アイルたんったらもぅ~、そんな嬉しいこと言われたらもっと甘えちゃう~。すりすりすり~。えへへ~、アイルたんがまた頭なでなでしてくれたぁ~!
「その、恐らく普通に飲めば、酒豪の粋です」
「私もそう思います。兄上は本当に酔わないんです」
『聖魔法さえ使わなければ』
チミたち、それどゆ意味~?
「聖魔法が関係しているのか?」
「はい。サザン諸島での宴で出されたお酒は度数が高かったのですが、お義兄さまはいつもの癖で聖魔法で浄化してから飲まれてしまいまして。お酒に聖魔法を加えると、度数が上がるんです。その上、匂いも消えるので」
「あぁ、お酒か炭酸ジュースかわからなくなってしまうんですか?」
「その通りです、ユーリさま」
え、ぅあー。そう言えばそんなこともあった。―――っけ?
「健康に害は」
「その時は同行していた医師に診断してもらい、健康上の被害はありませんでした。お義兄さまは優秀な聖魔法の使い手なので、魔力が尽きない限りは体内で自動回復されるので大丈夫です。―――ただ」
「ただ?」
アイルたんの声色が変わる。
「お酒の浄化の余波なのか、何故か、そのぅ」
え?何かあったっけ?
「ラピス、ここはぼくから」
「ルイス!」
いや、ちょっとまてお前ら。何?何その重大な宣告を前にしたやり取りみたいなのは!えっ、俺なんかあるの!?どうにかなっちゃうの!?聖魔力はまだ、十二分にあるけどぉっ!?最近アイルたんに毎晩のように搾り取られて、ちょっと魔力量が上がった気もするし。
「皇帝陛下。大変申し訳にくいのですが」
「良い。ティルのことで俺が知らぬことがあるなど、耐えられぬ」
あ、あああアイルたんったらぁっ!何その独占欲みたいなの~っ!そんなかわいいこと言われたらぁ、俺もアイルたんの太もも全部独占しちゃうぞ~☆アイルたんの太ももの間に顔をうずめて~、むぎゅぅ~、すりすりすり。
※酔ってます
「では、申し上げます。兄上は聖魔法でお酒を浄化し、そして酔い状態になった場合。どこからか妖艶なオーラを発し、そして周囲を悪戯に誘惑しだすのです。しかも本人は無自覚で」
すぴー。むにゃむにゃ。
「誘惑」
「はい」
「俺以外をか」
「いえ、多分皇后陛下は陛下以外には靡かないですよ。皇后陛下が放つ妖艶さに周りが勝手に酔っているだけです」
おっ!ユーリはさっすがわかってるぅ~。俺はアイルたん一筋だもんねぇ~。
「ふむ、ティルが俺以外に興味がないのならそれでいい」
あ、アイルたんったら~。すりすり~。
「ユーリ・カヒリ」
「はい、皇帝陛下」
「これより、ティルに酒を与えることは禁ずる。俺と二人っきりの時のみで飲むことを許す」
「料理酒はいかがしますか?」
んー、料理酒は大事だからぁー。
「それは許可する。だが、飲むことは許さぬ。徹底するように」
「御意」
話し合いの決着はついたっぽいかなぁ。
そこに、誰かが追加で入ってきた。
「陛下、そろそろ戻ってください。皇后陛下の退席は体調不良としておきましたが、さすがに陛下には戻っていただかなければ困ります。今日の主役なのですから。皇弟殿下と私で繋ぐのにも限界があります」
あ、宰相だ。
「むっ」
「寝てればよくなりますので」
と、ルイス。
「ルークさん、シシカバブ」
「はっ!!わかった。運ぶ」
ひょいっと体が宙に浮きあがった。あぁ、ルークか。てか、ユーリもルークの扱い方が上手くなってきたなぁ~。
「む、ティルを運ぶのならば、俺が」
アイルたん?
「陛下はダメです!戻ってください!」
わぁ、宰相が多分鬼の形相。
「俺以外がティルを抱くなどと」
「ふん、そんな成りをしておいてか」
ひぇー。ちょっとルーク!俺のアイルたんになんてことゆーのっ!うぅ~、頭くらくらしてなかったらぽかぽかしてやったのにぃーっ!
「ルークさんったら!」
ペシッ。
あぁ、でもこんな状況でもしっかりとユーリはツッコミを入れている。俺がツッコミ不能の時は、頼んだぞっ、ユーリ!!
でもそんなルークの異常さも、恐らく気が付いているのはツッコミ特性を持つユーリと聖魔法使い・ラピスだけだろう。じゃなきゃ、今頃宰相や他の護衛騎士たちが怒っているだろうし、ルイスも大慌てだろう。果たしてアイルたんは?
「貸しにはしておく」
「貸し?面白いことを言うな」
「こらっ!ルークさん!焼き鳥なしにしますよ!」
「ぐぅっ」
だから、どーしてお前はそうグルメに敗北すんだよっ!!
※何だかツッコミ特性が回復しつつあるようだ
―――こうして俺は一時撤退することとなり、いつの間にかすやすやと寝入ってしまったのだった。
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