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第35話 その腕の中で

「んっ、うぅんっ」 あれ、ここは。 あぁ、ベッドの上だ。そして、アイルたんの腕の中。もぞもぞと身をゆすりながらも見上げれば、そこには愛おし気に俺を見つめているアイルたんの顔があった。 「あれ、起きてた?」 「あぁ、かわいいティルを堪能したかったからな」 ぐはっ。 何その爽やかイケメンスマイル! 惚れてまうがな、いやもう惚れてるけど。 「俺、いつの間に寝落ちてたんだ」 アイルたんの絶倫に絶頂しまくって、いつの間にか寝落ちていたらしい。体が少しだるいかも。多分聖魔力をふんだんに吸い取られたのだろう。 アイルたんの肌に伸びていた黒々としたものはだいぶ薄らいでいるから、今日もしっかりと補充できたらしい。一安心っと。 「俺の腕の中ですやすやと寝入るティルもかわいいものだな」 「あ、アイルたんったら」 相変わらず蕩けるような笑みを浮かべながら、アイルたんが優しく俺の髪を梳いてくる。 「ティルの髪はさらさらだな」 「ん?うん」 まぁ、王子として育っただけあって、ヘアケアは毎日抜かりなく侍女、侍従たちにやられてたから。今でもそのさらさらはキープしている。 「アイルたんだって」 「そうか?」 きょとんとするアイルたんの腕の中から腕を伸ば、させて~。アイルたんっ!! アイルたんの腕が俺を一ミリたりとも放すまいとしているっ!! 「ん、ティル。何故逃げようとする」 いや、ちゃぅし。そう言うわけとちゃぅし。 「あの、アイルたんの髪も梳きたい」 「そうか、なら好きなだけ触るといい」 そう言うとようやくアイルたんの腕の力が少し弱まって、そこからもぞもぞと自分の腕を伸ばす。念願のアイルたんの髪にそっと触れる。 「アイルたんの髪も触り心地がいいよ」 それに質感が、何か違う気が!俺の髪をさらふわだと形容するとすれば、しっとりと艶のあるアイルたんの髪は何だか前世で触り慣れた髪の質感と似ているのだ。何だか懐かしくなってしまう。 「えへへ」 「どうした?気に入ったか?」 「うん、すごく」 ずっとこうしていたいな。そう思いつつもふと思い出す。 「あ、そう言えばお夜食、食べ損ねちゃったね」 今からでも間に合うかな。 「問題ない」 「でも、お腹空いてるんじゃぁ」 「たっぷりティルをいただいたからな」 ふぇー。 まぁ、聖魔力は搾り取られたと思うけども。 「お腹いっぱいだ。ティルは足りなかったか?なら、しゃぶっていい」 そうもぞもぞと股間の辺りに手を伸ばすアイルたん。 ぞぞっと太ももの間に挿し込まれたのは、間違いなく先程まで俺のナカに挿入っていたアイルたんの立派なイチモツであろう。 「い、いや。俺も、お腹いっぱい、かな?」 うん、ある意味。 「では、朝までまだ暫しあることだし。もう少しこうしてようか」 「ん、うん……でも、アイルたんもちゃんと寝てね」 「あぁ、ティルを腕の中に抱いていると自然と心が安らぐ」 「そ、それは俺もだよ」 アイルたんの腕の中にいるととても安心する。 「そんなことを言ってくれるのは、いつでもティルひとりだけだ」 「そう?嬉しい」 何となく、アイルたんの特別に慣れた気がして頬が緩んでしまう。何だかちょっと恥ずかしくて、それを隠すようにアイルたんの胸元に顔をうずめれば。そんなことまでもお見通しであるようにアイルたんが俺の頭をよしよしと撫でてくれる。 「ティルは。ティルはどう?俺の腕の中以外に」 「安心するところなんて、あるわけないじゃん」 俺にとってもアイルたんの腕の温もりに包まれている時間は、唯一無二のものなのである。 「そうか、それは嬉しいな」 そう言うと、同時にアイルたんがそっと微笑んだ気がした。 「明日になったら、お互いまたお仕事だな」 何だか名残惜しい気もするけど。 「明日の午前中は休みだぞ」 「そうなの?」 それなら俺も休みをとれば良かったかもしれないけれど、アイルたんは皇帝陛下だ。いつ休みがとれるかもわからないし。そもそも休めるのかすら未知数。まぁ、それでもアイルたんがゆっくりできるならそれでいいか。 「だから明日は半日たっぷり愛し合おう」 「いや、俺は仕事が」 「体調不良でパーティーを途中退場したのに、翌朝から働かせるわけがないだろう?」 へ?まぁ、体調不良と言えば、体調不良なのかな?聖魔法で極めまくったお酒で酔っちゃったわけだし。 「でも、もう平気だよ」 聖魔力をごっそり持って行かれるのはいつものことだし、ご飯食べれば何とかなるし。 「あ、でも朝かやるの?」 この状態でまた持って行かれたらさすがに。 そんな俺の考えもお見通しなのか、アイルたんがクスッと微笑む。 「ティルの身体の負担になることはしない」 「アイルたん」 「だから朝は挿れないで、たっぷり愛撫してやろう」 ひぁっ!? 「もちろん、しゃぶりたければいくらでもしゃぶっていい」 どこを、とは聞かなくても分かる。未だに俺の太ももに挟まっているアイルたんの肉棒がトクンと肉欲を滾らせた感触がしたから。 「さ。早速続きをやろう」 「いや、一旦寝ようね!?」 そう言うと、アイルたんは「冗談だ」と微笑みそっと目を閉じたので、俺もアイルたんの胸の中ですやすやと寝息を立てたのだった。 ―――しかしその翌朝、アイルたんに甘い口づけを贈られながら目を覚まし、朝食を済ませれば済ませたで、身体中をむしゃぶるように愛でられたのは言うまでもない。

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