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第49話 和やかな後宮の風景
クロードがかき集めてくれたのは、アイルたんカラーの……
黒猫しっぽコス、黒ウサしっぽコス、黒狼しっぽコス、黒天使コス、黒サンタコス、黒フリルミニドレス。
―――いや、この世界の幼児服ってこんなんばっかなんかい!?いや、違うはずだ、そんなはずはない。少なくとも平民たちへの慈善事業に赴いた際に触れあった幼児たちの服はコスプレ三昧ではなかったはず!普通にちびっ子シャツとズボンとかワンピとか、普通だったはず!!ラピスが孤児院に寄付していた手作りの服だって普通だったはず!
何故、何故こうなった!あと、絶対黒フリルミニドレスはメイリンだな。視線を合わせてみると、そっと視線を逸らしていた。
「これはユーリにあげる」
適当に黒フリルミニドレスを掲げて押し付けよう作戦を展開したら。
「わぁ!でしたら、姉夫婦にあげてもいいですか?ちょうどラティラさまくらいの子がいるので!」
あの、誤解を招くようだけども。俺くらいと言っても、俺の実年齢じゃないよな?俺の現在の見た目年齢だよな?
あと、ユーリは面倒見はいいが末っ子で、兄姉たちは全員家庭を持っているらしい。ユーリは城勤めのため、その調書にはもちろん目を通している。そこで『13人兄弟ってすごいな』と以前言ったことがあるが。
―え?13人?そう言えば、そのくらいいる気がしますね―
いや、覚えてないんかぁ―――いっ!と、思わず内心そうツッコんだのだが、何でもユーリが産まれた頃には既に3~4人結婚して家を出ていたらしく(ここら辺も超アバウト)、家族に仕送りはみんなしていたらしいのだが、ほぼ会ったことのない兄姉もいるらしい。ある意味すごい。
姪っ子甥っ子もたくさんいて総数は分からないが、兄弟共通の連絡手段はあるらしい。いや、ならさっきの産着の件はクロードが発言してくれたからともかく、離乳食の件はツッコんで―――っ!!
「まぁ、その。似合うといいな。その、姪っ子に」
「あ、いえ。甥っ子ですけど」
―――え??あぁ、その。かわいい服が好きなんだろうか。
「昔は俺も姉のおさがりをたくさんもらっていたので。何だか懐かしいですね~」
えええぇぇぇっっ!?お姉さんのおさがり!?ちょっと待て。ユーリは普通に男性の格好をしている。今日だって普通にスーツである!
後宮の一郭の官吏や使用人用の部屋をあてがっているので、ルークにツッコミを入れに行った帰りなどに私服も見たことがあるけれど、あくまでも普通だ。ハイネックとかにズボンだ。
「おさがりあげようか?」
と、そこでメイリンが顔を輝かせる。
「えぇっ!?嬉しいです!甥っ子もきっと喜びますよ」
「ん、任せて。ロリコン用に色々とってある」
どうしよう。メイリンが食いついてしまった。同類を見つけた目だ。しかし、ロリコン用って?誰?俺の知ってるやつか?影仲間か!?そこすっごい気になるんだけど!
※因みに、ユーリが着ていた姉のおさがりは兄のおさがりであり男性用だったため、女装趣味はないと言うことが後日判明した。
※なお、甥っ子についての詳細は未だに謎に包まれているが、メイリンの特製ロリコン用シリーズを後日ユーリが嬉々として姉に送っていた。
「ティル、これなどかわいいぞ」
そう、アイルたんが俺の髪越しにちゅーしながら手に取ったのは。
くっ、黒サンタコス~~~っ!
※因みにこの世界にサンタと言う風習はない。いや、サンタって風習だったっけ。いやそれよりも黒サンタはないわ~。
「これはぱす」
「じゃぁ、こちらは?」
くっ、黒天使コス~~~っ!!
因みに、フードにくちばしが付いていた。あれ、これ鳥か?
でも、よく見たら下がスカートじゃんかっ!そっとユーリにあげておいた。
「んん、なら、どれがいい?」
「えっと。あっ!」
俺は黒ウサコスを手に取った。
「あの、フードについたおめめが赤だから」
つまりはアイルたんと同じ目の色である!
「ティルっ!愛してるっ」
アイルたんに目一杯の抱擁をもらい、寝室でアイルたんとふたりっきりでお着替えをする予定だったのだが。
グラディウス帝国皇帝が、一介のいや、ものっそいマニアックな幼児コスの着させ方が分かるはずもなく、泣く泣くクロードを呼んで教えてもらったことは言うまでもない。
なお、俺に着せるのはアイルたんが担当した。俺へのボディータッチはアイルたんが独占したいらしい。うん、アイルたんの愛をすっごく感じられて朝から大満足である。
―――
こうして、黒ウサ耳フードを被り、そしてお尻にもこもこ黒ウサしっぽを決めた俺が誕生した。
朝ご飯はクロードがレンチンしたものを皿に盛って持ってきてくれた。
もちろんこの冷凍食品も俺特性なので、アイルたんも食べられるのだ。みんなにも今日は冷凍食品で我慢してほしい旨を伝えたのだが、もちろん構わないと言ってくれた。
さて、今日の朝ご飯は。
グラタン、ブロッコリー、肉団子とシンプルではあるものの、何故か前世で食べたあの味を思い出す、とても満足いく内容であった。
「アイルたんも、おいし?」
「うん、ティルの味が籠っていて、良いものだな」
「えへへ。女性後宮にも勧めてるんだ。忙しい城の官吏たちにもウケるかも」
お惣菜だけではなく、グラタンやパスタなどの料理にも応用しているのだ。因みにフリーズドライ製法については、俺は氷魔法は使えないので100%帝国の魔法使いたちの努力のたまものである。そう言えば、女性後宮を任せているツェツィの祖国は氷魔法使いも多いんだっけ。提携とか勧めてみてもいいかも。
なお、アイルたん用は俺が作ったものを特別に魔法師団から魔法使いを派遣してもらいフリーズドライしてもらったものである。
「―――ところで、ティル」
「ん?」
「今日は、何故、ちったくなっているのだ?」
今更過ぎるツッコミ―――ッッ!!!
いや、誰もその核心についてはツッコまなかったけど。むしろ他のことへのボケツッコミに忙しかったのもあるけれど。
「へくちっ」
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