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第53話 お弁当
「はい、アイルたんあ~んっ」
「んっ、ティル。美味しぃ。ティルごと食べてもいいだろうか?」
ひぇ―――。あ、アイルたんったら。それは肉欲的な意味?ちったい姿で更に黒ウサコスの時に言われるとやはり草食動物の気分でビクッときてしまう。
そんな感じで俺とアイルたんはいつものように後宮のダイニングでふたりっきりでイチャイチャしながらお昼ご飯を食べている。今回は俺がアイルたんにあ~んしたいと言うことでおこちゃま椅子を用意してもらってふたりで並んで座っている。
本日のお昼ご飯はお弁当風だ。騎士たちの間では割と使用されているお弁当箱を仕入れておいたのが功を奏し、クロードがお弁当箱に詰めてくれたそうだ。そしてそのお弁当を用意してくれたクロードも、あとはおふたりでゆっくりとと気を利かせてくれた。
後宮の方の業務も今日は落ち着いているようで良かった。
そして、ミートボールに春巻き、ブロッコリーやオムレツ、肉巻き野菜ロールなど色とりどりのおかずが詰められたお弁当スタイルは、当然ながらアイルたんも初めてなようで。アイルたんの驚いたような表情を見られて俺も何だか嬉しい。
たまにはこんな愛妻弁当を作るのもいいかも。
「俺、早くおっきくなりたい」
切実な願いである。
「そうだな。俺も早くティルのナカに挿入りたい」
ひえぇ~。お昼ご飯を食べながらも肉欲的な意味でアイルたんの食欲は増しているようだ。
「ほら、これ食べて元気出して」
再びおかずの春巻きを子ども用フォークで刺してアイルたんのお口目指してあ~んしてあげれば、アイルたんは嬉しそうに食べてくれる。わぁ、アイルたんマジ尊し。えへへ、何だかいい雰囲気~。
ーーだが、その時。
「ぷっ、何だ。お前ちったくなってんのか?ただでさえちびなのに」
と、二人っきりの甘ぁ~い雰囲気に、聞きなれた辛辣な言葉が降ってきた。
アイルたんは思わず眉間に皺を寄せ、颯爽と俺を回収してお膝の上にセッティングし抱きしめ、その声の主を睨む。
「何だ、案外気に入っているようだな」
そう言いながらおこちゃま椅子の背もたれに腕を乗せながら、愉快そうにほくそ笑んだのは更にちったくなった原因である男だ。
「そもそもルーク、何で俺こんなことになってんの。あとそう言えば復活したんだな」
「あぁ、美味いものをたらふく食ったら良くなった。10人前くらいだな」
コイツ、本当は暴食の化身か何かなんじゃないだろうか。その上いくら食べても体型が変わらない。食ったもん一体どこに消えてんだよ。
「多分、少し当てられたんだな」
「当てられた?」
一体何に?
「この前神聖国に行っただろう?その時、初代聖女が遺した塔が崩壊したとはいえ残滓が漂っていたからな」
異教の神をはじく、寄せ付けない術の残滓か。絶対碌なものじゃないな。
「神聖国に対しては、先日の一件のこともあり帝国に有利な条約を数多く結んだからな。その分踏んだくろう」
と、アイルたん。確かに先日の一件の責任を取って、神聖国は帝国に有利な条約を呑んだのだ。女王陛下も俺に申し訳ないことをしたと責任を感じており、むしろ押し付けてくるような勢いでいろいろ優遇してくれた。あと、ちゃっかり巻き込まれた祖国にも有利な条件を加えてもらったりしてある。
「でも、あんまりやりすぎると神聖国のひとたちが困るから」
極端思想の神聖国民は苦手だけれど、長年聖者として貢献してきた俺に対する支持率はなかなかに高いので、敵対してこない一般の民衆についてはあまり厳しくやってほしくない。
「ふむ、それもそうか。ティルが悲しむのなら仕方がない」
アイルたんったら、相変わらず俺に甘いんだから。俺が反対するとわかっていて冗談で言ったのかもしれないけど。俺の頬をつんつんしてくるアイルたんもいとかわゆす。
「それでルーク、これっていつも通り明日の朝陽がのぼるまでには治るよね」
「ん~、まぁ大きさくらいなら夕方くらいには戻るんじゃないか。俺はすっかりいつも通りだし」
む~。ルークだけ先に戻ってずるい~。けど、アイルたんのお膝の上も気に入ってるので、戻るのであればまぁいいか。
「よ、よかった。夜にはもう戻るんだね」
「そうだな。今夜もティルのナカに注げるな」
あ、アイルたんったら!!俺はなるはやで元の大きさに戻れれば良かったのだけど。そこの心配もしてくれていただなんて。
「ま、まぁ、俺も。う、嬉しいかも」
「そんなかわいいことを言われたら、一晩中やりたくなる」
「いや、でも」
一晩中はさすがに~~~っ!アイルたん滾りすぎー。
「でも、風邪は風邪で別だからな?」
と、ルーク。
「へくちっ」
あ、そうだった。
「アイルたんにうつったら悪いし」
今日はあまりくっつけないかな。
「俺は風邪などひかん」
え、そうなの?まぁ、今日はアイルたんの腕の中でじっとしてるけどアイルたんは至極平気なようである。
「まぁ、神ではないがそれと同等の力が混じっているのだから、お前みたいな軟弱ではないだろう」
「むきーっ!別に軟弱じゃないもんっ!」
ちょっと油断しただけで!
「いいのだ。ティルは俺が守るのだから」
「アイルたんったら」
「だが、あまり無理はさせられない。本格的に挿入ることはやめておくが、今夜はたっぷりと愛でてやろう」
ひぁぅっ!?め、愛でるって。アイルたんが俺を抱きしめ、俺の髪に頬を押し付けすりすりしてくる。
「調子に乗って熱出すなよ」
と、ルーク。それはどっちの熱だよ、おい。まぁ、アイルたんが魔法で体温を確認したところお熱はないみたいだけど。
「へくちっ」
やはり風邪の症状は別枠であるようだ。
アイルたんにお薬飲ませてもらって、午後もアイルたんのお膝に頭を預けて体の上にブランケットをかけてもらいすやすやと眠りながら、ブラコンラートの襲撃を予防しつつ、久々にのんびりと過ごした俺であった。
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