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第68話 火照る身体

「皇后陛下、次はこちらです」 「よ、よし。これで、どうだ!」 「完璧でございます!」 厨房から拍手が巻き起こる。 「えへへ、そうかなぁ~」 俺は、宿の厨房にいた。本来ならば関係者以外立ち入り禁止なのだが。今回は特別サービスなのである。何せアイルたんは去年こちらに滞在したとはいえ、一切食事をとらなかったからだ。むしろ、自分で何か持ってきて最低限食べるだけだったらしく、宿のひとたちはみんな落胆したのである。 そして今回は俺と一緒と言うことで、宿のひとたちも期待はしたものの、アイルたんは俺の手料理以外はいらないと宿側に申し付けてしまったため、彼らは酷く落胆したそうだ。 しかしながら、何故か帝国城の料理人のひとりがここの料理長が知り合いだったため、俺の料理好きとお汁粉屋台のことを聞き、もしよかったらどうですかと打診してもらったのだ。 こうして、俺でも作れる夕食をレクチャーしてもらい、アイルたんの夕食作りに精を出したわけである。あと、温泉饅頭も蒸しあがった。これは今夜俺とアイルたんで食べる分と、あとは護衛や侍従たちへの差し入れである。 温泉に来たのなら、やっぱり温泉饅頭は必須だよね。因みに、宰相にはなんだこりゃと言われたお汁粉だが、こちらでは温泉饅頭に餡を使う以上親しまれているらしい。俺のお汁粉屋台の話を聞いた料理長が何故か歓喜していた。 ここの料理長のテンションが、独特すぎる! ―――いや、悪いひとではないのだけど。 こうして、俺はアイルたんへの特製夕食を完成させたのだ。 「こっちが季節の山菜を使った炊き込みご飯、煮物、カニ、あとイカそうめん、ホタテのバター焼き、豚汁だよ」 「すごいな、全てティルが作ったのか?」 「うん、ここの料理長が優しく教えてくれたから」 特に、カニとイカそうめんっ!! 「それじゃぁ、早速いただこう」 「うん、いただきます」 夕食はお部屋食スタイルで、必要があればクロードやアイルたん付きの侍従たちが給仕を担当してくれるが、基本は2人でまったり楽しませてもらっている。 「あぁ、ホタテのバター焼き、最高っ!」 まさかこっちの世界でも食べられるなんて、幸せ過ぎる。 「ティルは海鮮が好きなのだな」 「うん、魚介類は結構好きだよ。そうだ、明日のお昼は海鮮丼にしない?」 「海鮮丼?」 「うん、料理長がいくつかメニューの候補を出してくれたんだけど、海の幸がいっぱいあるならやっぱり海鮮丼は食べておこう!」 「はは、そうだな。ティルが作ってくれる海鮮丼なら、楽しみだ」 えへへ。今更のことながら何か照れるなぁ。 そしてシメのお菓子は温泉饅頭。黒糖蒸し饅頭である。 「これも俺が蒸した特製」 「うん、おいしい」 「明日は明日で、他のお饅頭も用意するから楽しみにしていて」 「あぁ、楽しみだ。去年は皇帝としての義務でこちらに滞在したが、今年は本当に楽しいよ」 「そ、それは俺もだよ。誘ってくれてありがとう」 「むしろ、ティルが一緒じゃなければ行かなかったな」 「それは宿のひとが聞いたら泣くから、ナイショだよ?」 「あぁ、わかってる」 そう、微笑んだアイルたんが不意に俺に腕を伸ばしてくる。 「ついてる」 あ、唇の横に食べかすが付いていたことに気が付いた。それを指でそっと拭ったアイルたんは、それが当然のことであるようにちゅぷりと嘗めとった。 「今夜が楽しみだな」 「はうぅっ!!」 そんな妖艶に微笑まれたら、もう今からでもドキドキが止まらない。 ――― そして。 老舗の温泉宿の寝具は、お布団だった。し、敷布団久々ぁ~。 そしてふかふか、エンペラーサイズ布団。 「いつもとちょっと違って何か緊張するかも」 「ふふっ、ティルはかわいいな」 早速俺を抱きしめて、甘い口づけを落としてくれるアイルたん。 「んっ、ティル」 頬や、首筋、鎖骨といつものようにアイルたんにマーキングされていく。そっとアイルたんの手が伸ばされたのは、湯船の中でも待ちきれないとばかりにまさぐられた場所。 「あ、アイルたんったら」 「ティルは、嫌か?」 「そんなわけないじゃん」 「じゃぁ、今夜も」 そう言ってむくりと身を起こしたアイルたんが、俺の雄棒にそっと手を伸ばし、口のナカに含む。 「ひ、あっ」 柔らかい唇でくすぐられ、思わず嬌声が漏れる。 我慢しきれず溢れ出した蜜を、アイルたんのみずみずしい唇が啜っていく。 「ん、今日のティルは、濃厚だな」 「ふぇ、そうなの?」 「ん、いつもよりも、やっぱり濃い」 何だろう?温泉に入って英気を養ったから? 「もう、挿れたい」 何だろう。お酒を飲んだわけでもないのに、アイルたんの頬が少し赤い気が。 挿し込まれたアイルたんの指が、待ちきれないとばかりに俺のナカを解していく。 「ひゃっ、あっ、アイルたんっ」 「あぁ、ティル……何か、すごい高ぶって」 ふえぇ?? ぐぷぐぷと音を立てながら、指を抜き挿しされた蕾は、既にとろとろになっている。こ、これも温泉の影響なのか?そう言う効果があるのかな。 「ひ、ぁっ」 「あぁ、ティル。やっぱり、こっちも、濃いみたいだ」 「えぇっ!?」 ナカまで!?一体何がどうなって。 「ん、うんっ。いや、やっぱりここが一番濃厚だな」 容赦なくナカに挿入ってくるアイルたんの男根が、いつも以上に火照っていて熱い気がする? 「ひぁっ」 いつもよりもアツアツに俺の最奥を貫く。そして早速とばかりにアイルたんが俺の上に覆いかぶさってきた。 何か、発情している、みたいな? 「―――はぁ、あぁ、動くぞ」 「ん、アイル、たん」 ーーー腰を振り始めるアイルたんの雄根は、いつも以上に情熱的に何度も何度も最奥を貫いてくる。 「ひ、あぁっ、アイルたん、何か、火照って、あつくてっ」 「あぁ、ダメだ、もう、射精すぞっ!」 「ひぁっ!?も、もぅ……あぁ゛――――――ッッ」 注がれゆく白濁は、その雄棒の滾りを体現するようにだくだくと注がれていく。じんわりと温まっていく下腹部に、何だか今までに感じたことのない熱を感じながら、俺はアイルたんの身体の熱に包まれ、その滾る欲情を注がれ続けた。

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