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十三 駆け引き

「マッサージとか?」  小首を傾げて挑発する吉永に、ぞくんと心臓がざわめく。完全に、据え膳。俺の思考などすでに見透かしているような瞳でじっと見つめて来る吉永に、一瞬呼吸を止めた。 「――」  目の前に吊るされた餌に、むしゃぶりつきたくなる衝動が沸き上がる。無言で吉永の方を見ながら、ゆっくりとベッドに腰かける。  このまま、誘いに乗るのは簡単だ。むしろ、先ほどまでそれを望んでいたのだし。 (しかし……)  主導権を握られるのは嫌だ。吉永を屈服させたいと言う欲求が、僅かに残った理性を強くさせる。  吉永の腕を引き、腕の中に捕らえる。 「わっ」  俺は吉永の尻に両手をかけ、グッと押さえつけてやった。ニヤリと笑いながら、揶揄するように問いかける。 「なに、もしかしてまた挿入れてんの?」 「っ、違う、けど……」  吉永の頬が僅かに赤く染まる。先ほどまで挑発的に俺を見ていたのに、僅かに瞳を逸らして恥ずかしそうにする様子は、なかなかにクるものがある。 (キスしてぇな……)  キスしたい。唇を重ねて舌をねじ込んで、逃げまどう舌を食らいつくしたい。戸惑う身体を押さえつけて、唇を貪りたい。  唇を奪いたい衝動を抑えながら、さわさわと弾力のある尻の感触を楽しむ。吉永の身体がぴくぴくと跳ねる。 「あっ……、ん。挿入れても、良い……、けど」 「別に、そういうわけじゃねえけど」  それはそれで楽しそうだけど。  それよりも。 (なんとか、キスしたい)  堂々とキスする状況を作りたい。恋人みたいなキスなんか出来ない。吉永相手に、そんな風にキスをしたら揶揄われるし、俺が何か気があると勘違いされたら嫌だ。  既に吉永は俺と|する《・・》雰囲気になっているし、どうにか出来ないもんか。  しばし尻を撫でまわしながら思考をめぐらす。どうにかして、キス出来ないものだろうか。 (ううむ……)  徐に、吉永の身体を入れ替え、背後から抱きしめるように腕の中に捕らえる。吉永が驚いて「わっ」と声を上げた。 「航平?」 「マッサージ、だろ?」  さわさわと、脇腹をなぞりながら、徐々に上に手を滑らせる。 「あっ、んっ……ちょっ……」  吉永が身体を捻るのを押さえつけながら、服の上から身体をまさぐる。この辺りか。と、当たりをつけ、両方の手で乳首をきゅっと摘まみ上げた。 「んぁ!」  くにくにと乳首をいじくってやると、吉永がビクンと身体を跳ねらせる。押しつぶすように突起を指先で押し込み、また引っ張る。先端を爪で引っ掻く。そうしていると、先端が固く尖ってくる。女の乳房を弄るようには行かないが、反応があるのが悪くない。吉永は戸惑いながらも、素直に快感に従っている。 「あっ、っ、そこ……」 「こっちも弄ってんの?」 「っ、ん……、そんな、してない」 「……少しはしてんだ」  耳や頬が赤い。俺が与えた刺激で反応する姿が良い。  しばし乳首の感触を楽しんだあと、俺は片方の手を吉永の口元に持っていった。吉永が潤んだ瞳で、俺の方を一度だけ見る。 「マッサージ、だから」 「ん……」  言い訳しながら口の中に指を押し込み、舌を掴む。柔らかい舌の感触が、指に伝わる。 「あ、ぅん」  くぐもった声が漏れる。舌を弄る。唾液が口から零れ落ちる。指を使って口の中を弄りながら、同時に指の脇を舌で擽られ、こっちのほうが愛撫されている気分になる。 「ぅむ、んっ……、こ、へ……」  潤んだ瞳で、吉永が振り返る。口から指を離す。唾液がとろりと顎から滑り落ちて服に水滴を垂らした。 「航平……」  吉永が舌を伸ばす。俺の方に、強請るように。 「舌、でも、して……」  誘いに、歓喜が沸き上がる。にやつきそうになる感情を押さえつけ、両肩をぐっと掴んだ。  マッサージだから。そう言い訳して、唇に吸い付く。  吉永の舌は、小さく震えていて、凄く、甘かった。

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