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十五 シャワー室にて
「何だこれ」
吉永の声に、意識を引っ張られる。身体が怠い。そう思ったところで、昨晩抱き合って、そのまま眠ってしまったことを思い出した。
(……シャワー、浴びてねえ……)
散々抱き合って、二人ともべたべたなのにシャワーも浴びないままに寝てしまった。ふぁ、と欠伸をしながらのそりと起き上がる。
「何だよ。まだ四時じゃん……」
「何だよ、じゃねえよ。お前」
恨めしい声を漏らす吉永に、目を擦りながらそちらを見る。
「うわ。ここもじゃん」
「あ? あー……」
首も、胸も腰も、腹にも。脚にも。夥しい数のキスマークや歯形がついている。俺がしつこくしたのが一目瞭然だ。特に胸のあたりや太腿は、同じ場所に何個も赤い痕が重なってついている。
「服で隠れるだろ」
首のとこはわからんけど。それを言うなら俺の背中とか爪痕やばそうだけど。
「風呂行けねえじゃん」
「シャワーで良いじゃん」
あ、でも脱衣場で見られるか。吉永も気づいているらしく、顔を顰めている。
「まあ、良いんじゃね?」
「他人事~」
えい。と額を小突かれる。別に怒っているわけではないようだ。
吉永の腕を引いて、首筋に顔を埋める。
「あ、ちょっと……、ん」
ちゅうっと首筋にキスをして、痕を増やす。
「あー、着いた着いた」
「オイコラ」
「良いんだよ。俺は着けんの好きなんだから」
「……お返し」
そう言って、吉永が俺の首に噛みつく。ちゅうっと強く吸われる。多分、着いただろうな。
「っ、おい……」
「あんま着かねえな」
不満そうにして、吉永はもう一度同じ場所にキスをして来た。なんだか、ムズムズする。
「どうすんの、二度寝する?」
今更自分の部屋に帰る気にもならないので、欠伸をしながらそう問いかける。吉永はすっかり目が覚めてしまったようで、首を振った。
「シーツ洗いたいから出ろ。シャワー浴びて来る」
「ん。じゃ、俺も行く」
ベッドから降りて、脱ぎ散らかした服を拾う。吉永はシーツをひっぺがして乱雑に丸め上げた。その尻にも、キスマークがついている。あんなとこキスしたっけ。まあ、したんだろな。盛り上がっていると色々と記憶がなくなってしまうのが良くない。まあ、泣き顔とかあれやこれやは覚えているんだけどさ。
あまり音を立てないようにしながら、廊下に出る。まだ日が出ていないらしく、窓の外は薄暗い。明かりも点いていないので真っ暗だ。吉永の部屋は五階なので一番上の階だ。シャワーがあるのは一階部分である。
「まだ誰も起きてないのかな」
「どうだろ」
コソコソと喋りながら階段を下りる。こんなに早い時間に起きることはほとんどない。起きても二度寝するし。どの部屋も寝静まっているのか静かだ。今日は休日なのだし、早起きしてくるのは一部の人間なんだろう。
じゃれ合いながら洗濯機にシーツを突っ込んで、シャワー室へ向かう。シャワーは二十四時間利用可能だ。この時間にさすがに人は居ないと思うが。更衣室の扉を開き、中に入る。ひんやりした空気は、しばらく人が居ないのを物語っているようだ。適当にロッカーに服を突っ込み、裸になる。シャワー室の扉に手をかけて、吉永が振り返った。
「誰もいねえし、一緒に入る?」
「……入る」
二人で使うには狭い気もしたが、それが良いかも知れない。シャワー室に入り込み、扉を閉める。密着するほど狭くはない。ただ、少し気恥ずかしい。
吉永がシャワーを捻る。一瞬冷たかったが、すぐにお湯が出て来る。吉永がソープを手に取って、泡立てる。それを、俺の胸につけて来た。
「洗ってやろうか」
笑いながら言う吉永に、俺も無言でソープを手に取り、泡を吉永にくっつける。じゃれ合いながら洗い合う。笑い声が、シャワーでかき消される。
「ははっ、ちょっ、くすぐったい」
「こうすんのは?」
「あっ、ん……」
身体をくっつけ合い、互いに擦りつける。ソープの滑りを借りて、互いの身体を擦りつける。
「……」
甘い声に、唇を寄せる。自然と、唇が重なった。啄むようにキスを繰り返し、舌を絡め合う。俺は泡を掬って背中を伝い、尻の方に手を伸ばす。指が、にゅるりと穴に入り込む。
「ん――、ん、あ……っ」
ぴくんと、身体を揺らす。奥の方から、とろりと濡れた粘液が零れ落ちた。
(そういや、出したまんまだ……)
中に出したままだとどうなるのか知らないが、良くはなさそうだ。掻き出した方が良いだろう。その方が楽しそうだし。
「んっ、ぅ……航平……」
「出せる?」
「っ……」
恥ずかしそうに頬を染める様子に、嗜虐心が沸き上がる。出せるんだろうけど。恥ずかしいんだな。そう判断し、促す。
「出して」
「っ……。お前、良い趣味してるよ……」
「嫌なら一緒にシャワー使わなきゃ良かったじゃん」
「……まあ、そうだけど」
唇を尖らせて、吉永は顔を背けた。指を引き抜き、吐き出すのを待つ。
「あ、待って」
「何だよ」
怪訝な顔をする吉永の肩を掴み、うーんと唸る。
「顔と尻、どっち見てた方が楽しいかなって」
「あのなあ……」
吉永が呆れた顔をする。
「大事だろって」
俺には重要な問題だ。恥ずかしがってる顔もみたいけど、出す所も見たい。鏡でもあれば良かったのに。ラブホテルって良くできてるんだな。取り合えず、吉永が見て欲しくなさそうな方にするか。じゃあ、尻だな。
「後ろ向いて」
「……くそ」
吉永は壁に手をついて、俺の方に尻を向けた。耳が真っ赤だ。
「良いよ。出して」
「っ……、ん……」
ひくひくと、ひだが蠢く。力がぐっと入るのが解った。アナルが震えながら、僅かにくぱと収縮する。入口近くまで落ちて来た精液が穴の奥に覗いて見えた。空気を吸い込み、濡れた音がする。
「ん――っ……」
とろり、粘液が穴から零れる。
「穴、拡げねえと出ないんじゃね? まだ入ってるだろ」
奥の方にまだ残っているのが見える。吉永は俺の方をチラリと見て、それから観念したように両手で穴を押し拡げた。どろり、大量の粘液が零れる。太腿を伝って、精液は排水溝へと流れて行った。
「すげえ量」
「お前のだろ」
「そうだけど」
笑いながらシャワーを掴み、穴に押し当てる。
「あっ……!」
「お湯入っても平気だよな?」
「……たぶ、んっ……」
シャワーを当てながら、指でナカを掻きまわす。まだナカがぬるぬるしている。奥まで指を差し込み、内壁を引っ掻く。
「ん、んっ……、んぁっ!」
吉永の膝がガクガクと震える。何度も指を抜き差しし、最後の精液を掻き出す。指に粘液が絡まる。我ながら、よくもまあこんなに中に注いだもんだ。
「あ、……はぁ……、はぁ……、航平……」
吉永が俺の腕を引っぱる。シャワーヘッドが手からすり抜け、床に落ちた。湯が壁に当たる。
「あ、おい、んむ」
「んっ……」
唇に噛みつかれ、そのまま舌に絡みつかれる。腹に吉永の性器が当たった。
「っ……、は…、なに、欲しいの? せっかく綺麗にしたのに」
「んぅ、ん……また、出せば良いだろ」
荒い息を吐き出し、蕩けた顔で吉永が俺を見つめる。
(立ったままは、まだやってねえか……)
太腿を掴み、脚を開かせる。半勃ちの性器を二三度扱いて、穴に押し付ける。一瞬、前からにするか後ろからにするか迷って、前から挿入する。吉永は俺の首にしがみ付いた。
「ひ、んっ……!」
耳たぶに噛みついて、舌を這わせる。下から突きあげながら、耳元に囁く。
「誰か来る前に、終わらせねえと」
「んっ……、あ、あっ……」
シャワーの音が響く。お湯と吉永の体温で、のぼせそうだった。
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