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六十五 濃密な時間

 久し振りに入った吉永の部屋は、濃厚な彼の匂いがする気がした。なんだか少し、緊張する。 「ふーん、やっぱ、オモチャで遊んでたんだ?」 「ばっ……。うるさいっ」  ベッドの上を見れば、ピンク色をしたローターやら、黒い棒状のバイブやらが置かれている。先日棚に入っていた、吸盤付きのバイブもあるようだ。 「へぇ。これとか、俺のよりデカくない? こっちのが好かったりして?」 「ち、違っ」  ぺしぺしと頬に押し付けると、吉永は顔を背けた。 (可愛い顔して。こんな凶悪なの咥えちゃうんだから) 「やっぱ、我慢出来てねーじゃん。それなのに避けて。もしかして、俺のこと嫌になった?」 「んなわけ……」 「まあ、良いか。ね、コレ、どうやって使ったの?」 「どうやってって……」 「やって見せてよ」  意地悪を言う俺に、吉永はゴクリと喉を鳴らした。その気になっているようだ。 「か、鍵、閉めたよな?」 「閉めたよ。律も確認したじゃん」 「う、うん……」  吉永はまだ不安そうにしながらも、ベルトを外してズボンを脱いだ。次いで、下着に手を掛ける。チラリ、こちらを見た。口端に笑みを浮かべて頷けば、ハァと吐息を吐き出し、ゆっくりと下着を下ろしていく。  こういう姿をじっくりと観察するのは、案外楽しいものだ。お預けだった分、早く味わいたい気持ちもあるが、たまには焦らすのも良いだろう。  吉永はモジモジと前を気にしながら、床にバイブの吸盤を取り付けた。 「床にくっつけてんの? 壁とかに着けるんじゃねぇの?」 「普通の壁紙じゃ、くっつかねえよ」  ああ。それもそうか。本来は風呂場ででも使うんだろうか。ツルツルしていないと、くっつきそうにない。  吉永はバイブを設置し終えると、ローションを手にとって穴に塗りたくり始めた。くちゅ、くちゅと音を立てながら、指を穴に挿入する。 「ん……、はっ……、ぅん」 「ねー、律ちゃん。それ、見えるようにシャツ捲って」 「っ、ん」  おずおずと、恥ずかしそうにしながら、吉永はゆっくりとシャツを捲った。俺は笑いながらシャツを掴んで、吉永に咥えさせる。 「良いじゃん。可愛い」 「っ、ぅん……」  吉永は何か文句を言いたそうだったが、シャツを咥えているせいで、くぐもった声を出しただけだった。  準備が出来たのか、指を引き抜き、アナルをバイブの先端に押し付ける。足を開いてしゃがむようにして咥え込む姿は、大分いやらしかった。 「ぁ、ん……、うぅ……っ」  ぬぅっと穴を割り開き、バイブを呑み込む。恍惚とした顔で凶悪なバイブを自ら咥え込む姿に、こっちも興奮する。 (エロいな……)  シャツを捲ってくれたお陰で、挿入しているところも、乳首も丸見えだ。非常に良い眺めである。 「あ、んぁっ!」  ずぷん。根本まで押し込む反動で、口からシャツが零れた。唾液で濡れたシャツが、ぱさりと胸に乗っかる。唇の端から糸のように唾液が零れ落ちた。 「邪魔だから、前開けてやるよ」  そう言って、シャツに手を掛けボタンを外す。乱れた姿は、扇情的だ。 「それで? どうするの?」 「……っ、スイッチ、入れて……」  言いながら、吉永はスイッチをオンにした。ヴゥ……と機械の唸る音がして、ぐにんぐにんと、いやらしくバイブが動く。 「あ、あっ……ん」  バイブの動きに合わせるように、吉永が腰をくねらせる。良いところを探るように蠢く尻は、酷く淫靡だ。 「スゲー、良さそうだね、律。嫉妬しそう」 「あ、はっ……ん……、航平、のがっ……好きっ……だか、らっ……、んっ」 「本当かな、こんな、良さそうなのに」  そう言って、頬に触れる。吉永は俺を見上げ、キスして欲しそうな顔をした。 「はっ……、航平……っん。キス……して」  可愛いおねだりに、少し意地悪したくなって、両手を掴んで強引に立たせた。ずるん、とアナルからバイブが抜け出る。バイブはグニグニと蠢きながら、粘液を撒き散らした。 「ぁん、あっ!」  吉永の視線バイブの方を見る。 「やっぱ、アッチの方が良いんじゃないの?」 「っ、違うって……」 「でも、物足りないだろ?」  唇を合わせ、吸い付きながら、先ほどまでバイブを咥えていた穴に指を差し入れる。両手の指を穴に掛け、拡げるようにぐちぐちと弄くる。 「ん、んむ……、はっ……ん」  キスに夢中になりながら、吉永が腰を動かすのを見逃さない。本当は、今すぐ突っ込んで欲しいのだろうが、散々お預けされていたのだ。少しくらい、意地悪してやらないと。 「航平……はやく」  焦れったそうにねだる吉永に、ニヤニヤと笑う。俺は床にくっつけたバイブを引き剥がして、一度スイッチを切る。 「航平?」 「まあまあ。ここなら、壁面にくっつくかなって」  そう言って、ベランダに出るガラス窓に、バイブをくっつける。ピトッとくっついた吸盤は、思った通り、ちょっとやそっとじゃ剥がれなさそうだ。  吉永を連れていき、バイブに背を向けさせる。 「こ、航平っ……これじゃ」 「外から見えちゃうかもな」  外に向かって尻を突き出す形になる。当然、丸見えだ。まあ、吉永の部屋は五階だし、周囲に高い建物も無いから、平気だろう。 「っ、ん」  再びバイブを挿入するよう促し、俺も手伝ってやる。ガラス面にピッタリと、尻を押し当てる。 「あ、あ……っ」 「スイッチ、入れるぞ」  カチリとスイッチを入れると、ぐぬぐにと、バイブが再び動き出す。粘液が掻き回され、ガラス面に尻が打ち付けられる度にパチュパチュと音がした。 「あ、あっ……、航平っ、航平……」  喘ぐ吉永の口に指を掛け、舌を弄くる。ざらざらした舌の感触と粘液が混ざって、気持ち良い。ここに突っ込んだら、最高だろうな。  ズボンをずらし、昂った己を取り出す。鼻先に先端を突き出すと、吉永は自分から肉棒に食らいついた。  熱い舌のぬるぬるした感触に、ゾクリと背筋が粟立つ。吉永はちゅうと吸い付きながら、竿に舌を這わせ愛撫してきた。 「っ、律……」 「んぅ……んっ……」  名前を呼ぶほどに、感じているようで、ビクンと身体が揺れる。耳を優しく撫でてから、乳首の方に手を伸ばした。触れられるのを期待していたのか、既に硬く尖っている。先端を愛撫してやると、吉永は堪らない声で啼いた。 「ぅ、んっ……!」 「律、気持ち良さそうな顔……。前と後ろ同時に犯されんの、良いんだ?」 「っ、ん」  吉永が濡れた瞳を向ける。否定したいのかも知れないが、吉永の性器はゆらゆら揺れながら、精液を撒き散らしている。 「良いよ? イって」 「っん、ん……っ、ぅ」  くぐもった声を上げながら、吉永は膝をガクガクと揺らした。俺は吉永の頭を掴んで、口の中を擦り上げる。唾液と精液が混ざりあって、吉永の唇を濡らした。  吉永がビクッ、ビクンと大きく揺れた。同時にじゅると吸い上げられ、刺激に耐えられず咥内に射精する。吉永も同時に果てたようだ。ビク、ビクッと、小さく痙攣しながら、身体を震わせる。床にたらりと精液がこぼれる。バイブまだ、グィングィンと鈍い音を立てて動いていた。 「ハァ……っ、律……」  呼び掛けに、吉永は顔を上げて俺を見ると、ちゅうっと尿道に残った精液を吸い上げるように、達したばかりの肉棒に吸い付いた。果てたばかりのところを刺激され、ビクッと身体を揺らす。 「っ、律……、もう」 「んぁ、ん」  もう良いと言おうとするが、吉永はなおも食らいついてくる。恍惚とした表情で舐める様子に、またムクムクと欲望が膨れ上がる。 「……く、この……っ」  相変わらず、エロいんだから。こっちの理性なんか、吹き飛んでしまうじゃないか。全部飲んじゃうし。  吉永の腰を掴んでバイブを引き抜く。ぬちゅ、と腸液がローションと一緒に吐き出された。  バイブを止め、吉永をガラス戸に押し付ける。外を向かされ、吉永がビクッと身体を揺らした。 「航……」 「待って、ゴム……」  くそ。用意して始めりゃ良かった。段取りの悪さにイラつく。確かサイドボードの中だと思い当たり、身体を離そうとしたところを、吉永が腕を掴んで引き留める。  ゼェゼェと、荒い呼気を吐き出し、赤い顔で吉永が振り返る。 「いから……」 「あ?」 「……ナマで、して」  誘いに、ゴクリと喉を鳴らす。再び猛った性器を、尻に擦り付けた。 「……俺、我慢できないと思うんだけど」 「うん」 「……」  割れ目に沿って、性器を擦る。誘われている。ゆらゆらと、腰が揺れる。 「良いよ、ナカに、出して」  ゴクリ。喉が鳴る。白い尻を掴んで、入り口に先端を擦り付ける。 「言わせたみたいじゃん」 「言わせた、だろ」 「まあ、そういうとこもあるけど」 「……良いから……。おれ、ちょっと、お前には甘いから」 「……うん」  知ってる。多分、俺がやりたいこと、何でもやらしてくれる。 (まじで、最高すぎるんだよな……)  男にとって、都合が良すぎる。吉永が男だから、そうしてしまうんだろうか。それとも、元々吉永ってそんなヤツだったんだろうか。 「律……」  唇を寄せ、舌を絡ませる。口ん中、ヌルヌルする。 「ん……、は……っ」  ちゅくと唇を離して、柔らかくなったアナルに先端を挿入する。にゅるりと、肉が埋まっていく。中は暖かく、気持ち良い。呼吸のたびに収縮して、全身を愛撫される。堪らず、息を深く吐く。  ガラスに吉永を押し付け、背後から犯す。ずぷじゅぷと腰を打ち付け、身体を揺さぶった。 「あ、ん……、んっ……」  腰を掴んで何度も貫く。吉永はガラスに手を押し付け、突き上げる度に全身を震わせた。 「いつもより、感じてる?」 「っ、ん……、あ、あ……っ」  ぞくぞくと皮膚を震わせ、吉永が喘ぐ。心なしか、いつもより敏感になっているような気がする。ガラス越しに外が見えているせいだろうか。興奮している姿に、こっちまでたまらなくなる。激しく腰を振り、何度も打ち付ける。パンパンと音を響かせれば、吉永は腰をくねらせて淫靡に喘いだ。 「あ、あっ! ん、ぅっ!」 「律……っ…、律……」 「こ、へいっ……! あ、あっ……!」  ビクビクと身体を震わせ、吉永がガラスに向かって精を吐き出す。痙攣する内部に刺激され、俺も吉永の中へと精液を注いだ。  がくっと、吉永の腕がガラスから滑り落ちる。ふらつく身体を支え、そのまま二人でベッドへとなだれ込んだ。 「はぁ、はぁ、はぁ……っ」 「っ……、は…ー…」  二人そろって息を荒らげる。やがて、汗ばんだ髪を掻き上げながら吉永が上体を起こす。赤い顔をして俺の上にぽすっと乗っかって来た。 「おい」  重いだろ。そう言って顔を顰めた俺に、吉永は甘えるように胸に頭を載せる。 「良いじゃん」 「……たく……」  諦めて目を閉じると、クスクス笑う声が聞こえた。 「あーあ。寮でしないって決めたのに」 「やだよ」 「即答笑う」  吉永は文句を言っていたが、嫌そうではなかったのでホッとした。

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