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10-5
「僕の夢を叶えてもいいですか」
伊吹生は凌貴とまだ浴室にいた。
脱力しかかっている伊吹生は、バスタブの縁に相変わらずしがみついていた。二度目の絶頂を迎えたペニスからは白濁の糸が滴り落ちている。
凌貴の手がソレを掬い上げた。
殆どの服を身につけたまま、スリムパンツのフロントを寛げると、外気に取り出した熱源にソレを纏わせた。
「最初の夜に叶えられなかった夢」
「犯されるのは御免だ」
ぐったりしていた伊吹生が間髪をいれずに吐き捨てると、凌貴は唇を歪め、背中に覆い被さってきた。
「伊吹生さんを抱きたい」
クリスタルのシャンデリアが仄かに照らす浴室に、明け透けになった願望。
「あのとき、俺は気を失っていた……お前なら好きにできたはずだがな」
「言ったでしょう。貴方に嫌われたくない。だからイイコにしていたんです」
「ッ、お前……イイコにしては大層なブツだぞ……」
内腿の狭間に現れた彼のペニスに、正直なところ、伊吹生は狼狽した。明らかにサイズが違う……。
「ん……っ」
申し分なく膨れ上がった肉杭が自分のペニスにじゃれついてくる。
脇腹から伸びてきた手に纏め上げられ、共にしごかれると、余念なく解された後孔が独りでにヒクついた。
「伊吹生さん、もっと僕を濡らして……?」
卑猥な擦れ合いによって尿道口に溢れた粗相が、竿を伝い、凌貴のペニスにまで滴った。
「そう……聞き分けのいい、イイコですね」
「このッ……お前、コレ……絶対に全部挿れるなよ……内臓がずれる」
「ふ……善処します……」
凌貴の頂きが伊吹生の後孔にあてがわれた。
潤滑剤代わりに濃密な体液を塗り込むと、ぐっと、窄まりに我が身を押しつける。
伊吹生の狭苦しい入り口が抉じ開けられる。
脈動する肉杭で貫かれていく……。
「は……ッ……ぁぅ……ッ……」
伊吹生は腹筋を戦慄かせた。バスタブの縁を力任せに掴み、歯を食い縛る。
(抉られてるみたいだ)
湿気を帯びた黒髪を額やこめかみに張りつかせ、息を殺し、必死に耐えた。
「咬みつかれているみたいです」
カロリーオーバー気味な食生活の割に、すっきりと括れた腰を凌貴は掴み直す。獣性を露にするように舌なめずりし、さらに伊吹生のナカへ。
序盤の抵抗を事も無げに制圧し、滾るペニスを突き入れていった。
「く……ッ」
「……ごめんなさい、伊吹生さん、今の僕は見境がなくなっています」
いつになく浮かれた声色に伊吹生は懸命に言い返した。
「……いつものことだろうが……」
眼光を研ぎ澄ませた凌貴は堪らなさそうに微笑む。
「そうでしたね」
強烈な支配欲に漲るペニスに仮膣が占領されていく。
肉の壁に手加減なしに揉み込まれ、より一層滾った肉杭でナカをじっくり掻き回される。
いくらか解れてくると、凌貴はれっきとした律動を開始した。
入り口も奥も熱く締まる仮膣を緩やかに突き始めた。
「ぁッ……ぁッ……はぁッ……あ……ッ」
「これが貴方の……どうしよう……溶けそうです」
「おい……ッ……待てッ……!」
伊吹生は目を見開かせた。
彼のカタチが嫌でもわかる。腹底で欲深く息づいているのが骨身にまで伝わってくる。
バスタブから逃げたそうにしている体を全力で引き留め、凌貴は、器用に腰を突き動かした。
ここ数時間、血を摂取していない状況下、極度の興奮で赤銅色に染まった「吸血種」の双眸は目前の標的から片時も逸らされずにいた。
「……伊吹生さん……」
上体を倒し、バスタブの縁に伏せられていた伊吹生の顔を背後に向けさせ、唇も交えた。
口内に溜まっていた吐息まで奪う。齧る勢いで舌にむしゃぶりつく。
小刻みに肌を打つ音が浴室にしばし奏でられた。
(体どころか心臓まで抉られる)
突かれっ放しの伊吹生の首筋が捕らわれた。
乱杭歯の使用は控え、凌貴は一思いに吸いつく。咬み痕の代わりに赤いアザを刻んだ。
「ぁ……凌貴……ッ……」
伊吹生の仮膣の奥目掛け、思う存分、絶頂の証を叩きつけた。
天蓋付きのベッドが軋み続ける。
「はぁッ、はぁッ、ぁッ……ぅ……ッ」
伊吹生の掠れた嬌声も途切れることがなかった。
濡れた服や靴は浴室にそのまま残してきた。伊吹生の本体だけをベッドへ運び、休息も入れず、静まるどころか増していく興奮に従うように、凌貴はひたすら律動していた。
「僕に咬ませたのは左腕でしたね」
後ろから突き上げられ、漆黒の寝具に溺れていた伊吹生は、その台詞に一切の反応を示さなかった。
結局、猛々しく育った肉杭を根元まで呑み込む羽目になった。拡げられている感覚が半端ない。次第に馴染んできたとはいえ、初夜にしては過激な同衾に体は悲鳴を上げていた。
「伊吹生さん」
ギクリとした。耳元で名前を呼ばれたかと思えば、背中に彼の体温が触れ、遠慮なく最奥を貫かれた。
「は……!」
「ねぇ……どうして右腕を咬ませてくれなかったんですか……間接キスがしたかったのに」
凌貴はベッドに倒れ伏した伊吹生に真上からのしかかった。膨張しきった頂きを窮屈極まりない最奥に埋め、腰を波打たせ、緩急をつけて擦り立ててきた。
「貴方自身の咬み痕に僕の痕を重ねたかった」
悩ましげな腰遣いで仮膣の締めつけを堪能すると、なされるがままの伊吹生をシーツから引き剥がした。
上半身を起こし、共に膝立ちとなったところで、伊吹生の胸に左腕を巻きつける。半勃ちの熱源を右手で探り当てると、だらしなく熟れた先端を愛撫した。
「あ……!」
「いきますか? いいですよ……? こんなに射精したそうに、とろとろにして……」
「ッ……利き腕だと、生活に支障が出るから、だ……ッ」
「ああ……僕の話、ちゃんと聞いていたんですね」
汗ばむ臀部に何度も何度も凶暴な腰が振り下ろされる。
白濁が絡む肉杭で後孔奥を一頻り連打された。
「貴方のココ、媚びるみたいに僕に絡みついてくる……欲しがるみたいに」
「凌貴、もぉ……ッ……無理だ……」
「ノスフェラトゥはまだ起きています。大広間の喧騒が聞こえる。もう終わるなんて、もったいないです……」
息も絶え絶えとなっていた伊吹生は、急に体の向きを変えられて喉に悲鳴を詰まらせた。
「ほら、綺麗に塞がっているでしょう」
凌貴はベッドに背中を沈めた伊吹生の手をとると、腹部切創の手術痕を触らせた。
物狂おしい交わりに朦朧としていた伊吹生の目は、その感触を突きつけられて、俄かに揺らいだ。
「伊吹生さん。一生、僕の手の届くところにいて、死ぬまで償ってくださいね。約束ですよ……?」
欲情は尽きることなく。
まるで解き放たれた獣の如き凌貴にがっつかれ、呪縛じみた思いの丈を絶え間なく注ぎ込まれ、伊吹生は繰り返し果てた……。
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