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傷跡

表情は生き生きとしたものの、 どうやら歩くのはやっとのようで 彼に肩を貸して自分の部屋まで歩く。 ほぼ俺が引き摺る形だったけど びっくりするくらい軽い。 本当に男か? 軽さは良いけど、びしょ濡れの服が まとわりついてだいぶ不快だった。 部屋に着くと、俺は玄関の上がりに 彼を座らせた。 すぐにでも風呂に入れて 温めるべきだけど この格好のまま部屋に入れたくないな… 「風呂溜めてくるから、ここで待っててくれ」 座り込んでいる彼に声をかけて 俺は浴室に向かう。 湯の準備が出来たら、悪いけど 玄関で服を脱いでもらって 上がらせよう。 お湯の準備をして玄関に戻ると、 彼は壁にもたれて目を瞑っていた。 え…、死…? 最悪の想像をして思わず肩を揺する。 「お風呂、入れます?」 そう問うと、彼はコクコクと頷く。 「びしょびしょなんで、ここで服脱いでもらってもいいですか?」 また、頷いて、今度は手を上にあげた。 脱がせろ、ということだろうか? まとわりつく濡れた衣服をなんとか脱がせて 俺はまた彼を引きずるようにして 浴室に向かった。 服を脱ぐとやっぱり彼は カリカリに痩せていた。 なんかもう、心が痛くなるほど。 それにどうやら左の手首から肘にかけて 切った跡のようなものがあった。 これは…、リスカってやつか? とんでもない男を俺は拾ってしまったのかもしれない。

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