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保護

風呂場に連れてきて、あとは自分で やってもらおうとしたけど、 自力で洗う力はないらしい。 甲斐甲斐しく、頭からつま先まで 洗ってやり、湯船に入れる。 「お風呂からは出られる?」 「ん」 温まったからか、彼は力強く頷いた。 どうやらあとは大丈夫らしい。 「よく温まったら出てきて。タオルとか服とか置いておくから」 俺はそう言って、浴室からでた。 言った通りに着替えを準備し、 玄関に放り投げたままの彼の服を見る。 勝手に捨てるわけにはいかないよな。 洗うか… ポケットとかに携帯やらスマホやらが 入っていないか確認して 先月買い替えたばかりのドラム式洗濯機に入れる。 けして潔癖症ではないはずだけど、 この服をニュー洗濯機で洗うのが少し嫌だ。 泣く泣く、洗濯機を回す。 俺もずぶ濡れになったけど 俺の服は別にして洗おう。 浴室の彼を心配しつつも、 夕飯の支度をする。 多分、彼もご飯を食べていないだろうし。 簡単な料理やレトルトの食品を 並べていると彼がやってきた。 「食べる?」 じーっとテーブルを眺めているので 聞くと 「いいの!?」 と、また目を輝かせた。 「うん。代わりに君のこと、聞かせてくれないかな」 「分かった!」 そういうや否や、彼は席につき、 置いてあった箸を手に取る。 早くお前も座れよ、みたいな顔で こちらを見るので俺も席に座った。 一人暮らしを何年も続けてるけど 誰かとこの部屋で飯を食べるのは なんか変な感じがした。 「僕はネコヤ。あ、21歳だから未成年誘拐とかにはならないから安心して!えと、昨日から彼氏と同棲する予定でアパート解約したら、振られて今日から住所不定。よろしくね」 ご飯を食べ終わると、早口でネコヤこと、その青年はそう言った。 「え?ちょっと情報量が…」 「お兄さんは?いくつ?」 「俺は遠田。27歳だけど…、ちょっと待って、じゃあ君は昨日から家がないってこと?」 「ふーん、遠田さんね。そうだよ?だからさ、少しの間、泊めてよ」 「えっ…」 嫌だ。 人が苦手で、家族すら息が詰まりそうで 逃げるように一人暮らしをしたのに この青年をしばらく泊める…? だめだ、俺の精神が持たない… 「この雨の中、遠田さんは僕を放り出すの?」 大きな目を潤ませて俺を見る。 良心が痛む… 「少しの…、間なら…」 その圧に負けて、そういうと 彼は「やったー!」と跳ねた。 俺は、彼を保護することになった。

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