7 / 58

働き先

ネコヤを住まわせてから 1ヶ月が経つ。 毎日、掃除やご飯を作ったり、 はては弁当を作るなりの 家事をしつつ、バイトは探しているらしい。 正社員を勧めたら 「僕は多分、社会不適合者だから、正社員は無理だよ。就活するだけ無駄。とりあえず、フリーターになる」 と断られた。 まだ彼は21歳だし、まあバイトでも十分か。 収入があれば、アパートなり借りれるだろう、と思っていた。 「辞めてきた」 「ネコヤ…、これで何回目だ?」 「んーと、居酒屋、スーパー、コンビニ…、で今回だから4回目?」 「1日で辞めた派遣も含めれば5回目だ」 「えへ…」 「なんで辞めたの」 「ん〜、まあ、先輩とホテルいったところを先輩の嫁に見られてて…、不倫?みたいな?」 「はぁ!?慰謝料とかは!?」 「まあ、僕は今回辞めさせられて、払えるわけないって分かってるし、男だったってのもあってなんとかなった」 「本当にお前は…」 先輩と不倫して辞めさせられるって… アルバイトでもある話なのか!? っていうか… 「ホテルなんていつ行ったんだ?」 「先週。遠田さんが飲みの時」 「はあ…」 「だって寂しかったんだもん♡」 ♡、じゃねぇわ。 腕の切り傷のこともあるし、 どうやらネコヤは愛着障害のようなものが ある気がする。 夜に1人が耐えられないらしい。 しかもそこに性交を要するようで 俺の倫理観ではそれに応えることはできない。 「もういっそ、風俗に出戻りしよっかな」 「それはダメだ」 「えっ…、なんで?」 なぜかネコヤは頬を染めてこちらを凝視している。 なんでって… 風俗なんて何歳までもできる仕事じゃないし バイト先でも色恋のトラブルを起こすような男が風俗なんて…、いつか刺されるだろう。 いくら他人とはいえ、いっとき同居してた人間が刺さるとなれば寝覚が悪い。 それでそう伝えると 「あっそ」と急に興味をなくしたような 返事をされた。 バイトが続かないのといい 本当に訳のわからない人間だ。

ともだちにシェアしよう!