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超重量級

  と、変な流れでネコヤと付き合うことに なったのだが… 俺は3日にしてすでに後悔していた。 「ねえ、今何してるの?」 「どこにいる?」 「もしかして女?」 「ねぇ」 「今すぐ返事して」 「返事くれないとリスカする」 「いいの?」 「もうカッター手に持ってる」 「ほんとにいいの?」 こんな感じのラインがとめどなく来る。 仕事柄、ある程度の返事は 仕事中にできるとはいえ 流石に秒で返信は無理だ。 しかも、リスカとか言われると 流石に肝が冷える。 せっかく責任をとったのに ネコヤに傷がついてしまうのは 意味がなくなってしまう。 「最近、遠田さんの携帯、よく鳴ってますよね」 隣の席の同僚から突っ込まれた。 普段、全然携帯をいじらないし 通知音もならないから目に着くのだろう。 「うるさいですよね。すみません」 「いえいえ。彼女さんとかですか?」 流石に男です、とは言えず 「ええ、まあ」 と濁すと 「いいですね。私も頻繁にラインとかくれる彼氏欲しいぃ。遠田さん、律儀に返してるし、そういうの憧れます」 とため息をつかれた。 律儀に返さないと恋人の腕が 血まみれになるので、とも言えなかった。 家に帰るとネコヤが毎度、 熱烈にお出迎えしてくれる。 「ねぇ、ライン遅かった〜」 と拗ねた顔で言われた。 顔や仕草は可愛らしいんだけども… 「ごめん。でも流石に仕事中にあの頻度では返せない。頼むから腕だけは切らないで欲しい」 「…、ごめんなさい。僕重いよね。前の彼氏に捨てられたのも、それが原因だと思うんだけど…、遠田さんかっこいいし、僕の職場より人が多い会社だし、心配で…」 「どんな理由があれ、二股はした方が悪いだろ。それに、そんなにベタ褒めしてくるのネコヤくらいだから心配する必要ない」 そういうと、ネコヤは泣き出した。 まさか泣かれるとは思わず俺は慌てる。 急いでティッシュを取り、ネコヤの涙を拭いてやる。 「うぅ…、遠田さん、良い人すぎるよ。メンケアも完璧で感動してる」 「そ、そう」 何を言ってるのかよく分からないけど 多分褒められているようだから安心した。 ネコヤの感情の起伏は 俺の想像を超えるほど激しいようだ。

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