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たなぼた?

※ネコヤ視点 過去のことはあまり話したくないけど とにかく親とか兄弟とか 家族みたいなものの思い出がない。 出来のいい弟のせいで 僕は家ではいないものとして扱われ このまま実家に縛られたくないと思って なんとか高卒で家を飛び出した。 けど、まともに就活とかしてないし 頭もよくないし おまけにゲイで性欲強いしで ろくな生活ができなかった。 まあなるべくして風俗に落ちついたけど 結局、客に執着したりされたりで 正しい愛情を知る機会はなかった。 3年も働いて殺されなかったのが奇跡だよ、と 辞める時に店長に言われた。 とにかく僕の営業スタイルは 危ない橋を渡るようなもんだとは言われた。 それに、お陰様で自傷癖がついた。 風俗落ちしてからの3年で 客やキャストの中に彼氏ができたり 振られたりを続けてた中で 唯一、僕のことをちゃんと 愛してくれてると思った彼と出会った。 風俗やめて同棲しようと思ったのに まさかただの遊びで 結婚を見据えた彼女がいるとは つくづく、人を見る目がない。 死ぬほど縋り付いて 「死んでやる」って喚き散らしたけど 優しかった彼は冷めた目で僕を見て 「21でそれは流石に冷めたわ。顔が可愛いし、セックス大好きだから、優しくしてやったけどさ、お前みたいなメンヘラ、付き合うとか本当に無理だから」 と鼻で笑われた。 "メンヘラ" その3年間で言われ続けた言葉だ。 僕はメンヘラらしい。 仕方ないじゃないか。 相手が僕を好きなのか 確認しないと気が済まない。 「好きだ」と言われても ふとした時に「嘘だ」と疑ってしまう。 その疑念が深まると鬱々としてきて 何もかも嫌になって 刃物を腕に当ててしまう。 そんな絶望の淵にいたときに 好みの男が僕を拾ってくれた。 今までに付き合ってきた男と違って すごく誠実だと思う。 あのクズ男が遠田さんに昇格した。 棚からぼたもちってやつかな。

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