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優しさ
全てを話し終えると、遠田さんは呆然とした後
我に返ったようにハッとして僕の肩を掴んだ。
「その客と…、その…、したのか?」
「うん…」
「俺と付き合っていながら」
「え、う、うん。ごめんなさい」
無職になったことを怒られると思っていたから
そこに突っ込まれたことに驚く。
そりゃそうか。
普通、恋人が他の人とそういうことしたら
引っかかるよね。
本気で好きじゃなかったとしても。
「はぁ…。とりあえずわかった。そのお客さんがネコヤにまだ執着してる可能性もあるし、とりあえず、当分は外出禁止。もちろん働くのも」
「え!?でも、そしたら僕、遠田さんに家賃渡せないし、ご飯の買い出しも…」
「家賃はいらない。元々、俺が1人で住んでた家だし。買い出しも、遅くはなるけど欲しいものを送ってくれたら買って帰るから」
「そんな…、遠田さんに負担かけられないよ」
「別にそれは良い。ネコヤがもしも誘拐されたり、それこそ命だって危ないんだから。とにかく当分は大人しくしてくれ。その、俺にネコヤを満足させられないかもしれないけど」
満足…
たぶん、僕がお客さんとヤったのを
遠田さんは僕が性的に満足できてないと
思ったんだろう。
そういうわけじゃないのに。
「違う!お客さんとしちゃったのは、頼まれたからで、遠田さんに不満はないから!」
「それじゃあ、ネコヤは家にいてくれ」
「…ごめんなさい。なるべく、解決したらすぐにちゃんとするから」
だから、捨てないで。
とは流石に言えなかったけど
「そんなに焦らなくて良い。とにかく、ネコヤは自分の身の安全を考えてくれ」
「わかった。ごめ…、いや、ありがとう」
「うん」
ありがとう、というと遠田さんは目元を緩めて
僕の頭を撫でた。
遠田さんにちゃんと相談してよかった。
今までの彼だったら「めんどくせぇ」の
1蹴りで終わっていたし
「風俗でもして今月分稼いで来い」と
突っぱねられていただろう。
僕が風俗で働いていようと
お客さんと寝ようと
気にしない恋人ばかりだった。
だから、遠田さんにその気はないにしても
大切にしてくれている感に
僕の心は満足していた。
でも、いつまでも遠田さんが許してくれるわけない。
早く解決するに越したことはない。
どうしよう…
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