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就職
「とりあえず、採用で」
一通り面接を受けて
最後にそう言われた。
「あ、ありがとうございます。がんばります」
「いやぁ、人手足りなかったから助かるよ。経験者だし、ネコヤくん可愛いし、期待してるね」
そう言って面接をしてくれた店長が
僕の肩をポンポンと叩く。
どうしよう、受かっちゃった…
まあ、職は欲しかったんだけど
遠田さんになんて言おう
お店はデリバリー系だから
出勤時間は選べるけど
日中ならやっぱり土日の方が予約入るし
平日でも夕方〜夜の方が良いみたい。
遠田さんが働いてる時間に
こっそり働くようなことは難しそうだ…
週に3日、18時から働くことにはしたけど
どうしよう…
またバーってことにしとこうかな…
遠田さんが帰りをお出迎えして、
ご飯を食べ終えたところで
「話があります」と声をかけた。
「だろうね」
と、遠田さんは僕を見る。
「え?」という顔をしていると、
最近やたらと悩んでいる様子だったし
昨日まで死ぬほど来ていたラインが
今日は全然来なかったし
何かあっただろうと思ったとのこと。
「じゃあ、単刀直入言うとね、また仕事しようと思うんだ」
「まだ1週間だぞ?そんなに焦らなくて良い」
「1週間、何もなかったし!それに、働いてないと遠田さんにたくさん連絡しちゃうし」
「確かにラインの量は多いけど、別に困ってはない」
「それが1ヶ月も続いたら、遠田さんも嫌になっちゃうでしょ。僕もう迷惑かけたくない」
「はぁ…、わかった。もしも何かあったらすぐに俺に教えること。分かった?」
「…、はい」
「で、どこで働くの?」
き、きた。この質問。
どうしよう…
慌てていると遠田さんがじっとこちらを見ている。
「えっと…、またバーなんだけど…:」
「…、そこ、そのお客さん来ないよね?」
「た、多分。前のお店と反対方向だし…」
反対方向も何も、デリバリーだ。
あのおじさんが利用するかもってこと
頭から抜けてた…
でももう引くに引けない。
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