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もう無理
ドアのまだ固まっていると
おじさんは僕の手をすごい力で引いて
部屋の中に入れた。
ガチャリと鍵の閉まる音が鳴る。
オートロック…
ここが閉まってしまうと
あとは部屋代を払うか
受付に電話しないと開錠されない。
おじさんはニヤニヤしている。
僕は動悸と冷や汗が止まらない。
これはヤバいかもしれない。
「あ…の…」
「ネコヤくんが風俗に戻ったってことは
彼とは別れたのかな?」
「え…?」
嘘でも別れたと言うべきだった。
喉が引っ付いて何も喋られない。
「まさか…、別れてないのかい?」
「…えっと…」
「そうか、まだ覚悟ができてないんだね」
ジリジリとおじさんが近づいてくる。
逃げなきゃ!と反射的に思って
振り返ってドアを開けようとするが開かない。
開くわけがないってことに気づかなかった。
「逃げようとするなんて悪い子だ」
それからは力づくでねじ伏せられた。
途中まで僕は諦めてただ泣きながら
好き放題されていたのだが
いざ挿れられそうになると
「嫌だ」という気持ちが突然沸いた。
急に抵抗したからか、僕の押し退けた手で
おじさんは後ろに倒れた。
「やめてくださいっ!本番禁止なんです!」
思わず僕は叫んでいた。
それが彼の怒りを増長させてしまったらしい。
起き上がったおじさんが僕の頬を
思いっきり殴った。
「どうせ何本も咥えた穴なんだから、抵抗する価値もないだろ!」
と怒鳴られて、あとはもうされるがままだった。
いつ事が終わったのかも分からない。
部屋の電話がけたたましく鳴っている。
痛む体を起こして、なんとか出る。
「あの、すみません。お支払いいただいてますので、お部屋を出ていただいてもよろしいですか?」
「あ…、はい。すみません」
部屋代はあのおじさんが払ったらしい。
よく見たら机の上にお金が置かれている。
180分のぶん。
携帯にもお店から電話が来ていた。
掛け直すと
「ネコヤさん!大丈夫ですか!?とっくに180分過ぎてるんですけど!」
と慌てた様子で運転担当のスタッフが出た。
「すみません。送迎お願いします」
「え?だ、大丈夫なんですね?」
「…すみません」
涙がバカみたいに流れ続けてるし
すみません以外に言葉が出ない。
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