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バレた

ホテルの迷惑にならないように 出口で車を待つ。 電話の様子から只事じゃないと思ったのか スタッフが車から降りて僕に声をかける。 「ネコヤさん!あの…って、その顔どうしたんですか!?」 「あ、すみません。シャワー浴びる余裕なくて、臭いですよね。車、大丈夫ですか?」 「いや、そんなことより顔…、殴られたんですか?」 「殴られた…、僕、殴られたんですかね」 そういえば頬がズキズキと痛い。 なんか腫れてる気がする。 それに後ろも多分、裂けてるかも… そう思ったら全身が痛くなってきた。 「とにかく、店に戻りましょう」 スタッフが僕を支えて車に乗り込み、 なんとかお店まで連れてきてくれた。 あまり覚えてないけど、店長からも 何か言われた気がする。 シャワーを浴びて、帰る支度をして なんとか家まで帰る。 玄関のドアを開けると遠田さんが立っていた。 今は遠田さんの顔見たくなかったかも… 「今何時だと思ってる?」 「何時…?」 「深夜の2時」 「え…?遠田さん、明日仕事じゃ…?早く寝なきゃ!」 「そうじゃなくて。本当にバーなの?」 「それは…」 「…、ネコヤ?顔…、顔どうした?」 「顔?」 急に驚いた顔をした遠田さんに釣られて 僕は思わず頬に手をやる。 「いたっ」 ズキっとした痛みが走って 思わず声が出る。そうだ、殴られたんだ。 「とりあえず、手当する。それが済んだら、全部聞かせてくれ」 「っ」 優しく遠田さんに手を引かれて 自分が情けなくてまた涙が出る。 頬に湿布を貼られ、 身体中を目視された。 遠田さんいわく、至る所に 歯形が残されているようだ。 さすがに後ろまでは確認されなかったけど。 その後は詰問され、 バーではなく風俗で働いていること。 でも、本番はしてないこと。 おじさんは今日、初めて指名されたこと。 多分、挿れられたことまで話した。 一通り説明すると、遠田さんはため息をついた。 「何かあったら相談しろと言ったはずだけど。初めから何も話してくれてなかったんだな」 「ちが…、くはないですけど、遠田さんに嫌われたくなくて」   「色々と隠した上に最悪の状態でバレたっていうこの状況よりマシなのでは?」 「ごめんなさい。僕、本当にバカで…」 「あー、もう、泣くな。とりあえず、風俗は辞めなさい。で、被害届を出す。俺が明日一緒にお店行くから。明日っていうか今日か…」 よしよしと泣いている僕を抱きしめて背中をトントンしてくれる。 こんなふうにしてもらう価値ないのに。

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