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百合

樹さんのお兄さんは、大(ヒロ)さんと言う名前で、奥さんと子供がいるらしい。 奥さんのお腹には2人目がいて、 臨月が近いため、奥さんの実家にいるとのこと。 大さんも、明日のお昼には奥さんの実家に向かうそうだ。 仲のいい夫婦といった感じで とても羨ましい。 樹さんの実家に着くとご家族が迎えてくれた。 「遠いところ、ありがとうね。何にもなくてびっくりしたでしょ?何か欲しいものあったら車出すから遠慮なくいってね」と 矢継ぎ早にお母さんが話してくれる。 とても緊張していて、何を話そうかとか ぐるぐる考えていたから 圧倒されてむしろよかったのかもしれない。 「樹兄、おかえり」 「ああ、百合も来てたんだ」 樹さんの話には出てこなかった 若い女の子が樹さんに声をかけ、腕を組んだ。 え、えっと…、誰なんだろう? 妹がいると言う話は聞いてなかった。 「あ、八尋に言ってなかったな。この子はお隣の百合って言うんだ。よくうちに来る」 「初めまして」 樹さんが紹介したあと、樹さんの後ろから ひょっこりと百合さんが顔を出す。 なんとなくだけど、声に棘があるような… っていうか、いつまで腕組んでるの? と、少しもやっとしてしまった。 とはいえ、ご家族の手前、 マウントを取るわけにはいかない。 「あれ?百合って今何歳だっけ?」 「ちょっと!女の子に歳とか聞かないでよね。 23歳でーす」 「じゃあ、八尋より少し上なんだな」 「八尋くんってそんなに若いんだ〜。ふーん」 「あ、えっと、よろしくお願いします」 ご家族の方は、結構好意的だけど なぜか百合さんからは少し敵意を感じる。 気のせいかもしれないけど。 百合さんが、樹さんと腕を組んでいるため、 僕と大さんで荷物を下ろして運ぶ。 樹さんも運ぼうとしたけど「久々だからこのままがいい」と言う百合さんに折れていた。 泊まる部屋は樹さんの部屋らしく、 2人で少し荷物の整理をした。 「もういい時間だし、荷物置いたらすぐに晩ご飯にしよう」とお母さんが言ったため、 これが終わればご飯タイムになる。 「緊張する…」 僕が思わず呟くと樹さんはフッと笑って 「多分、大丈夫だよ。母さんも大も、八尋のことを歓迎してたから」 と僕の頭を撫でてくる。 「でも、お父さんはこれから会うし、 百合さんは歓迎してないように見えるよ」 「正直、父親は母さんよりちょろいから大丈夫だよ。百合はお隣さんだから気にしなくていい。 八尋が嫌なら帰ってもらおうか?」 「そんな!流石にそれは申し訳ないよ! わかった。自信を持って僕たちのこと報告する」 「俺がいるから。大丈夫、絶対に」 樹さんの余裕げな表情に、 僕も少し勇気が湧いてきた。

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