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幸せなうとうと
体に重みを感じながら目が覚めた。
部屋の中はうっすら明るい。
多分朝だ。
そして感じた重みは
樹さんの腕だった。
しっかりホールドされてる。
そして、腰の重みとか喉の渇きとかが
もっと押し寄せてきた。
朝なのにもう疲れてる…
たった1泊で帰ってきたので
まだ休暇は残っているのが幸いだ。
樹さんはスヤスヤと眠っている。
行為の後は大抵、樹さんが先に起きるから
とても珍しい光景だ。
樹さんは僕がずっと寝てても
無理やり起こしたりしない。
今までの彼氏は問答無用で起こしたし
泊まることもあまりさせてくれなかった。
その時点で自分の優先度を察するべきだった。
僕は樹さんに出会うまで
本当の意味で大切にされることを知らなかったのかもしれない。
樹さんの体はいつも温かい。
僕はヒョロガリで筋肉がないから
冷え性で、樹さんで暖をとる。
なんか体だるいし、もう少し寝ようかな。
もっとくっついておこうともぞもぞすると
頭上で樹さんの笑い声が聞こえた。
「起きてたの?」
「起きてた。薄目で八尋の行動を見てたけど
最後のモゾモゾはくすぐったくて耐えられなかった」
「声かけてよ」
「先に目覚めた八尋が何をするか気になってな」
「何もしないよ」
「それは残念。俺が今まで寝てる八尋に何をしてきたか知りたいか?」
「えっ!?な、何してたの!?」
「やっぱり気づいてなかったか」
「いやいや!だから何をっ」
寝てる間に何をされてたか
問いただそうとしたけども
「もう少し寝よう」とさらに強く
腕の中に閉じ込められて抗議できない。
力じゃ絶対に敵わないから諦める。
諦めて力を抜くと
眠気が襲ってきた。
もう少し幸せな惰眠を貪ろう。
樹さんとなら一緒に眠るだけでも
僕には十分幸せだ。
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