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会社の飲み会

それから休暇はゆっくり過ごして たまに近場にデートに行ったりして 気づいたら幸せな休暇は終わっていた。 仕事始めはしんどかったけども 3日もすれば慣れてしまった。 8月もあと数日で終わる頃、 樹さんが「明日の夜は職場のビアガーデンだから帰り遅くなる」と晩ご飯中に言った。 「ビアガーデン??8月の終わりに?」 「変だよなぁ。なんか今年は7月に開催し忘れてて、8月も休み前まで大きい案件が動いてたりして結局明日になったんだよ」 「それでも開催するのがなかなかすごいね」 「皆、何かにつけて飲みたいんだよ。 俺は営業だから参加しなきゃいけなくて… 悪いけど、夜はいらないから」 「うん。楽しんできてね」 「八尋も連れていけたらいいんだけど」 「え?」 「いや、やっぱ見せたくないから駄目だ」 「…」 この見せたくない、は嫉妬的な意味だろう。 昔だったら、男が恋人なんて知られたくないよね、シクシクって思ってたけど 今ならちゃんとわかる。 嫉妬する側だったから、されるのは悪い気はしないけど、樹さんはストレートすぎる。 毎回、照れ隠しするのが大変なんだ。 「あ、だからと言って、1人で外に飲みに行くのは駄目だからな。外食くらいなら目を瞑るけど…、飲むのは駄目。門限は9時」 「僕、そろそろ22歳だよ?門限早すぎる」 「とにかく、駄目だからな」 「分かったよ。僕、インドアだし大丈夫」 「うん」 満足そうに樹さんが頷く。 過保護だなと内心ため息を吐きつつも 心配されるのも悪くないと思う。 そして、翌日。 いつも通り樹さんは出社して 僕も出社して、廃棄のパンをもらって帰った。 作らなくて良いとなると パンの一個くらいで十分だ。 でも、おまけに食パンを一斤もらったから 明日の朝ごはんはサンドイッチかなぁと 思いつつ買い物をして帰った。 いつもより味気ない晩ご飯を食べ、 ぼんやりとテレビを見る。 金曜ロードショー…、樹さんの好きな洋画だ。 一緒に見たかったなぁ 樹さんからは6時過ぎに「今から飲む。ちゃんと家にいるか?」というラインが来た。 「いるよ。楽しんでね🍺」と返してから返事がないから今頃、飲み会に勤しんでいるんだろう。 営業部って言ってたし、上司とかに酒を注いで回ったりしてるんだろうな。 10時になり、もう寝ようかな、と思った頃 樹さんからメッセージが届いた。 『飯田です。遠田が潰れちゃったから、ネコヤくん、お迎えに来れないかな?💦』 ええ!?樹さんが潰れるなんて珍しい… 『いけます!』と返すと場所が送られてきた。 酔っ払ってるのか机に突っ伏してる樹さんの写真付きだ。 何が僕の門限は9時、だよ! 樹さんの方が圧倒的に心配かけてるじゃん。

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