55 / 58
翌朝
いつもより早めに起きて
昨日やり残した家事をしたり
朝ごはんの支度をする。
昨日は急に呼ばれて迎えに行ったから
ご飯も炊けてない。
せっかくだし、昨日買った食パンを
主食にしよう。
いつも夜にしてたお風呂掃除もしてないし
お弁当の下準備もしてない!
早めに起きたけど時間との勝負になりそう…
台所に立ち、いそいそと準備をしていると
樹さんが起きてきた。
「おはよう…。なんか昨日はごめん」
「おはよう。記憶あるんだ?」
「断片的に…。八尋にも職場の人にも
合わせる顔がない」
「あんなに飲むなんて珍しいんじゃないの?
なんで?」
責めるつもりはなく単純に疑問だったので
聞いてみた。
「いやぁ…、まあ…、飯田のせいだな。
俺に恋人がいるだの、同棲してるだの、言ったせいで周りからかなり冷やかされて思わず…」
「気持ちはわからないでもないけど
人に迷惑かけるのはダメだからね」
「ごめん…。幻滅したよな」
反省してもらおうと思って
特に怒ってもないけど冷たく言ってみた。
かなり効果的面のようで落ち込んでいる。
「まあ、可愛かったけどね、樹さん。
でもああ言う隙があるところは
あまり他の人には見せて欲しくなかったかな。
女の人もいたし…。
盛大に僕が恋人だってバラしてくれたから
昨日は心配なかったけど」
「ほんとごめん…。
え?俺、バラしてたか?」
「バラしてたよ!
しかも皆の前で押し倒して、キスしようとしてた」
「…、今日会社行くの辞めるか…」
「あんな酔い方した上に、当日欠勤なんて最悪だよ。だめです」
「…、だよな」
いつもよりもモタモタ準備をして
なんとか樹さんは出勤した。
酔うとちょっと面倒だけど
真面目だし、誠実だし、
最近はちゃんと言葉にしてくれるし
優良物件だよね。
きっと職場にも狙ってた人とか
いたんだろうな。
そう言う意味では良い牽制になったかな。
その日、僕も出勤だったけど
いつもよりもお昼頃に樹さんの職場の人が
多くきた気がする。
わざわざ声までかけてくれる人もいたし。
樹さんが職場で可愛がられている証拠なんだろうけど
これがきっと迷惑になると思って
飯田さんにも隠したかったんだろうな。
僕としてはお客さんが増えるなら
全然良いんだけどね。
ちょっとくすぐったい気持ちにはなった。
ともだちにシェアしよう!