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撃退

相性良かったとか言ってるけど 正直、僕がこいつの言うことを 何でもかんでも聞いて もっと解してほしいけど 「挿れたい」とか言うから受け入れたり イラマとかもさせたあげたり とにかく、僕が都合のいい人だったから 勝手にそう解釈してるだけだ。 気持ちよさで言ったら 僕は断然、樹さんの方が相性がいい。 そりゃ女の子がそんな扱いされたら 耐えられないに決まってる。 「なんだよ、つれないなぁ」 僕が無表情で固まっていると そいつは肩に手を回してきた。 「やめてよ。もう貴方とは2度と関わらない」 冷たく振り払うと逆上してきた。 「はぁ?ゲイ風俗の分際で なに偉そうなこと言ってんだよ!?」 「ちょっ…、やめてっ」 休日の昼間のショッピングモールで 大声を出して僕の肩を掴む。 本当に信じられない。 こいつ、僕よりたしか5歳くらい上だよな? 「やることくらいしか能がねぇくせに!」 ギャーギャー喚いている。 付き合ってる時に言われたら 確実に病んでたけど しょうもない男だと思ったら ダメージは半減する。 それでも、好きだった人だから傷つきはする。 「なにしてるんだ、お前」 聞き慣れた声がして 元彼の腕が離れた。 「樹さん!?」 「用事が終わったから八尋を探してたんだけど、こいつ誰?」 樹さんが元彼の腕を捻り上げたまま 僕に尋ねる。 「えっと…、元彼」 「なんだよ、こいつの彼氏か? 元彼じゃねぇから安心しろよ。 せいぜい元セフレだからっ、いててて!?」 樹さんがさらに元彼の腕を捻りあげる。 「お前に聞いてない」 騒ぎを聞きつけたのか、店員さんが来て 元彼はすごすごと帰っていった。 ホッと胸を撫で下ろした。 「樹さん、ありがとう。 とても助かった」 「いや…、ちゃんと一緒に見て回るべきだったな。怖い思いをさせた」 「樹さんのせいじゃないよ! 元はと言えば僕の見る目がなかった」 「そうだな。あれのどこが良かったんだ?」 「好きになった当時は未成年だったの! 若気の至りだよ」 「八尋は若気の至りが多すぎる」 「もうしないよ」 「そうか。それと…、あいつが言ってたことは気にしなくていいからな」 「へ?」 「セフレがどうとかって話。 俺からすれば八尋は勿体無いくらいに いい恋人だからな」 「…なっ!?急にそう言うの、外でやめてよ! ありがとうだけど!」 恥ずかしくなって早足で歩き出す。 「ご飯食べよう!お腹すいた!」と 半ギレで後ろにいる樹さんに言う。 「お昼の店、予約してるんだ。 だからそっちじゃなくて、俺についてきて欲しいんだけど」 と、樹さんは言った。 とてもびっくりしたけど、 照れ隠しで「そういうことなら早く言ってよ」と、踵を返すことしかできなかった。 予約するお店って…?

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