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第9話 ※
新家は神原の家に度々訪れるようになった。プレイをすることもあるし、しないこともある。朝はどちらかが朝食を作り、揃って出勤する。仕事以外では名前で呼び合う程度の仲にはなった。2人は着々と恋人としての距離を縮めていた。
それと同時にプレイにも慣れてきた。まず意識しなくてもシームレスにDomとしての自分に切り替えることができるようになってきた。というより最初はこんなことをしていいのだろうかと躊躇することが多かったのだが、縁也があまりにもなんでも受け入れるので蓮華も開き直った、というのも大きい。痛めつけるようなことは当然しないが、試してみたいことなら沢山あった。縁也がスペースに入ることもあるしそうでないこともあったが、いずれにせよこちらも充実していることは確かだった。
今日は沈黙 させた状態で、膝立ちの姿勢にさせて遊んで いた。服も着せたまま、時折足でズボン越しにペニスを撫でて緩い刺激を与え、半勃ちのまま維持させる。敢えて姿勢維持 のコマンドを使わず、自ら膝立ちの姿勢でいようと耐えながら震える縁也を見て蓮華は愉しんでいた。
ちなみに着せているのはいつものスウェットではなく仕事で着ているスーツ、だと動きにくいし洗いにくいのでそう見えるジャージだ。まさか作る側もこんな使い方をされるとは思っていないだろうから少し罪悪感はあるが、正直背徳感があって燃える。ちなみに蓮華も真っ黒なジャージスーツを着ている。仕事柄堅苦しく見えるスーツはあまり着ないが、着心地はとてもいいし、雰囲気は抜群である。
縁也は先程から蓮華の股間にちらちらと視線を送っていた。多分無意識なのだろうが、その頻度は日を追う事に増える一方だった。
「入れたいか?」
目の前のSubがこくこくと頷く。
何度もプレイはしていたが、蓮華は縁也に挿入を許したことはなかった。裸を見せたことすら1度もない。縁也のペニスを見る勇気も起きなくて、こうやって服越しに触れるのがやっとだ。あの男が蓮華に残した傷はそれほどまでに深かった。だが蓮華にもそろそろこの先に進みたいという気持ちが無いわけでもない。どうしようかと悩んだその時、ある考えが頭に浮かんだ。自然と口元が嘲りの形に歪むのが分かる。自分へのものだが、このSubに分かりはしない。そしてこのSubならば、これから蓮華の言うことに従うだろう。そう考えると悪寒にも似た快楽が背筋を駆け抜ける。それを隠して蓮華は言った。
「じゃあ誠意を見せろ。俺を受け入れることが出来るなら、俺に入れさせてやってもいい。その覚悟くらい、俺のSubなら出来るだろう?」
嘘ではない。それくらいやってくれないと、蓮華にも挿入を許す覚悟が出来ないのは事実だった。しかし縁也を犯してみたいという歪んだ好奇心の存在も否定できなかった。
ΩDomとして目覚めてから、自分の性について調べたことは何度もある。もちろんセックスについても調べた。そこで目にしたのが、「αに突っ込むとめちゃくちゃ優越感得られて気持ちいい」という発言だった。それはSubを多頭飼いして遊ぶΩDomのもので、当時蓮華はαやSubを玩具のように扱うなんてと嫌悪と軽蔑を感じていた。そもそも蓮華にタチの趣味はなかった。それなのにこのαSubなら、と思ってしまった。
そして一瞬の躊躇いもなくSubは頷いた。Shushが効いていなければきっと「入れてください」と懇願しているだろう表情だ。なんなら足も触れさせていないのに腰がかくかくと揺れて、欲望が勢いよく首をもたげるのが見えた。
「想像しただけで興奮したのか?α失格の駄犬だな」
「~~っ!」
唇に血が滲みそうなほど噛み締めて、目の前のSubがイったのが分かった。ふうふうと息をしながら潤んだ目で見上げてくるSubのペニスを服越しに足でなぞる。
「しかも堪え性がない。せっかく俺の中に出すはずだった精子を服の中に無駄撃ちするなんてどんな気分だ?」
そう聞かれてもShushのせいで答えられないSubは、蓮華の足に欲望を押し付けることでそれに応えた。
「今度は足でイきたいって?じゃあイけ 」
言うと同時に強く足を押し付ける。十分に気をつけたがそれでも痛いほどの刺激のはずなのに、Subはがくがくと身体を震わせて、また服の中に吐精した。服の中はさぞ気持ち悪かろうに、なおもうっとりとした表情でゆるゆると足に股間を擦りつけてくるSubから足を離す。
「俺を使ってオナニーするな。…まあいい 。今日はこれで終わりにしよう」
普段の口調に戻ってプレイの終わりを告げると同時に、縁也が腰を落としてそのまま正座になる。そのまま真剣な面持ちで蓮華を見上げて言った。
「準備、勉強しておきますから」
蓮華はむせそうになるのをこらえた。
「…頑張れよ」
他にどう言えばいいかわからなくてそう呟くと、縁也は大きく頷いた。
「蓮華さんのためならなんでも出来ますよ。それに、お揃い、になるわけですし…」
縁也が何やら頬を染めるのを見て、やっぱりこいつなんか屈折してるな、と蓮華は頭を掻いた。
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