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第2話

「っ……と、……」  大きな音を立てたらすぐにギルバートに気付かれる。猫のようにしなやかに二階の窓から芝生の上に降り立つと、そのまま庭園に入った。部屋履きのままだが今は構っているヒマがない。  それに私は肌身離さずマジックバッグを持っているので、靴も装備もどうとでもなる。今はただ、ギルバートから遠ざかる事を考えなければ。 「ハロルド様?……ハロルド様どちらに……!!」  開きっぱなしの窓から、侍従の声が聞こえる。その頃には私は庭園の深い茂みを通り抜けていた。少し足を速めて、塀に囲まれたバラ園へ入る。まだ時期ではないためここは閉園されていて、朝と夕に庭師が出入りするのみだ。つぼみどころか若葉もまばらなバラの間を歩き、年代物の四阿の中へ入った。  はあ、と小さく安堵の息をついてマジックバッグの中を探る。ブーツとマントを取り出して身につけ、路銀と装備の確認をした。このまま学園を出て、暫くは失恋旅行をするつもりだった。父には手紙でも書いておけば良いだろう。  師である騎士団長は冒険者とも仲が良く、鍛錬の合間にギルドを案内してくれたり、冒険者と騎士団が手を組んで魔物の大群から街を防衛した話などを聞かせてくれた。その頃から少し憧れがあった。腕には覚えがあるし、旅をする間は冒険者ギルドに所属するのもいいかも知れない。 「そうだ。大丈夫。私は一人でも大丈夫だ」    自分に言い聞かせる様に呟いて、私は座っていたベンチから立ち上がった。くん、とマントが何かに引っかかって体勢を崩す。何かと思って裾を手繰ると、細い釘のような、針のようなものが四阿の柱に突き刺さっていて、それが縫い止めるようにマントを掴んでいる。  ――その針のような武器には、見覚えがあった。 「何処に行く気だ」 「ギ、ル……」  手先の器用なギルバートは、魔法よりも暗器を混ぜた戦闘を得意としている。この金属製の針は彼の最も得意とする武器で、音も立てずにどんな角度でも放つことが出来た。私は気付かないうちに足止めをされていたらしい。 「……ハロルド」  声は、すぐ後ろから聞こえた。ハッとして振り返ると既に触れそうなほど近くにギルバートが立っていた。中途半端な姿勢でベンチから腰を上げていた私の肩を掴み、そのままゆっくりと座らせる。有無を言わせない圧力を感じ、私は唇を噛んで俯いた。 「……今日が何の日か判るか?」 「え?」  唐突な問いかけに、私は瞬きをして相手を見上げた。ベンチに片膝をかけたギルバートは覆い被さるように私に顔を近付けてくる。その漆黒の瞳の奥は妙にギラギラとしていて、燻った炎が見えた気がした。 「だ、誰かの誕生日……だっただろうか?」 「違う」 「んー……」  両親の結婚記念日……でもない。あとは何だろう、逆に命日とかだろうか?  質問に気を取られて考え込む私に、ギルバートの顔がどんどん近づいてくる。そして大きく温かい手が私の頬を包み込んだ。 「今日は、卒業式だったな?」 「え、……そ、そうだね……」 「『学園を卒業するまで』というのが、陛下との約束だった。……つまり今日の午前までだ」  ゆっくりと弧を描く薄い唇が、啄む様に触れてくる。私の頬に、額に、鼻先に。彼のまとう雰囲気がどろりと甘く、蕩けていくような感じがした。私は――私は、この雰囲気に弱いのだ。だって、とても気持ち良い事をギルバートがしてくれる前触れだから! 「ギ、ギル……待って……!」 「待たない。もう気が遠くなるほど待ったんだ。俺の理性と自制心を陛下は褒めてくれるべきだと思う」 「え?え?」 「……いや、想いが伝わっていると思って口で言わなかった俺も悪いな。すまなかった、ハル」  マントの留め金が外され、そのまま四阿のベンチに広がる。優しくその上に押し倒されて、私は瞬きしながらギルバートを見上げた。この期に及んで、私はまだ事態が把握できていない。 「陛下には婚約破棄は無効だと言ってきた」 「ち、父上に?」 「ああ。お前が破棄したい理由とやらを聞いた。全く必要ない気遣いだ、ハル。俺は昔からお前しか見ていないし、今も愛おしくて仕方ないし、これから先も他の者を娶る気はない」  断言するように淡々と言ったギルバートは、私が困ったように眉を寄せるのを見てふと唇を綻ばせた。そして腕の中に私の身体を抱き込み、閉じ込める。 「ハルは気に入っていないようだが、俺はこの身体が大好きだ。美しくてしなやかで、抱き心地がよくてずっと触れていたくなるし……エロくてそそられる。いままで何度、俺の下半身が暴走しかけたと思ってる?」 「っ!? な、なにを言っ……」  シャツのボタンを丁寧に一つずつ外されていく。抵抗する間もなく前を開かれて、片方の肩が露出するように剥かれた。外気に晒され、少し肌寒くてふるりと震える。  こちらを見つめるギルバートの目はギラリと飢えたような色をしていた。 「ここに、……ずっと触りたかった」 「ひっ、……ぁっ」  獲物を前に涎を滴らせる獣のように、ギルバートは熱い息を吐いた。そして露出させた私の胸を片手で掴むと、揉みしだきながらもう片方の乳首に吸い付いた。ちゅうっと強く吸われて、未知の感覚に身体が大きく震える。  胸筋というのは、力が入っていない時はふにふにと柔らかな触り心地になる。いま、私の身体は力が抜けてしまって、盛り上がった胸筋はギルバートの手の平で散々に揉みしだかれている。時折指先で乳首を摘ままれ、悲鳴のような声が漏れてしまった。交互に舐めしゃぶられた両方の乳首は濡れたままピンと尖って、存在を主張している。  きもちいい。もっと、もっと舐めて。捻って。押しつぶして。ちょっとだけ甘噛みしてほしい。  はー、はー、と呼吸が苦しくて、声にはならない。けれど、私の頭の中はそんな欲求でいっぱいになっていた。ねだるようにギルバートに胸を突き出し、黒髪の頭をぎゅっと抱き締めて快感に震える。 「ぁ、……ん、ぁっ……あっ」 「もう真っ赤だ。見て、ハル」  ギルバートの手で両側から寄せられた胸筋は、谷間ができるほどのボリュームだった。白く日焼けしない肌に、充血して膨らんだ乳首、薄く色づいた乳輪が際立って見える。とても淫らで恥ずかしい光景だった。私は羞恥に顔が熱くなって、両手で顔を覆ってしまった。 「ハル、ハル、顔を見せて。隠さないでくれ」 「いやだ。恥ずかしいよ……もう許して……」 「ダメだ。まだまだ触り足りない。何年越しに夢が叶ったんだと思ってる」  マントの上に仰向けにされた私の腰の下に、ギルバートの手が回る。ぎゅうっと強く抱き締められて、腰から下に手の平が降りてきた。ギルバートの手は、今度は私の尻肉を両側から掴み、ふにふにと揉み始めた。そのまま私の胸に顔を押しつけて、膨らんだ乳首のあたりを甘噛みしてくる。痛みに感じる程ではなく、ただむず痒いような快感に炙られて私は身悶えた。  身体を捩ると、ギルバートの指先が尻肉に強く食い込んだ。そして二つの膨らみの狭間に指を滑らせ、すりすりと擦りながら押し込んでくる。 「あ、あっ、あ、……な、なん、……なにっ、なんで、ギルッ」 「気持ちいいのか? それでいいんだ、ハル。気持ちいい所を撫でられて、そう感じるのは当たり前だろう?」  そうだろうか。ギルバートがそう言うのなら、そうなのかもしれない。  混乱してパニックに陥りかけていた私は、滲んできた涙をそのままに、すん、と鼻をすすった。上目にギルバートを見上げ、これからなにをするの、と視線で問いかける。 「……」 「ギル?」  すぅー、ぱたん。  ギルバートの頭がぐらりと揺れたかと思うと、息を吐いてから私の胸の上に落ちてきた。軽くぽよんと跳ね返ったような気がして、慌てて両手で彼の肩を支えた。 「……頑張れ俺の鋼の理性」 「ギル? どうしたの」 「自分を鼓舞していた」 「……? そう。……ええと、頑張って?」  よしよしと黒髪の頭を撫でてあげたら、急にギルバートが頭を跳ね上げた。驚いて手を引いた私の手首を掴み、マントの上に縫い留められる。はー、はー、と頭上でギルバートの荒い息が聞こえてくる。  どうしたんだろう。そんなに苦しいなんて、何か病気だろうか。 「もうダメだ。抱く。今すぐ抱く。ココでヤる」 「ギ、ギルバート?」 「すまん。……後で、ちゃんとベッドで仕切り直すから」  ちゅ、と鼻先にキスが落ちてきた。パチリと瞬きして見上げると、乞うような視線のギルバートと目が合う。何だかよく判らないけど、許しを乞われている気がする。  何を求められているのか判らないまま、それでも私は頷いた。ギルバートがすることで、私が拒むようなことなんて、ひとつもないはずだから。 「いいよ、ギルバート。……きみの好きにして」  いつものように微笑みながらそう答えると、ギルバートは一瞬言葉に詰まったように固まり、それから深いため息をついた。そして、私の唇に、噛み付くようなキスを落とした。  肌の触れ合う乾いた音が、耳の奥に、ずっと響いているようだった。  念入りに念入りに解された私のアナルは、香油でとろとろにされていて、ぎゅっとギルバートの性器を食い締めて放さない。ずっと濡れたような感触が消えない下半身は、精液やギルバードの唾液でぐちゃぐちゃだった。  ギルバートは自慰をさせる時のように私の性器を弄り、口で射精させ、さらに奥のアナルを指先で解した。その際に、下に敷いたマントに滴るほど香油を使われ、粗相したかのような感覚が私は恥ずかしくて仕方なかった。けれど、指で解されているうちにギルバートの指がある一点を掠め、私の羞恥はすぐに崩れ去ってしまった。  ギルバートの指が、そこを軽く押し込むたびに、腰が浮くほど気持ちがいい。太い中指の腹で擦られただけでそんな状態だった私は、指が二本に増え人差し指と中指で摘まむようにされると、声が抑えられなくなった。  喘ぐ声がひっきりなしに響き、閉じられなくなった唇の端から唾液が零れる。そんなみっともない私の姿を見ても、ギルバートは蕩けるような笑みを浮かべてキスをしてきた。  指が三本に増え、さらに入口を四本目が潜って軽く抜き差しされた。ギチギチに広がった私のアナルを見下ろしたギルバートは、服を寛げて隆々と滾った性器を取り出した。共に湯を使う時に見て知っていたが、それは私の性器よりもずっと大きくて太くて長い。一般的な大きさというのは知らないけれど、たぶん、ギルバートのは大きいのだと思う。  しかしそれよりも……ギルバートは本当に私で勃つのだなと理解した。  好きだと言われても、ずっとこの時を待っていたと言われても、どこかで信じ切れずにいた。口ではそう言っても実際触れてみたら、……萎えるのではないか、なんて。  でもそれは杞憂で、ギルバートの性器は興奮も露わに私の前に突き出された。香油をまとい、アナルに宛がわれると、先程まで広げられていたそこがきゅんと疼くような気がした。  ギルバートはゆっくりと、私の中を傷つけないように挿入していった。  息苦しさは勿論あったし灼熱の棒をぐいぐいと内臓に押し込まれていくような、本能的な恐怖も生まれた。  でも、……でもギルバートが私を抱き締めて、何度も名前を呼んでくれたから、奥に行き着くまで耐えることが出来た。  ギルバートの性器は大きすぎて、全部は入らないみたいだった。だから、そこからはゆさゆさと小刻みに中を探られた。先程の感じる一点を性器の先端で押されると、高い悲鳴を上げてしまうほど心地良い。  服はお互い中途半端に乱したままで、肌が触れているのは一部分だった。夕方にさしかかり冷えてきた風が肌を撫でていっても心地良く感じるほど、私達は熱のかたまりのようになっていた。 「ハル、……ハル、ごめん。初めてがこんなところで……」 「ん、……いいよ……ギルバートとだったら、どこでだって……」 「……ハルッ!」  ぐっと足を持ち上げられて、突き込まれる角度が変わった。突き当たりだと思っていた場所に、ぐりぐりとギルバートが亀頭を当ててくる。ビクンと私の身体は反射的に大きく震えた。  ぐ、ぐ、と押し込まれる度に腰が跳ねる。悲鳴のように高く上がる声が抑えられない。 「あ、ぁ、や、あんっ、ぁ、ひっ、……そこ、だめっ……あぁっ」  痛いようなむず痒いような何だか判らない衝動が湧き上がって、私はギルバートに手を伸ばした。屈んできた相手の背に腕を回して抱きついて、は、は、と整わない息を続ける。ギルバートはぐうっと亀頭の部分を強くそこに押しつけて、それから一度腰を引いた。 「ひんっ……ひ、ぁ、あ、あぁっ……」  ずるるる、と勢いよく引き抜かれて、ゾクゾクと背が震えるような快感が走る。そしてまた奥までゆっくりと突き込まれて、ぐぽぐぽと先端で壁を弄られた。むず痒い痛みが強い快感に塗りつぶされていく。きゅうっと身体の奥が切なくなって、ギルバートの性器を締め付けてしまった。  う、と小さく呻いたギルバートが俯いた。奥歯を噛み締めているのが、ギリギリと軋むように音が聞こえる。  それから、どくりと私の中に熱い何かが吐き出された。 「……ハルに、……搾り取られた」  そんなぼんやりとした呟きを耳にしつつ、私は心地良さと疲労感に包まれて、ゆっくりと瞼を下ろしていった。  気がつくと、寄宿舎の私の部屋に戻されていた。湯を使ったのか身体は清められていて、薄い夜着をまとってベッドに寝かされている。視線を巡らせると、ティーテーブルにギルバートが座っていた。茶でも飲んでいたのか、目覚めた私に気がつくとカップを置いてベッドに近寄ってくる。 「起きたか。……すまない、無理をさせた」 「ううん。それはいいんだけれど……」 「ん?」  いいんだけど。ギルバートとの初めての行為は、疲労感こそあれどとても気持ちが良かったから。それは別に、いいんだけどね。 「婚約破棄、私は父上に了承を貰ったんだとおもっていた」 「……陛下は本気にしてなかったみたいだぞ」 「そんな……」  私の一世一代の決断だったのに、父上には冗談だと思われていたなんて……。   「ハロルド。陛下からはひと通り聞いたが、お前の口から聞きたい。……なんで婚約破棄などしようとしたんだ?」 「そ、それは……」  俯いた私の手に手を重ね、ギルバートはベッドの端に腰掛けた。じっと見つめられて私は視線を彷徨わせ、しどろもどろに口を開く。 「貴族や王族は政略結婚が多いと聞いたんだ」 「……まあ、そうだな」 「ギルバートはとても逞しいし、強いし、きっと貴族令嬢や令息から相手を選ぶのにも困らないと思う」 「……ん?」 「何も無理して私のような、そ、育ってしまった男を、選ばなくても……華奢で美しくて、たおやかな結婚相手が見つかると思って……」 「お前は学園の誰よりも美しいが?」  即答で言い放ったギルバートは、いや社交界の誰よりもか、と言い直した。冗談や慰めかと思ったが、私の顔を見つめる目は真剣だった。 「……閨教育の最初は、年上の女性がいいって。柔らかくて心地良くて天国が見られるって」 「それは誰が言ったんだ?」 「同じ教室だった者達が話していたんだよ。女性の身体は、きっと良い匂いがして触り心地もよくて……い、色香があるんだよきっと。私のこの、筋肉だらけの身体とは違う」 「ハロルドは、閨教育を女にして欲しかったという話か?」 「ち、違うよ!私はギルバートで良かったと思ってる!……だって、とっても気持ちが良かったから……」  上手く話せなくて誤解をさせてしまった。慌てて首を橫に振りギルバートを見つめる。女性に触れられたいなんて、私は一度も思ったことがなかった。ギルバートが教えてくれて、よかった。それが婚約者として普通の行為だというのが、嘘なのだとしても。 「気持ちいいだけか?」 「うっ……ほ、ほんとは……ギルバートの腕にぎゅってされるのが嬉しかった」  顔が熱くなって、私は恐らく赤面しているのだと思う。ひどくみっともない顔をしているだろう。  潤んで歪む視界のまま目の前のギルバートを見つめた。 「わ、わたしは……ギルの逞しい身体に抱かれていると、とてもいやらしい気持ちになってしまうんだ。最初に夢精をした時も、寝る前に思い浮かべていたのはギルの背中だった。……それでギルに触れられる夢を見て、朝になったら夢精していたんだ」 「……」 「ご、ごめん。ずっと言えなかった。私は、あの頃からギルの身体に欲情している。自慰の世話をされている時も、本当は、私もギルに触りたかった……」  話しながらだんだんと俯いてしまっていた私は、スッと視界に影が差して瞬きをした。ギルバートの手が私の首の後ろを支えて、唇が重なってくる。そのままベッドに倒れ込んで、優しくシーツに押し倒された。 「んっ、く、……ん、ぁ、ふ……」  くちゅくちゅと舌が私の口の中を弄り回していく。味わうように舌を絡め、唾液を吸われて腰がズンと重くなった。無意識に身体を捩ると、ギルバートの身体が重なってきて、ゴリッと服越しに下肢に押しつけられた。  さっき、あんなにしたばかりなのに、ギルバートのそこはまたかたくなっている。  私はカアッと身体の奥が熱くなったような気がして、視線を彷徨わせた。私の口腔を犯していくギルバートの舌使いは巧みで、思考がどんどん奪われていく。ゴリゴリと押しつけられているだけで性器が兆して、私のそこも存在を主張するようにギルの膨らみを押し返していた。無意識に腰が揺れて、鼻から抜ける吐息に甘えるような響きが混ざる。 「ハル。ハル、可愛いな」 「ん、ん、ふ、ぁ、……ひ、あんっ」  蕩けるような甘い声で名前を呼ばれ、尻を再び両手で揉まれる。ギルバートはそこと胸を弄るのが好きみたいで、先程から揉み跡がつきそうなほどこね回されていた。  でも、私もそこに触れられるのがきもちよくて仕方なかった。ギルバートの手は尻肉に食い込み、両方の膨らみを左右に分ける。先程穿たれて少し腫れたようになったアナルがきゅっと締まり、そこを指先でくぷくぷと弄られた。服の上からだから指が入ってしまうわけではないけれど、アナルは刺激を期待してヒクリと震える。  もっとして、というように無意識に腰が揺れる。ギルバートの手で簡単に下半身を剥かれてしまい、熱く乾いた手が直に尻肉を掻き分けた。しかしそのまま刺激を与えられると思った期待は、早々に打ち砕かれる。ギルバートは何か思いついたように私の太腿を掴むと、ベッドの上で大きく足を開かせその膝を曲げさせた。  ぐい、と押されて腰がシーツから浮いてしまう。私は今、下半身に何も身につけていないから、性器と尻とアナルがギルバートの前に晒されてしまった。あまりにも恥ずかしい格好に羞恥で真っ赤になる。 「ギ、ギル……やだ、こんな……」 「でもこうしないと舐められない」 「なめ……?」  ギルバートは身体を屈めると、私の膝を掴んだまま、あろうことかアナルに舌を這わせはじめた。腰を上げられてしまっているせいで、私の勃起した性器はたらたらと先走りを零し、それは白い胸に滴っていく。ああこのまま射精したら、私は自分の顔にその飛沫を受けるのでは?  そんなことを思ったのは、現実逃避だろうか。 「ふ、ぁ、んんっ……ぎる、……ぎるぅ、やだ、……や、や、ぁああっ」  にゅぷ、くぷ、と小さな音を立てながらギルバートの舌が私のアナルに埋まった。少し差し込んでは離れ、ヒダを宥めるように入口を舐られる。そのうち舌を根本までぐにゅりと押し込まれ、それが中で暴れ回る。ぐにぐにと内壁をねぶりながら唾液をまぶされ、アナルの中が潤っていった。  先程ギルバートの太い性器を受け入れたばかりだからか、指を押し込まれても痛みなどまるでなかった。それを確かめてから、ギルバートは勃起した性器を服の中から取り出した。  私は泣きそうに顔を歪めながら、ギルバートに手を伸ばす。 「ギル。ギルも脱いで」 「ああ、そうだったな。悪い。……ハルの上も脱がせていいか?」 「うん」  手際よく私の服を脱がせたギルバートは、さっと無頓着に自分も脱いだ。惜しげも無くその逞しい身体を晒している。私はドキドキと騒ぐ心臓を押し留めながら、ギルバートの日焼けした肌と筋肉に見惚れた。  再びギルバートが私の膝を掴み、足の間に腰を進めてくる。シーツから腰が浮いて、アナルに濡れた亀頭が触れた。にゅぷりと押し込まれた性器を肉襞がきゅうきゅう締め付ける。ギルバートは小さく呻きながら腰を一気に打ち付けてきた。 「ひ、あんっ!……んっ、あっ、あっ、あっ! ひぐっ……んんっ、ぅ」  パンパンと激しく腰を打ち付けられて、声をあげた。蕩けきった嬌声を上げる私の唇を、ギルバートのキスが塞ぐ。濃厚なキスをされながらも下半身の動きは激しく強くなっていった。酸欠気味で朦朧としてきたが、ギルバートの背に回した腕は必死に緩めなかった。 「あ、あ、あっ、ひぅっ……さわって、……ぎるぅ、触ってぇ」  ぎゅうぎゅう抱きつきながらもっととねだると、ギルバートは笑みながら私の髪を撫でた。そして両手で私の胸を掴むと、片方ずつ乳首をねぶりはじめた。ちゅう、と強く吸われる度に中に受け入れた性器を締め付けてしまう。私の胸を揉みながらもギルバートの腰は逞しい腹筋を使っていやらしく回されていた。とても卑猥な動きでナカをぐちゅぐちゅとかき回される。それが堪らなくて、自分から腰を押しつけたり揺らしてたりしてしまった。 「や、ぁ、あっ、ぎる、噛んで、そこぉ、……もっと、ちゅうって、してぇっ……」 「ん。ハルは噛まれるのが好きなのか」 「好きぃ、……ギルのしてくれるのは、ぜんぶ、すきぃっ……きもち、いっ」  はふはふと息を乱しながら言うと、ギルバートは膨らんだ乳首に軽く歯を立てた。そして片方の乳首を指でぎゅっと捻り上げる。同時に両方を刺激されて、私は高い声を上げて身体を跳ねさせた。  どく、どく、と下肢から精液が漏れ出るのを感じて、胸を噛まれただけで射精したのだと判る。イッたばかりで脱力した私の腰を片腕で掬いあげて膝に乗せたギルバートは、下からの突き上げを始めた。対面のこの姿勢だと丁度ギルバートの頭は私の胸の辺りにきて、また乳首を苛められる。   「や、きもちぃ、……ぁ、んっ、やあっ」 「何がイヤなんだハル」 「んっ、ん、……きもちよすぎて、……おかひく、なっちゃ、あ、あっ」  ビクビクとまた震えて絶頂する。今度は射精をしなかったのに、ナカでぎゅっぎゅとギルバートのモノを締め付けてしまった。  私の身体を抱き締めたギルバートはそのまま中で射精して、こぷこぷと腰を揺らして精液を内壁に擦り付ける。性器の埋められたアナルの縁から泡だった精液が零れてきて、それが伝う感覚にさえ快感が生まれた。 「ギル。……ギルバート、ほんとうに私でいいの」 「もちろんだ。何度でも言おう。俺は可愛いハロルドしか見ていない」  それから体力の続く限り、私達は限界まで抱き合って眠った。  翌朝、ヤリすぎたと反省したギルバートに馬車までだっこされて、三年過ごした寄宿舎に別れを告げた。そのまま結婚式の後に行くはずだった新居に先につれて行かれ、新しい使用人やギルバートに甲斐甲斐しく世話をされる。何の疑問も持たずに毎日ギルバートに愛され慈しまれて過ごしていたが、一週間も経たずに兄上達が怒鳴り込んできた。 「結婚前から生活が爛れすぎだ!!」 「父上は許しても私達は許さんぞ!!」  丁度その時、応接のソファでギルバートの膝にだっこされながら美味しいケーキをあーんされていた私は、二人の顔を交互に見つめてしまった。  そして膝に乗せた私の髪を慈しむように撫でるギルバートに微笑みかけて、その頬にキスをする。 「兄上様たち、ありがとう。私はとっても幸せですよ」 「……だ、そうだが?義兄上様?」  悲鳴を上げて崩れ落ちる二人を見られないままに、ギルバートのキスの返しを頬に受ける。ちゅ、ちゅ、と何度も落ちるキスが唇に移り、いやらしくねっとりとした手つきで腰を撫でられて私は赤面した。最近はギルバートに尻を掴まれるだけで、身体が勝手に期待してアナルがきゅんとしてしまう。  もうすっかり馴染んだ腕の中で、私はうっとりと目を閉じる。    ああ、今夜もギルバートの腕の中ではしたなく声を上げて、快感に酔わされながら朝を迎えるのだろうなと思った。

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