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第17話

暖の下で琥珀は順応だった。 指で散々いじった蕾にむしゃぶりつくと、小さく身体を跳ねさせた。が、あとはじっとされるがまま耐えている。 ―早く、いやだって言えよ。 暖は舌で蕾をなぶりながら心の中で訴えた。歯で甘噛みすると、琥珀は身体を縮めた。 ―早く俺を跳ねのけろよ。そして、こんなことして気色悪い、絶交だ! って言えよ。 琥珀の怯えのようなものが肌を通して伝わってきた。 最低だ。自分はここまで最低の男だったのかと思いながら、下半身はどんどん熱を持ち、その中心が固くなっていく。 身体の反応とは真逆に頭の奥は冷えていき、真っ黒い絶望へと転がり落ちていく。 たまらずに、琥珀の中心を服の上から掴んだ。 琥珀はひっと、身体を曲げた。 熱く昂った自分のものとは違い、琥珀のそれは怯えて縮こまっていた。 その差に泣きたくなった。 そして琥珀のそれを何がなんでも自分と同じように欲情させたくなった。 琥珀の下着の中に手を滑り込ませ、直に触れた。 誰にも犯されたことのない琥珀の領域を黒く踏み荒らしていく。 ふと、あの雪の日、琥珀と二人で真っ白な雪の上に足跡をつけて回った時のことを思い出した。 そして今、琥珀は雪で、自分は汚れた靴底だった。 「なんで抵抗しないんだよ」 救いようがないほど最低な自分は琥珀を責める。 固く目を閉じていた琥珀が、恐る恐る目を開ける。 「だって暖がしたいんだろ……?」 「そんなこと言うと、最後までするぞ」 「最後までって?」 琥珀は、何も分かっていない、何も知らないのだ。 琥珀の無知さはそのまま琥珀の純粋さを表していた。 「言っただろ、セックスフレンドだって」 「でもセックスは男同士ではできないだろ」 じゃ、今のこれは何なのだ、と問いたくなった。 キスして身体の敏感な部分を舐め回わし、手で触れているこの行為をなんて呼ぶのだ? まさかお医者さんごっこをしているとでも思っているのか? 今の状況がひどく間抜けで、滑稽に思えた。 暖は琥珀の下着から手を抜くと、乱れたシャツを整えた。 「止めんの? 止めても親友でいてくれる?」 琥珀はすがるように言った。 これはレイプだ。琥珀を脅して自分の思い通りにしようとする卑劣で最低な行為。 琥珀の辞書には男同士イコール友情としか載っていない。それ以外の関係はあり得ないのだ。 たとえ無理矢理琥珀を抱いたとしても、その身体を手に入れたとしても、琥珀の心は永久に手に入らない。 今は親友だなんだと言っていても、いつか琥珀も恋をすれば、琥珀の興味は簡単に暖の元から去っていってしまうだろう。 そしてきっと琥珀のことだから、親友という名のもとに彼女を紹介され、何かと二人の行事に付き合わされ、事ある毎に彼女と幸せな琥珀を見せつけられるのだ。 それが一生! 死ぬまでずっと一生! どうやったら断ち切れる? どうやったら終わらせることができる? 古い記憶の断片が浮き上がってくる。 舞い散る雪の中、しっかりと絡み合った指と指、そこに巻き付いた赤い布。 「琥珀、琥珀はもし俺が一緒に……」 睡眠薬を飲んだ一人が刺され、その後に自死した一人。 刺したのは背の高い方の男だった。 睡眠薬を飲ませ恐怖を感じないよう、なるべく痛みを感じないよう、眠っている間に相手を逝かせ、自分も後を追った。 刺す時、どんな気持ちだっただろう。迷いはなかったのだろうか。怖くはなかったのだろうか。 「いいよ」 少しの迷いもない琥珀の声に我に返る。 「いいよ、俺、暖と一緒だったらなんでもする、どこへでも行く。だって俺は暖と血の誓いを交わした無二の親友だから」 琥珀は無垢な笑顔を暖に向けた。

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