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第33話
舌を絡ませ求め合い、身体に火が灯る。
熱が疼いてキスの間に琥珀が声を漏らすと、暖はやみくもに琥珀の顔と首筋に口づけてきた。密着した身体から暖の中心が固く膨らんでいるのが分かった。
コツンとお互いの額を合わせると、二人とも熱を出しているように熱かった。
「俺、琥珀を抱きたい」
「……うん」
「でもさすがに今は無理だな」
そだね、と琥珀が小さく笑い、約束するように深いキスを交わした。
それから二人は抱き合いながら、時々口づけ、お互いの身体を温めあった。
「琥珀はさ、メロスやあの二人のことが好きだけど、実は俺はどっちも好きじゃない。俺だったらメロスのように親友の命をかけたりしないし、どんな理由があっても絶対に好きな人を殺したりなんかしない」
暖はそうだろうな、と思いながら、琥珀は暖の胸の中で目を閉じた。伝わる声の振動が心地よい。
「舞妓姿の琥珀、可愛かったな……」
ポツリと暖が呟いて、琥珀は、え? と顔を上げた。
「暖、俺だって分かってたのか?」
「そりゃ分かるだろ」
暖は呆れた顔をした。
「琥珀はめっちゃ美人で、世界一可愛い。ちょっと馬鹿だけど俺には琥珀しかいない。琥珀しか目に入らない。ずっと前から好きなんだ」
暖が修学旅行の夜に言った言葉だった。
暖の好きな子というのは、琥珀のことだったのだ。取り越し苦労もいいところだ。
琥珀はニヤける顔を暖に見られたくなくて、暖の胸に顔を押しつけた。
いつの間にか雪は小降りになり、岩穴の外が白くぼんやりしているかと思ったら、明るい月が出ていた。
すると夜風に乗って人の声が聞こえてきた。
おーい、いるかー?
暖は岩穴の外に走り出た。
琥珀を探しに行った暖も行方不明になってしまったことで、琥珀のお姉さんが暖のお父さんに知らせ、町の消防隊が二人の捜索に出動したのだった。
二人は救助されたものの、こんな雪の日に山に来るなんてと、こっぴどく叱られた。
冬休みの間、暖は毎日琥珀の家にやって来た。
琥珀が捻挫しているため必然的に部屋で過ごすことになるのだが、そうすると恋が成就した二人がやることは一つ。
けれど暖はキスと軽く琥珀の身体に触れるだけで、それ以上のことはしてこなかった。
「まだ捻挫が治ってないし、琥珀の家は人がいるから」
初めては、琥珀の捻挫が治ってから暖のお父さんが仕事の日に暖の家でというのが、暗黙の了解になった。
冬休みが明ける頃、琥珀の足は回復し、新学期、なんと暖はクラスメイトたちの前で今までで一番衝撃的な告白をした。
「俺が好きなのは琥珀だ。だからもうアレコレ探るのは止めてくれ」
暖の潔く清々しい態度にクラスメイトたちは賞賛の拍手を送った。
暖の言葉をそのまま信じた者もいれば、冗談と受け取った者もいた。
紗理奈は複雑な表情を浮かべながらも、暖の告白は本気だと取ったようで、最後は琥珀だったらいいと笑顔を見せてくれた。
それから数日後の学校の帰り道のことだった。
「今週末父さん仕事だから、うちに泊まりに来いよ」
それが何を意味することなのかはっきりと分かり過ぎて、琥珀は一瞬で頬が熱くなった。
「……うん」
蚊の鳴くような声で返事をするのがやっとだった。
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